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ワークライフバランス(WLB)を真に向上させるためには?

ワークライフバランス(WLB)を
真に向上させるためには?

WLB(ワークライフバランス)


ワークライフバランス(WLB)という言葉は、社会的にだいぶ定着してきたように思います。「働き方改革」が注目される中(2017年10月現在)、あらためてこのWLBという概念もまた見直されているように思います。

さて、ベストなワークとライフのバランスというのは、どれくらいのものなのでしょうか?5対5だとベストなのか、7対3だとベストなのか。週40時間は「ワーク」で、のこりの週128時間が「ライフ」だとベストなのでしょうか?


「そんなの人によるよ」

これは一つの真理ではないかなと思います。

週80時間でも働いていたい人もいるでしょう。起きている時間のほとんどは自分の仕事に費やしたい、というような人。例えば現役のプロ野球選手などは「食べるのも仕事」「筋トレも仕事」「練習も仕事」「読書も仕事」「もちろん試合も仕事」といったことになるのではないでしょうか。

逆に「週に2日(16時間)も働いたら、あとは働きたくはないよ」という人もいるでしょう。


村上アシシという人がいて「年の半分働いて、年の半分はサッカーのサポーターとして生きる」という人生を送っています。村上アシシさんにとっては、それが「ベストなワークライフバランス」ということになるのでしょう。

ですから、そもそも「残業を規制する」とか「総労働時間を規制する」といったことは、本質的なワークライフバランスの向上には、ほとんど何も寄与しないのではないかと考えています。一方で、なぜ残業時間などが問題になるのかについては後述します。

ワークライフバランス(WLB)が悪いとは
どういう状況なのか?


「自分のワークライフバランスは悪い」と思っている人の多くは、恐らくは「ワークの方が多すぎる」と感じているのでしょう。だからこそ「ワークの総量を規制しよう」といった発想が出てくるのだと思います。

しかしこの「ワークの方が多すぎる」と感じるというのは、どういう状況なのか、考えてみないといけません。

1.仕事に誇りややりがいを
感じられていない


「ワークの方が多すぎる」という人は、そのワークが楽しくない、やりがいが感じられていない、からなのですね。


私の知人のビジネスパーソンは、今は経営者をやっていますが、会社員時代から「朝は7時から仕事して、夜は23時くらいまで仕事する」というのが普通でしたが、とても楽しそうでしたし、充実感を持っていました。彼は、自分の仕事に誇りとやりがいを感じていたのです。だからこそ、土日も「仕事のための勉強」に自分の時間を費やしていても、何の苦も感じなかったのです。

そういう人は「ワークの方が多すぎる」とはあまりならないのです。

もちろん、そのビジネスパーソンも結婚して、子供が生まれて、環境が変わり、以前ほどは働かなくなりました。しかし依然として平日は朝から晩まで働いていて、その状態に対して満足しているのです。(家族の仲も非常によいそうです)

繰り返し言いますが、この人の場合は「自分の仕事に誇りとやりがいを感じている」ということが大きいのです。

だとしたら「ワークライフバランスが悪い」ということの問題は、「ワークの時間が多すぎる」ということではなくて、「ワークに誇りややりがいを持てずにいる」ということになると思うのです。これは、とても重要な問題です。私は、働き方改革の本質の一つはここにあるように思っています。

2.社員が経営・会計の仕組みを
充分に理解していない


もう一つの観点があります。それは「ワークライフバランスが悪い」と感じた場合に「これだけ働いて、これだけの給料かよ」という意味合いが含まれている場合です。

この点に関しては非常に多くの論者が「仕事時間の総量規制なんてアホらしい。生産性を高めなければ、働き方改革なんてできない」ということを主張しているなと思いますし、私もその面において多分に賛成するところです。

ただ「生産性を高める」というのは、簡単なことではありません。これは資本主義社会の構造の中で常に「競争」ということがあるからです。そして「富と時間の奪い合い」が起こっている構造があります。


生産性を高めようというのは、簡単に言えば「100万円稼ぐのに100時間かかってたけど、80時間でできるようになったら、20時間余暇として使えるよね」ということですね。そしてこれを実行しようとして例えば「便利なITツール」を活用したとします。なんと確かに今まで100時間かかっていた仕事が、80時間でできるようになりました!

そして、その会社は「よし90万円で売り出そう。その方が競合より売れるから。仕事時間は80時間だしいいよね」とやります。

ところが競合の会社も黙ってはいません。同じ「便利なITツール」を導入し、80時間で90万円どころか、80時間で80万円で売り出すことにしたのです。。。

生産性の向上と市場原理・競争原理

生産性というのはつまるところ「時給」ということです。確かに初めの会社は、時給1万円を、時給約1.1万円に高めることに成功しました。しかし、市場競争の影響で、あっという間に時給1万円に戻ってしまったのです。

これが「生産性を高めよう」という主張の限界であると私は思っています。つまり、生産性なんてそんなに簡単に高まらないのです。市場競争が、労働者に「常に限界の生産性」を求めてきてしまうからです。(よりよいものを、より安く買おうとする市場原理においては、これは当然起こることです)

一部の天才的な起業家などを除けば「生産性を高める」ということの恩恵など、ほとんどの労働者にとって享受できない構造に、社会そのものがなってしまっているのです。(社会構造そのものをどう変化させていくべきかは、経営の問題ではなく、政治の問題と考えるので、ここでは詳述しません)


では、本当に「社員が、ワークライフバランスがよいな」と思えるには、どうしたらよいのでしょうか?「こんなに忙しく働いて、これだけの給料かよ・・・」という思いを払拭するにはどうしたらよいのでしょうか?

それは「生産性を高める」というようなことではなく、「経営・会計の透明性を高めて、社員の会計リテラシーを高めて、みんなの“納得感”を高める」ということでしか、できないのだろうと思います。


企業における実例


私がご支援していたある企業では、会計の透明性を非常に高くしていました。どれくらいの売上で、どれくらいのコストで、どれくらいの利益が出ているか。そこから労働分配率をどれくらいにして、内部留保をどれくらいにしているか。これらをほぼオープンにしていらっしゃいました。

ただ残念なことに社員の方の会計リテラシーが追い付かずに、折角情報は開示されていても「その意味が分からない」というような状態でした。そこで、会計リテラシーを高めるための勉強会を社内で実施していきました。

そうなると、その会社の「ワークライフバランス」は劇的によくなったのです。市場競争の激しい業界で、油断はできない経営状態です。ですから、相変わらず総労働時間は多い(日常的に残業が発生している)状態でしたが、社員の方は「これが自分たちのベストなワークライフバランスだ」と認識するようになったのです。

WLB(ワークライフバランス)


もちろん、もっと休みたい。けれど競合も頑張っている中で、油断したら自分たちの会社は倒産してしまう(ちなみに会社のことは好きで、倒産などさせたくないとみなさん思っている会社でした)。

もちろん、もっと給料は欲しい。けれど人件費として払い出してしまうと、研究開発などにお金を割けない。来年以降の業績がより危うくなってしまう。それはつまり自分たちの給料や雇用も危うくなるということ。それに、内部留保を厚めにしておかないと、市場環境の急激な変化があったときに、対応しきれない。

そういったことを社員の方が理解し、会社の情報公開に触れた時に「なんてフェアな会社なんだ」ということが分かったのです。


なお、少し特殊な例ですが、私が組織マネジメントを支援したあるベンチャー企業では「月に3日だけ働く社員」という存在がいます。これを、月6日働くようにすれば、彼の年収はたぶん倍になるのでしょうけれど(笑い)。

でも彼は「給料が安い」という不満を持つことはありません。自分で「これくらいの給料を選んでいる」という納得感があるからです。そして「残りの27日をボランティア活動に充てる」ということが、本人にとってはベストなワークライフバランスなのです。

ワークライフバランス(WLB)を
真に向上させるために


つまり、ワークライフバランスを真に向上させる、真に働き方改革を実現する、ということのポイントは「仕事に誇りややりがいを感じられるようにする」「経営・会計の透明性と、会計リテラシーを高めて納得感を持てるようにする」ということが重要になるはずだと、私は考えています。

もう一つは「選択感を持てるようにする」ことです。「給料が減ってもいいから、自分は仕事量を減らしたい」という選択も可能で、その選択が尊重されるようであると、一人一人にとってワークライフバランスは、非常に質の高いものになるでしょう。


では

「仕事に誇りややりがいを感じられるようにする」
「経営・会計の透明性と、会計リテラシーを高めて納得感を持てるようにする」
「選択感を持てるようにする」


という3つは、企業経営の中で、実際にどのように実現していけばいいのでしょうか?


1.仕事に誇りややりがいを
感じられるようにする


「仕事に誇りややりがいを感じられるようにする」については、自分達の事業の社会的な意義や価値を経営陣が発信したり、社員が探求したりすることが重要です。

ある居酒屋では店長が「居酒屋の社会的意義」について毎日語り続けていて、それによって社員が本当に自分たちの仕事に誇りをもって働いているというのがあります。「いいか、居酒屋っていうのは、本当に素晴らしい仕事なんだ。居酒屋で楽しく過ごす、大事な話をする、それによって活力が得られて、また明日も頑張ろうって思える。家に帰る前に、居酒屋で過ごす時間が楽しいか、楽しくないか、それでその人たちの明日はホントに変わるんだ。それくらい大事な仕事なんだぞ!」ということを、毎日毎日言い続けているのです。

例えばこのような経営努力はとても大切なものだと思います。


実際、システムエンジニアの世界などでは、本当は社会的にとても意義深い仕事をしているのにもかかわらず、それを実感できずにいるといった問題があったりします。例えば、銀行のATMのシステム。私たちが毎日のように使う大切なシステムですが「システムを作ってくれて、支えてくれてありがとう。今日も使わせてもらっています」といった感謝の声は、システムエンジニアに届くことはほとんどなく、逆に少しでもトラブルがあれば叱責はされる、といった状況に陥ってしまったりします。

いかに自分たちの仕事が社会的意義があるかについて、働く人々は自分達で思い出す、探求すると言った時間を持つことも重要です。

2.経営・会計の透明性と、会計リテラシーを高めて納得感を持てるようにする


「経営・会計の透明性と、会計リテラシーを高めて納得感を持てるようにする」というのは、もうそのままです。できる限り経営・会計の透明性を高めることです。そして、その数字の意味をちゃんと理解できるように、組織全体の会計リテラシーを高める勉強会などを実施していくことが重要になります。

人材育成(経営・会計の仕組み)


3.選択感を持てるようにする


「選択感を持てるようにする」というのが、おそらく一番難しいだろうと思います。「利益を最大化する」ということを経営の第一目標としておいている企業が多いからです。「儲かるけど、忙しくなるからやりたくない」ということを社員が選べる、というのは大変な経営リスクでもあるからです。

現実的には「やりたくないを選べる・給料は高くない上がりにくい」というキャリアパスと、「やりたくないは選べない・給料は高い上がりやすい」というキャリアパスの2通りを用意するといったことが対策になるかと思います。このようなキャリアパスを用意した場合にも「社員の会計リテラシー」の向上は必須で、それがなければ、折角このようなキャリアパスの用意の意味や意図も理解されなくなってしまいます。



こういった施策達を実行し、真にワークライフバランスを向上させ、真の働き方改革を実現していく企業が増えていくことを心から願っています。


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