ヒューマンセンタード経営の6つの要素
ヒューマンセンタード経営
の6つの要素


Vision Driven:求心力

事業価値、社会に対する貢献価値を組織の求心力とする。
人が最もパフォーマンスを発揮する条件の一つとしてインサイドアウト(内発的動機)があります。
「こういう貢献をしていきたい」「こういう状態を実現したい」といった想いを持った仲間が集まって組織化されていきます。
ゲイリー・ハメル教授のいう能力のLv5(創造性)やLv6(情熱)が発揮される経営であるために大切な要素です。
人材採用なども「ビジョン採用」を行います。労働条件のよしあしだけなく「積極的に貢献したい」という会社としての軸を求心力として経営していきます。
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Diversity of value:価値の多様性

利益だけでなく、顧客満足、社会的意義、やりがい、生活の質…多様な価値を重視する。
「それは利益になるのか?ならないのか?」だけに偏った発想が強くなると、金銭換算できないものが組織の中から排除されていくことになります。
極端化していけば「職場での挨拶は売上につながるのか?」「毎日5秒の挨拶は無駄だ、削減しろ」などということにもなります。
しかし、職場での挨拶などは、直接的に金銭換算はできないかもしれませんが、だからと言って「価値がないもの」と結論付けてしまうのは安易だと言えるでしょう。職場の人間関係が良好になり、よって連携がスムースになり、よって生産性が高まり、利益に貢献する・・・というように考えることもできますし、「そもそも、お金になるかならないかに関わらず、他者への経緯や感謝を示す挨拶は大切なものだ」ということ自体の価値を大切にする、という考え方もできます。
金銭換算できないものも含めて、多様な価値があるという認識を共有していることで、職場そのものの豊かさが増していきます。
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Transparency:透明性

透明性を高め、1人1人が責任を持って判断できる環境を整える。
透明性は、メンバー一人ひとりが自律的に動いていくうえでの重要な要素となります。ブラックボックスが多いほど、責任をもって自律的判断することは難しくなります。
自社の売上やかかっている経費の数字を全く知らずに「経営的な観点から判断しろ」と言われてもそれは無理だということになりますし、「どう頑張ったら収入が増えるのか」ということが全く分からないという状況では、やる気が出ない、ということもあるでしょう。
究極的には、社内の会計情報などをフルオープンにするということもあり得ます。(給与情報なども含む)実際に、そのように経営をしている企業の例もありますが、そこまで極端にすべての情報を開示しなければならない、ということではありません。
とは言え、一人一人の自律性や責任感を醸成するためには情報の共有は必須と言えます。今後は、透明性の高い企業ほど、社員のエンゲージメントも高い、という状況が進んでいくだろうと思われます。 全体がよく見えていれば「全体を見渡すと、ここでこれをやるのは単なる自分のわがままだな」などという視野の広い判断もしやくすくなります。透明性は「大人な社員」を育て「大人な組織」になっていく一つの鍵です。
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Self-management:自由と責任

社員1人1人の個性や状況を加味した最善の仕事を管理する。
一人一人の個性を無視して、社員一人一人の能力を最大限活用することなどできません。左利きの人に、右手で字を書けといってもしょうがないことです。
法律的な労務管理上の問題もありますが、極端に言えば、朝のほうが仕事がはかどる朝方社員もいれば、深夜のほうがはかどる夜型も社員もいます。パフォーマンス、成果を重視するのであれば、極力、個々人の個性を生かした働き方が実現されていることが望ましいと言えます。
しかし、多様な個性を、一人の管理職が責任もって管理する、となるとこれは大変です。むしろ、個性を生かす自由を一人一人に持ってもらう代わりに、実現すべき成果についても個々人で責任をしっかり持ってもらう、つまりセルフマネジメントを基本とすることで、メンバーのパフォーマンスを最大化することができます。
「個人が勝手にやるとチームワークが乱れる」という懸念もあるかもしれませんが、透明性と対話力を組織的に高めることで「必要な連携は自然と発生する」ようになります。連携を管理する必要はありません。
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Agile:アジャイル

見通しを持ちつつも、環境変化に柔軟に対応する。
変化の激しい現在のビジネス環境においては「期首に立てた目標を、1年間かけて達成する」という管理手法がそぐわなくなっています。顧客や、競合などの動きによって「昨日立てた計画は、ご破産しなければならない」ということが頻繁に起こります。
ですから「目標そのものを変更する/更新する」といったことを柔軟に行っていく必要があります。そうなると「期首に立てた目標に対して、達成率が●%だったからB評価」といった従来の評価手法も機能しにくくなります。より総合的、定性的な評価を、丁寧なコミュニケーションと共に行う必要性も増してきています。(No Ratingは、その流れの中から出てきた概念です)
但し「どんどん変わるのだから、目標や計画を立てても意味がない」ということではありません。効果的に仕事を進めていく上では目標や計画を持っておくことは重要です。当初目標に縛られすぎずに、柔軟に修正し続けられる仕事の仕方が求められています。
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Dialogue:対話

組織の心理的安全性を高め、当事者同士で対話しながら合意形成していく。
「個が活きる」ということと「組織としてまとまりがある」ということを、両立させるには【対話】が必要となります。
対話の能力を高められた組織は、「個々人が個性をフルに発揮して活躍する/組織として同じベクトルに向かってフルに協働する」ということの両立という果実を得ることになるでしょう。
対話は「命令/報告」などとは違ったコミュニケーションです。当事者である自分たちが集まって、必要な情報は共有されており(透明性)、自分たちにとって最善の合意を生み出すものです。
「命令/報告」型コミュニケーションに慣れ親しんでいると、当初はストレスを感じたり、まどろっこしく感じたりするかもしれません。しかし、組織的な対話能力を高めていくと「本質的な議論が素早くできる」「面従腹背などでなく、本当に納得した合意が得られる」といったメリットを多分に享受することになります。