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ビジネスで本当に使えるコーチングとは?

ビジネスで本当に使えるコーチングとは?

コーチングが日本に上陸して20年経ったが・・・


中堅・中小企業の問題

出典:写真AC


[2018/02/07 執筆者:石川英明]


”コーチング”というものが日本に上陸して20年くらいが経つと思います。コーチ21が設立されたのが1997年。CTIジャパンが設立されたのが2000年。

コーチングの源流の一つとも言われる「インナーゲーム」は1976年に出版されています。

そして、日本のビジネス界でもコーチングというキーワードはかなり定着し、コーチング研修などを実施する会社もかなり増えたと思います。(ロジカルシンキングなども、2000年前後に急激に認知度が高まった記憶があります)

それで”コーチング”は、日本のビジネス界でちゃんと受け入れられ、活用され、成果を出せているのでしょうか?


私自身の経験で言うと、正直なところコーチングを理解し活用し自分のビジネスにしっかりと生かしている管理職や経営者には、あまりお会いしたことがありません。
それよりも、どちらかというと、とても優秀な管理職の方でも「コーチングを使ってはいない」「コーチング?あまり役に立たないと思いますが。。。」という方が多いように思います。

むしろ、コーチングに対する嫌悪感を示す方も多く、コーチングが素晴らしいものとしては、ビジネスの現場ではあまり受け入れられていないのを感じます。

逆に、管理職や経営者など「コーチングを身に着けて、部下指導に生かすべきポジション」の人よりも、部下側が「うちの上司はコーチング力が低い・・・」などと不平不満を言う口実になっている、というケースがよく見受けられます。

コーチングに対する誤解



なぜ、コーチングはイマイチ使えないものになっているのか?


このようなことが起こったのは、そもそも「コーチング」というものが、どちらかというビジネスの文脈から生まれてきたものではなく、その根本的な思想や考え方のすり合わせがされることなく、無理やり活用されてきたというところがあるかと思います。

私の理解しているところでは、そもそもコーチングは、ビジネスの文脈から生まれてきていません。むしろ「組織の目標に沿って、個人が頑張る」という組織重視の文脈よりも、「個人が自分自身の実現したいものに気づいて、内発的動機によって生きていく」という文脈が、強かったように思います。

それは、何だったら反会社的な思想なのです。

そんな反会社的な思想から生まれた「コーチング」というツールを、会社経営の中に埋め込もうとしても、なかなかうまくいくはずがないのは当然です。


ですから私は「ビジネスコーチング」というのと「パーソナルコーチング」というのを明確に分けて呼び、使い分けています。

「ビジネスコーチング」は存在しますし、ビジネスコーチングはビジネスの中で役に立ちます。効果が出ます。しかし「パーソナルコーチング」を、会社業務の中に埋め込もうとしてもまず上手くいきません。

会社組織の中でコーチングが機能しないのは、この違いを理解せずに、そして「パーソナルコーチング」を学んできた研修講師などが、ビジネスコーチングのこともよく分からないままに、それをざっくり「コーチング」として教えてしまっている、というようなことに起因しているケースが多々あります。


パーソナルコーチングをやるコーチは、クライアントの味方です。100%味方になることが、パーソナルコーチングでは大切だと言えるでしょう。

これを、プロのコーチとして行い、自ら獲得したクライアントに提供する場合には何の問題もありません。

例えばクライアントが「今の会社を辞めて転職したい」と言ってきたら、その気持ちに100%寄り添い、応援すればいいのです。コーチング料金をそのコーチに払っているのは、そのクライアント本人ですから、それでOKなわけです。(かといって、パーソナルコーチングを本当に質高くやることは、シンプルではあれ、決して簡単ではなく奥深いことだとは思います)


しかし、上司が部下にコーチングを提供し、部下が「この会社を辞めて転職したい」と言ってきたら、その気持ちに100%寄り添い、応援すればいい、とはなりません。

ここは、とても重大な違いなのです。この重大な違いを無視して、ざっくりと「コーチングはいい」「会社でもコーチングを活用すべきだ」などと言うのは暴論なのです。


これは、実は、コーチングの最も重要な要素である「傾聴」ということの本質にもつながっていきます。傾聴力が高まるほどに、相手が本音を開示してくれる可能性が高まってきますが、開示された本音に対して「No」と言わなければならないケースがあることは、よくよく考えていかないといけないのです。


会社経営の中では「上司が部下に寄り添ってはいけない」ケースはたくさんあります。しかし、パーソナルコーチングでは、そういうケースは基本的にはないのです。例えば、部下が無断で遅刻して来たら、上司であれば叱る必要があるでしょう(どうしたのか?と聞くにしても、遅刻そのものに対しては注意する必要があるでしょう)。

しかし、パーソナルコーチングをやっているコーチは、そういうケースでも叱りませんし、叱る必要もありません。「ああ、会社で遅刻されたんですね。」と共感的傾聴をすることが重要なことが多いでしょう。しかしそれは「叱らないことが常に正しい」からではありません。ただ、文脈や位置づけが違うだけです。


このことを理解せずに、パーソナルコーチングを学んできた人が「叱る上司」を見て「だから、ダメなんだよ」などというのはおかしな話ですし、これの派生形としてパーソナルコーチングを学んだ部下が、上司が叱ってくるのを「あの上司はコーチングが出来ていない。傾聴が出来ていない」などと言ってきてしまうようなことすら、起こってしまうのです。

こういった誤解や混乱、整理の足りなさが相まって「コーチングは使えない・・・」と言った状況がうまれてきてしまっているように思います。


ビジネスの現場で使うべき「ビジネスコーチング」とは?


それでは”コーチング”の技術は、やはりビジネスの現場では使えないのか?いえ、やはり「使えない」と言い切ってしまうのは大変もったいないものがあります。

広義の”コーチング”の技術を、例えば管理職がしっかりと持っていることで、部下の成長が早まり、部署の業績が向上する、ということはあります。


まず、コーチングと対比される言葉にティーチングがあります。分かりやすくこの違いをまず理解しましょう。

ティーチング(teaching)とコーチング(coaching)




よくビジネスの現場で「もっと自分で考えて仕事して欲しいんだよな・・・」という上司や経営者の嘆きを聞きます。

これはもう少し正確に言うと「もっと広い視野で仕事を見て、ケースバイケースで的確な判断を自分でできるようになって欲しいんだよな」ということですね。(「もっと能動的に情報収集をしたり改善アイデアを考えるようになって欲しい」というケースもあります)

この「自分で考えて」仕事をする力を高めるには、ビジネスコーチングはやはり有効です。


ビジネスコーチングの範囲


例えば、営業のプロセスなどは「考えるべき観点」はある程度決まっています。

できる営業は、その考えるべき観点をちゃんと考えていて、できない営業マンは、その観点が足りなかったりします。

できる営業マンとできない営業マンの違い




営業部長として「できる部下」には特に指示したり、コーチングしたりする必要がありません。しかし、できない部下を、そのままお客様とのアポイントに送り出すと「成果がほとんど得られないまま」部下が帰ってくることにもなりかねません。

そんな時は、部下がアポイントに行く前にコーチングを行います。これがビジネスコーチングです。


「お、明後日はお客さんところに行くのか。」
「ハイ」

「今回のアポイントのゴールはどんなところにあるの?」
「あ、えっと、今回は・・・そうですね、まず資料を見ていただこうかと・・・」

「うんうん、資料を見てもらう。資料見てもらって、どんな反応を御客さんから引き出せたら、自分的には成功なの?」
「あ、そうですね・・・。お、これいいね。欲しいなぁって反応をしてもらえたらいいですね。」

「うんうん!そういう反応して欲しいよね!それで、お客さんはどんな課題を持ってて、どういうサービスを見せられると「お、これ欲しい」って言ってもらえるんだろう?」
「あ、えっと・・・。資料見せるだけじゃだめ・・・ですかね・・・」

「例えばさ、君のところに車のディーラーの営業が来てさ、パッとカタログだけ見せられたらどう?」
「うーん、私は大きめの車が好きなので、軽自動車のカタログとかだったら、もらっておいて読まずに捨てます」

「そうだよね!じゃーさ、うちのサービス内容が、お客さんにとって軽自動車みたいなものだったら、資料見せてもスルーされるよね。お客さんが、欲しいものはどんなものか知らないとね。お客さんは、どんものが欲しそうなの?」
「あ、えっとーーー」

・・・続く。


この例は「アポイントのゴール」を問いかけ「クライアントの課題感」を問いかけ、それについて考えさせているわけです。

このビジネスコーチングを実施するには時間がかかります。少なくとも10分とかはかかります。長ければ30分とかかかります。けれど、その30分によって部下の「アポイントの質」「アポイント当日までの3日間の準備の質」が高まるとしたら、それはやはり素晴らしいことですよね。

これが、ビジネスコーチングの実践例です。


部下の回答が的外れな場合は?


さて、部下に考えるべき観点で問いかけるというビジネスコーチングをやっていると「部下から的外れな回答が出てくる」という現象に出くわします。よく、あります(笑)

例えば、さきほどの例の続きで

「今回のアポイントで、キーパーソンは誰だろうね?」
「あ、(担当者の)鈴木さんだと思います」

(いやいや、そうじゃなくて部長の佐藤さんだよね・・・)


こういう場合は、どうしたらいいでしょう?

A.「いやいや、キーパーソンは部長の佐藤さんだよね」とストレートに諭す
B.「他の人の可能性もあるかな?」と次の問いかけをする
C.「キーパーソンって、どういう要素を持っている人だろう?」と別の問いかけをする


実はこれは、正解はありません。

コーチング的にはCを使うことが、おそらく部下の思考力を高めてくれると思いますが、常に絶対にCが正解かと言うと、そんなことはありません。

部下によっては「ピシッとAだと叱ってくれた方がいい」という人もいるでしょうし、「Cのように、あくまで自分で考えさせてほしい」という人もいるでしょう。

それは、部下の個性に対応する、というのが成長促進という意味では大切になるでしょう。


そして、例えばB.「他の人の可能性もあるかな?」と聞いてみます。

そうして部下が「いえ、キーパーソンは(担当者の)鈴木さんだと思います」と答えてきたら、これは困ります。

”コーチング”では、相手の回答を尊重するのが前提ですから「それは違うよ」と言ってしまうと、コーチングが崩れてしまいます。「なんだ、結局自分の考えを押し付けてくるのか」などと思われてしまったりもします。


こういう場合は、少し質問を丁寧に具体的にして「それやると、こういうことが起こったりしない?」ということを聞くようにします。

このケースだと「なるほど。鈴木さんがキーパーソンね。鈴木さんがOK買いましょうと思ったら、それで実際に買ってもらえるかな?鈴木さんが契約書にハンコ押してくれる?社内で誰かの承認を得ないといけないとか、あるかな?」というように、かなり具体的に質問するわけです。

「ああ・・・。そういう意味だと、佐藤部長が決裁権を持っていますね。。。鈴木さんが買う気になれば邪魔はしないかなとも思いますが、、、」というように展開していきます。

このあと、部下の方が「それでも担当者の鈴木さんがOKを出せばそれでOKなはず」という論を譲らずに、佐藤部長のことを考えようとしない場合には、「部下のやりたいようにやらせて失敗させるor部下の考えを否定して命令する」の決断を迫られることになります。


ビジネスコーチングの場合は「あくまで正解は上司が持っている」のです。パーソナルコーチングの原則は「正解はクライアントが持っている」です。

もちろん、部下に質問して、考えさせることで「思ってもいなかったような素晴らしいアイデアが部下から出てきた」ということもあるでしょう。しかしその場合においても「それはよいアイデアだ」と判断する力が、上司側にあるというのが、ビジネスコーチングの原則です。

上司は、部下の考えを否定して命令する権利と責任を持っています。「そうか。鈴木さんがキーパーソンか。しかし私はやはり佐藤部長がキーパーソンだと思う。今回は、ちゃんと佐藤部長の意向にも対応できるように資料を準備して訪問してきて。」というように、しっかりと伝えるケースもあります。

※ここが、すごく重要で、ちゃんとビジネス経験がなくコーチングだけを学んできたコーチング研修の講師などは、ここを誤解しているケースが多いのです。


中堅・中小企業の問題

出典:写真AC




逆に、「佐藤部長がキーパーソンだけど、うーん、今回はあえて失敗させるかぁ。。。」といった判断をして、失敗させようとして、ちゃんと失敗したら、そこへもコーチングしてあげましょう。

「今回のアポイント、どうだった?」
「あ、いや、鈴木さんは乗り気だったんですけど、佐藤部長が乗り気じゃなくて・・・」

「そうか、佐藤部長は、どの辺が気になるって?」
「ちょっと要らない機能が多くて、もう少し安いものでいいような感じが仰っていました」

「部長はキーパーソンじゃないって感じっぽかったけど、どうしてそう判断してたんだろうね?」
「・・・・。佐藤部長は普段”鈴木に任せるよ”ってよく口にされていて。。。それを私は鵜呑みにしてしまっていました。。。」

「そうか、そうか。うん。」
「言葉だけで判断しちゃいけないですね。。。あんな風に、佐藤部長が口出しされるのは初めて見たので。。。正直驚きました。。。」

「うんうん。今回学んだこと、はどんなこと?」

「・・・、そうですね、やはり役職上位者は、なにも意見を持ってないということはないんですね、おそらく。自分の意向の範囲内なら口出ししないけど、範囲を超えるものがあれば当然口出しする。ということは、どういう”範囲”で考えてるのかは、ちゃんと予想しとかないといけないですね。。。」

「うん、そうか。そしたら今後それも大事にしていこう。こっちも事前に言えるようにもっと気を付けるな」


こういった「振り返りを促す」ことが、部下の気づきと学びを促進し、成長スピードを上げていきます。


ティーチングを続けていると「受け身的社員」を醸成してしまう


ティーチングは決して悪者ではなく、むしろ基本であり、土台です。成長しよと思ったら「教える/教わる」というのはまずあってよいでしょう。


しかし、ずっとティーチングばかりが続くと「指示されたことをやる」という姿勢が身についてしまい、「自分なりに考えて判断して動く」ということへと成長していけなくなってしまいます。


ですから、ある程度ティーチングの段階を卒業してきたら、徐々にビジネスコーチングへとシフトしていき「覚えたことをやる」から「適宜、考えて判断する」へと成長していってもらうことが吉です。

ティーチングから、コーチングへとシフトしていくと、最初の頃は部下から禁断症状が出るかもしれません。「なんで、(正解を)教えてくれないんですか!」と。

そういう場合は「正解なんて状況によって変わるから、状況によって違う正解を導きだせる思考力を身に着けて欲しいんだよ」ということを、しっかりと伝えていくとよいかと思います。


「コーチングを会社の中で活用するための」まとめ


・コーチングの前にティーチングあり!知らないことを問いかけられても「分かりません」しか出てこない!

・ビジネスコーチングは言うならば誘導尋問!適切な問いをして「考えるべき観点のインストール」と「自分で考えることの習慣化」を促進する!

・上司は「教える」「問いかける」「振り返りを促す」「褒める」「叱る」を使い分ける!


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