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中堅・中小企業では
なぜ経営理念・ビジョンが浸透しないのか?

中堅・中小企業ではなぜ経営理念・
ビジョンが浸透しないのか?

中堅・中小企業ではなぜ
経営理念・ビジョンが浸透しないのか?


ビジョンや行動規範を作りましょう、ということは経営書に書いてあったり、色んなコンサルタントが言っていたりするので、みなさんも実行されてきたかもしれません。

しかし、その効果に疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

せっかく作ったビジョンや行動指針も、数年前につくったきり、すっかりほこりをかぶってる、なんてことも珍しくありません。


私自身は、経営者がビジョンや行動指針を示すことは素晴らしいことだと思っています。しかし機能していないビジョンや行動指針が圧倒的に多い、それはなぜか。

結論を言えば、二つの要因があります。

一つは、あなた自身がそれを大切にしていないこと。もう一つは、社員にとってのビジョンの価値を考えていないことです。

中堅・中小企業の問題

出典:写真AC



その経営理念・ビジョンは本物か?


作った経営理念・ビジョンを持ち出してきて、改めて眺めてみてください。

それを眺めてあなた自身がワクワクするでしょうか?

本当にこれは大切なことだな!これを実現したいな!と思うでしょうか?

それとも「美辞麗句だけど・・・ピンとこないな」と思うでしょうか?


美辞麗句だけ並べて、あなた自身が本当に大切に思っていない経営理念やビジョンと言うのは、何の意味もありません。というより、デメリットしか生じないでしょう。

会社の理念(こういった方向へ行きたい)やビジョンというものは、あなた自身が本当に思っていることでなければ、すぐホコリをかぶってしまうのです。行動指針(こういう価値観を大切にしたい)も同じです。自分は守りたくないけど、社員にだけは守らせようなんてことはできません。


例えば経営理念・ビジョンとして

A.「顧客の成功に全力を尽くし、事業を通して社会に貢献する」

B.「とことん利益を出す。利益が出続けるビジネスモデルを構築する。いい暮らしをする。手伝ってくれる社員にはちゃんと報いる」

の二つがあった時に、どちらの方がワクワクするでしょうか?自分にとって本物のビジョンだと感じますか?

経営理念・経営目標・ビジョン



どちらがあなたにとって本物でもいいのですが、大切なことは本物であることなのです。

そして、後者を本物と感じる人は、指導するコンサルタントなどから「そんな理念やビジョンではダメです。経営者としてもっと立派な理念やビジョンを描いてください」なんて言われていたりするものです。

しかしそのアドバイスは間違っています。完全に間違っているのです。


オーナー企業にとってビジョンは「社長の幸せ」です。これにつきます。あなたが、社会貢献を幸せに感じようが、金持ちになることを幸せに感じようが、事業の拡大に幸せを感じようが、どれであっても間違いと言うことはありませんが、自分が思ってもないことを理念やビジョンとして掲げるのは間違っているのです。

経営理念やビジョンは会社の【軸】となるものです。全ての経営判断が、経営理念・ビジョンをもとに下されます。経営理念・ビジョンを実現しようと、事業活動は全て行われていきます。

しかし、そのビジョンが「たいして実現したいとも思えないモノ」だったら?


いずれ、あなたの日常の指示と、壁に貼ってあるビジョンにはズレが生じてくるのは明確です。

そして社員や取引先や顧客は「あの会社のあのビジョンは口先だけだよ」と言い始めるのです。そんなビジョンなら明確化しない方がましだったのに・・・。


経営理念・ビジョンは誰のためにあるのか?


経営理念・ビジョンを最も共有すべき相手は社員です。もちろん株主、顧客、取引先などとも共有してもいいのですが、最も必要性があるのは社員です。と言うより、むしろ社員のモチベーションを高める施策の一つとして「ビジョンを明確化する」というアクションを取ることが多いでしょう。


そう、結論から言ってしまいますと、会社のビジョンを明文化するのは社員マーケティングのためなのです。

お客様は、会社のビジョンにはほとんど興味を示しません。もっと具体的な、サービス・商品のベネフィットなりストーリーなりに興味があります。それでも会社のビジョンを明文化するのはなんのためかと言えば、それは社員のために経営者が作っていモノです。

トップの想いを明確化して、実際ビジネス上の効果が現れるのは「社員のやる気が高まる」「社員の離職率が下がる」といった、社員マーケティングの領域です。

「給料払ってるんだから、うちの理念に賛同して頑張って当然だ!」という気持ちも分かりますが、人間の心はそんなに簡単ではなく、給料を払われているだけでは、会社のビジョン・理念に対して無条件にコミットできるわけではないのです。


そういう意味では、経営陣の作る「会社のビジョン」というものは、社員がそのビジョンに触れたときに「そうだ、これが私たちのビジョンだった。よしもう一度ふんどし締めなおして頑張ろう!」と思えないものは、ほとんど意味がありません。逆に、もしそうなっていないのなら、ビジョンを明文化しても、ビジョンとしての機能を果たしていることになりません。

経営理念・経営目標・ビジョン




そしてこの観点があるからこそ、前述したように、コンサルタントは「もっと立派なビジョンを描いてください」と指導するのです。「”俺が金持ちになれればいいや”なんてビジョンじゃダメです!」なんてアドバイスが出てくるわけです。(私からすれば、そんな余計なお世話のアドバイスもないのですが)

しかし、例えば心の底から描いたビジョンが「俺が金持ちになること」だったとしましょう。それだけがビジョンの経営者が少ないことも、よく存じていますが、まぁ極端な例の方が分かりやすいので、そういう前提で話を進めます。

確かに「うちの会社のビジョンは、私、社長が金持ちになることです」と社員に伝えたところで、社員のモチベーションは高まりません。むしろ言わない方がましかもしれませんね。しかしここで考えるべきことは「社員にとっても意義を感じるビジョンにするにはどうしたらいいだろう?」ということです。


ここで大切なことは「社員にとっても」であって「社員にとって」ではないということです。あくまでも社長自身にとっても大事なものでなくてはいけません。

そうやって考えていって、例えば「俺は金持ちになりたい。でも一人で出来ることは限界がある。だから手伝ってほしい。ちゃんと手伝ってくれた人には、ちゃんと報いたい」これがビジョンだな、と進化していくわけです。



このビジョンを提示されたときに、社員はどう反応するでしょうか?

おそらく、とても納得することでしょう。(全社員が、とは言いませんが)社長が本音で付き合ってくれてる。自分達のこともしっかり考えてくれてる。そんな風に思うでしょう。こういったビジョンであることが重要なのです。


もちろん「社会貢献をする!」「日本の社会的課題を解決する!」といったビジョンが、心から思う本物であれば、それを提示して良いわけですし、それを軸に採用も、教育・評価もしていっていいのです。

大切なことは、そのビジョンが本物であること。そして、社員にとっての価値も考え抜かれていることです。

「100億円企業を目指す」という
目標・ビジョンは機能するのか?


それでは、「100億円企業を目指す」という目標・ビジョンは、社員のモチベーションをあげるためには機能しないのでしょうか?

会社の株を持っていて、上場益を得られるような創業メンバーに対してはこういった目標やビジョンも十分に機能するでしょう。しかし、転職が当たり前になった今のご時世で、一般の社員からすると「100億企業になる!」ということは、どうしてもどこか他人事です。


社員一人一人からすれば「この会社は居心地がいいか」とか「この会社で成長できるか」といった観点で【この会社にいるかどうを選んでいる】ものです。

もちろん「100億円企業になる!」ということでモチベートされる社員もいるでしょうが、確率的には多くの社員は「正直、100億いくかどうかは関係ないな。。。」という感じで、コミットメントしづらいものです。

「100億円のために頑張れ!」と言われても「それは・・・社長たちの欲ですよね・・・」という気持ちが、心の底では起こっていたりします。これは、会社員を経験したことのある経営陣の方であれば、体感的に思い出していただけるのではないかなと思います。


100億円企業を目指すという目標があってはいけないわけではありません。けれど、多くの場合ではこの「100億円企業になる!」という目標とは別に、「社員にとっても意義を感じるビジョンにするにはどうしたらいいだろう?」という見せ方・伝え方も考えていく必要があります。

経営理念・経営目標・ビジョン


機能する経営理念・ビジョンをつくるために


最後に、本当に機能する経営理念・ビジョンをつくるために押さえておきたいポイントをいくつかご紹介しましょう。

機能する経営理念・ビジョンの要素


本当に機能する経営理念・ビジョンは、大きく二つの観点から成っています。


一つは【事業ビジョン】です。これは、「~~のお客様に対して~~を提供して、~~になっていただく」といったものです。

事業ビジョンに触れることで社員が「そうだ、自分たちの仕事は本当に価値がある、やりがいがある」と思えることが重要です。


もう一つは【組織ビジョン】です。これは、「うちの会社は、働く社員にとってこんな会社でありたい」といったものです。

組織ビジョンに触れることで社員が「そうそう、そういう会社でありたいよね」と思えることが重要です。

例えば「休みたいときに休めて、頑張るべきときに頑張れる会社でありたい」というビジョンであれば、「そうそう、そうだよね」と思いやすいですし、「では、自分たちでできることを考えてやっていこう」と、ビジョンにそって考えて、動き出すわけです。

経営理念・ビジョン、目標を
社員が共感しやすいように翻訳する


経営理念・ビジョンは、できるだけ多くの社員の気持ちやニーズに引っかかるようなものに翻訳することが重要です。繰り返しになりますが、これは見せかけだけのキレイな理念をつくろうということではなく、社長が心から望む経営理念・ビジョンに対して、「社員にとっても」意義を感じる伝え方を考えるということです。

例えば、「上場する!」という会社の目標・ビジョン(ビジョン・目標・理念といった言葉の細かい定義はここでは取り扱わずにいます)を描いたとします。

では、上場するということは、社員にとってどんな素晴らしさがあるのでしょうか?


これはあくまで一例になりますが、

「資金調達できて、会社として余裕ができてくれば、よりアグレッシブにみんながやりたいことを出来るようになる」

「上場企業で働いているってこと自体が、家族を安心させ、誇りに思える」

そんな風に、翻訳されていれば、社員のニーズを満たし、気持ちを喚起していくものになります。


実際には、こういった観点で機能している経営理念・ビジョンはあまり多くありません。けれど、本当に経営理念やビジョンを効果的に機能させたいのであれば、社員たちが、ビジョンに触れたときに「ワクワクする」「ベネフィットを感じる」といったビジョンを、経営陣は提供すべきです。

社長のための組織マネジメント講座」では、始めに社長自身のビジョンをあらためて明確化し、その上で多様な社員に響くように翻訳するためのツールやテクニックをご紹介しています。

経営理念・経営目標・ビジョンを翻訳する


経営理念・ビジョンを浸透させていく


これらのビジョンを描く、明文化するという際に大前提となるのは、「経営陣の心の底から本当にそう思っていること」です。

極端な話「俺が金持ちになれればそれでいい」と本音では思っているのに、会社のビジョンでは「お客様を笑顔に」と謳っていても、どうしても日常のコミュニケーションの中で本音の方が滲み出てきてしまいます。

つまり「お客様を笑顔に出来ている?」と社員に聞くよりも「予算達成できそうか?」と聞いてしまう。そういう状況では、社員も「なんだよ、”お客様を笑顔に”なんてただのお題目じゃないか」と分かってしまうわけです。


お客様の笑顔を大事にすることが信念なのであれば、素直にそのまま会社の理念として「お客様の笑顔のために」とすればいいわけです。リッツ・カールトン・ホテルなどでは、”We are ledies and gentlmen serving leaies and genltrmen.”ということをとても大事にしているわけですが、本当にそれを大事に思い、「紳士淑女をお迎えする、紳士淑女であったか?」ということを確認する時間を毎日とっているわけです。

日常で業務をする際に、最優先の判断軸となっていること。これが重要です。

もし「お客様を笑顔にすることは大事だ。でも、我々はボランティアをしているのではない。笑顔にしたからこそ、お客様が気持ちよく”お支払いさせて欲しい”と、そこまで言わせることが我々の仕事だ」ということが信念なのであれば、それをそのまま会社のビジョンにすればよいのです。

中堅・中小企業の問題

出典:写真AC



実際に、ビジョンが組織全体に浸透していくのには、具体的なエピソードが社内で語り続けられるようにすることが重要です。人は、箇条書きやキーワードを強く覚えていくことは、ほとんどできません。それは脳科学的にも分かっていることです。逆に「物語」はよく覚えています。ですから、「物語」「エピソード」「ストーリー」といったものを社内に流通させることが重要です。

リッツカールトンでも「こんな状況のお客様がいらした(物語)」「それに対して、私はこういう準備をし、こういうサービスをした。そうしたらお客様はこんなに喜んでくださった(物語)」といった話を、社員同士で語り合う時間をとっており、それによって「私達が大切にしたいこと」ということが確認され続け、蓄積され続けているのです。それによってサービスのクオリティが高いところで維持されて続けているのです。


いかがだったでしょうか。今回は、経営理念・ビジョンの役割や重要性を中心にご紹介しました。

本稿ではご紹介しきれなかった部分、経営理念・ビジョンを社員にあわせて翻訳するコツや「物語」「ストーリー」でビジョンを描く方法は、「社長のための組織マネジメント講座」でお伝えしております。ご興味がございましたら、お気軽にお問い合わせください。


[2017/12/21公開 執筆者:石川英明]



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