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「強さ」×「大きさ」でビジョンを描く

「強さ」×「大きさ」でビジョンを描く

本当に機能するビジョンの考え方

社員ひとりひとりのビジョン

私たちは、ビジョンや経営理念を、「強さ」×「大きさ」の2軸で考えています。

「強さ」というのは、あなたがそのビジョンに対してどれだけ本気で、本心からを実現したいと思っているかの部分です。

「心の底から望んでいることか」「そのビジョンに対してどのくらい情熱を感じるか」「このビジョンのためだったらどれだけ頑張れるのか」が、ビジョンの「強さ」の要素です。


そして、そのビジョンについてどれだけ多くの人が共感しているかが、「大きさ」の部分です。

ビジョンの本当にコアな部分は、それが本心であるなら、「フェラーリに乗りたい」「俺が金持ちになりたいから」で構いません。隠して綺麗なビジョンを作ったところで、必ずにじみ出て社員には伝わります。「結局社長が望んでいるのは自分が金持ちになりたいだけでしょう?」と。

けれど、社長のためにやらされてるんだと社員が働いているのは嫌なのであれば、社員にとっての価値もビジョンに盛り込んでいく必要があります。例えば、別に俺ひとりだけではなく、一緒に働く社員も金持ちになったら嬉しいし、自分もそれを望んでいる。なら、「社長も金持ち、社員も金持ち」な会社を目指すか…といったように。

これがビジョンを「大きくする」ということです。


最終的には、強くて、大きなビジョンを描いていきますが、大きさを先に広げてしまうと、強さが弱まり、ついつい機能しない飾りもののビジョンになりがちです。

ですので、まずは強いビジョンを描くことをおススメしております。


「強い」ビジョンを描く


ビジョンの「強さ」とは、先ほど申し上げましたとおり、そのビジョンに対してどれだけ本気で、本心からを実現したいと思っているか、という部分になります。

ビジョンに対する社員のコミットメントレベルについて、書籍『学習する組織』で言及されている内容を参考にご紹介します。

Lv.7 コミットメント

  • それを心から望む。あくまでもそれを実現しようとする。
  • 必要ならば、どんな「法」(構造)をも編み出す。
  • Lv.6 参画

  • それを心から望む。
  • 「法の精神」内でできることならば何でもする。
  • Lv.5 心からの追従

  • ビジョンのメリットを理解している。
  • 期待されていることはすべてするし、それ以上のこともする。
  • 「法の文言」に従う。「良き兵士」
  • Lv.4 形だけの追従

  • 全体としては、ビジョンのメリットを理解している。
  • 期待されていることはするが、それ以上のことはしない。
  • 「そこそこ良き兵士」
  • Lv.3 嫌々ながらの追従

  • ビジョンのメリットを理解していない。だが、職を失いたくもない。。
  • 義務だからという理由で期待されていることは一通りこなすものの、乗り気でないことを周囲に示す。
  • Lv.2 不追従

  • ビジョンのメリットを理解せず、期待されていることをするつもりもない。
  • 「やらないよ。無理強いはできないさ。」
  • Lv.1 無関心

  • ビジョンに賛成でも反対でもない。
  • 興味なし。エネルギーもなし。「もう帰っていい?」


  • ビジョンに対して上述したLv7の段階に、まず経営者自身がいないといけません。「これを実現したい!」と情熱的に思っているということです。繰り返しになりますが、これがビジョンの「強さ」です。

    このビジョンの強さを無視した「見栄えだけいい」ビジョンが世の中にはたくさんあります。例えば「すべてはお客様のために」みたいなビジョンです。

    これは、本当に心からそれが自分の望みだと思えていればいいのですが、実際にはそういうことはほとんどありません。そういう見栄えだけのビジョンを語っているとき、経営者の顔は全然イキイキとしていないのです。


    これまで接してきたお客様で、例えば「本当に望んでること。。。え、、、やっぱりフェラーリ乗ってみたいですけど。。。」と言いつつ、顔が輝いてきた方がいらっしゃいます。

    これが、その社長にとっての「強いビジョン」です。「フェラーリ乗りたいぞ!」という。そのためにだったら、頑張れる。この「そのためにだったら、頑張れる」というのが、とても重要なわけです。これが「ビジョンの強さ」ということです。


    オリンピック選手は「強いビジョン」を持っています。「絶対金メダルを取りたい!」とかって強く思っているわけです。だから、4年間が大変でも、頑張れる。

    これがビジョンにとって重要なことは言うまでもありません。逆に言えば「よし、大変でも頑張ろう!」と思えないものは、すでにビジョンですらないのです。

    目標に向かって頑張る社員


    「強いビジョン」であることは、必須です。その社長にとっての「強いビジョン」です。「フェラーリ乗りたいぞ!」という。そのためにだったら、頑張れる。この会社のトップ社長にとってLv7であることは最重要と言っていいでしょう。本当にそれが実現したいのであれば「日本の介護問題を解決したい!」でもいいですし、「世界の環境問題を解決する!」でもいいです。

    私は「俺がフェラーリに乗る!」もOKだと考えています。大事なことは「強く願っている」ということです。その想いの強さです。


    では、会社の社長が「うちの会社のビジョンは、私がフェラーリに乗れるようになることだ!」とビジョンを社員に提示して、そうしたらどうなるでしょう?

    そのビジョンを提示されて、共感して「よし、そのために頑張ろう!」と思える社員はなかなかいないと思います(笑)

    ここで出てくるのがもう一つの要素であるビジョンの「大きさ」です。この「大きさ」というのは、どれだけ多くの人がそのビジョンに賛同し、共感してくれるものかということです。ビジョンに対するコミットメントレベルがLv7やLv6の状態で社員がいられるかどうか、ということです。


    「大きい」ビジョンを描く


    先ほど例に出した、「社長がフェラーリに乗る」というビジョンは、ビジョンを出した社長にとっては「強い」ビジョンですが、どれだけ多くの人がそのビジョンに賛同し、共感してくれるものかという「大きさ」の部分を考えると、小さいビジョンと言えます。(大きくて弱いビジョンよりは、私はいいと考えていますが)

    この小さくて強いビジョンを、強くて大きいビジョンに描きなおしていく作業が、経営者にとっては大切になってきます。


    以下は前述の社長との会話の続きです。

    「さて。これ、社員に言ったら、”よし!社長をフェラーリ乗せるぞ!”って社員は盛り上がりそうですかね?」

    「いや、まったく無理ですね(笑)」

    「ですよね(笑)。強さを減らさず、でも社員も燃えてくるようなものにしていくとしたら、どんな感じになりそうでしょう?社長、社員の方にも「こういう幸せを手にして欲しいなぁ」と思うものは、何かありますか?」

    「ああ、、、そう聞かれると、僕だけが高級車乗りたいわけじゃなくて。もちろん社員にもポルシェ乗ってもらうとか、別に車じゃなくていいんですけど、旅行が好きなら旅行に行ってもらうとか、そうやって人生を満喫してもらいたいなと思いますね」

    ・・・という感じで出てきた、その会社のビジョンは以下のようになりました。


    「社長はフェラーリオーナーの夢を叶える!みんなも、乗りたい車乗ったり、行きたい旅行に行ったりする夢を叶える!」


    このビジョンは「強くて大きい」ビジョンとして、しっかりと機能しました。社長も、社員のみなさんも「うん、そのために頑張ろう!」って思えるものだったのです。

    これはあくまで一例ですし、例えば対外的にホームページなどに掲載するビジョンとしては、もう一工夫必要だったりもします。

    しかし、私たちは、ビジョンの一番の役割は、対外的でなく、対社内的に「組織全体の方向性を束ねる」ことであると考えているため、このような社長も社員も盛り上がった!というビジョンであることを最重要視しています。


    ビジョンは、そのビジョンを示したら本当に社員に響くのかを考えていく必要があります。これは、先ほどの強くて小さいビジョンとは別に、社員向けの新しいビジョンをゼロから描くという意味ではありません。

    今 描いた強くて小さいビジョンがどんなものかではなく、その強くて小さいビジョンを、社員の状況やニーズにあわせて、どう通訳して伝えてあげるか、といった側面です。


    「翻訳して」大きなビジョンに描き直す


    ビジョンを翻訳して描き直す際は、社員ひとりひとりの違ったニーズを全て満たすことが理想ではありますが、社員数が10名を超えてきたとき、それを実行するのは現実的に非常に困難です。

    そこで参考になるのは、人間の「ニーズ(欲求)」に関する有名な心理学の研究、マズローの『欲求階層説(自己実現理論)』に基づく考え方です。始めに、欲求階層とはどのようなものかをご紹介します。


    マズローの欲求階層説(自己実現理論)は、触れたことがある方も多いかと思います。その名の通り、人の欲求には階層があるとする考え方です。心理学者のマズローが提唱しました。欲求は、基本的に以下の5つの階層に分けられます。

    マズローの欲求階層説(自己実現理論)


    欲求階層説の重要な点は以下の部分になります。

    【下位の欲求が満たされて、自然と上位の欲求が生じてくる】
    【下位の欲求が欠乏してくると、上位欲求は減退し、下位欲求が中心となる】



    マズローの欲求階層説からわかることは、職場においても、社員の欲求階層によって、一番満たしてほしいものや仕事に感じる意義も違うということです。

    会社には、実際問題として、それぞれの欲求レベルの人が存在しています。うちの会社はこの層にいる社員が多いという傾向はあるかもしれませんが、基本的には、どの層にも何人かずつは当てはまりそうな社員がいるのではないかと思います。

    だから大きな「全社員に響くビジョン」にしようと思うと、各欲求レベルの人が「そのためになら頑張りたい!」と思うように”翻訳”をしていくことも大事になってきます。


    例えば、会社のビジョンとして「世界の環境問題緩和に貢献する」ということを掲げたとします。これは自己実現欲求人材には響くビジョンです。「ああ、自社の仕事は、世のため人のために貢献しているんだなぁ」というように思えるからですし、それによって意欲が刺激されるからです。

    しかし、他の4つの種類の人材には響きません。なので、もう少しビジョンに対して「このビジョンが実現されていくことで、あなたにとっても素晴らしいことがあるよ」という翻訳をしていくのです。


    次から、マズローの欲求階層説を基に、各層にいる社員へどのようにビジョンを提示したらいいのか考えていきますので、是非自社で該当しそうな社員を思い浮かべながら、読んでみてください。


    最下層の生理的欲求(寝る、食べる)は、満たされていれば、次の安全の欲求(安心して暮らしたい、など)が生じてきます。しかし、何日も食べることができていない、ともなれば安全の欲求などいいから、まずは腹を満たしたい。そればかりが欲求として強くなる、という状況です。

    現代の日本社会において、生理的欲求が満たされていないという人はそれほど多くないと思います。会社員という立場であればなおさらです。


    ですので、ビジョンを提示する対象としては、次の「安全の欲求」から考えていきます。安全欲求は、安心して暮らしていたいといった欲求です。

    「いつクビになるか分からない」「来年もちゃんと生活できているだろうか?」こういったことに”ビクビク”しているようだと、安全の欲求が満たされているとは言えません。以前の日本企業の中心的スタイルであった「終身雇用」というのは、この安全の欲求を満たすうえでは、非常に効果的であったろうと思われます。

    会社員、という時点で漫然とではあっても「会社は来年も存在するし、給料は支払われる」という風に思えているケースが多いかなと思います。そういう意味では、今も多くの会社員にとって安全の欲求までは満たされていることが多いと考えられます。

    この欲求がまだ満たされていない社員へは、主に「雇用の安定」「福利厚生」などへ訴えかけることが重要です。「このビジョンが実現されたら、雇用の安定性が増してより安全に暮らせますよ」「会社が大きくなったら福利厚生も充実していきますよ」というイメージです。


    次に所属の欲求ですが、これは「居場所がある、仲間がいると感じられていること」というようなものになります。

    脱線しますが、実は、社員の「所属の欲求」は、まずそもそも上手に満たせていない会社組織がたくさんあります。「自分は歯車のように感じる」「職場に”仲間”と思える人はいない」「他部署とは”関係がない”」「職場の人間関係がストレスだ」といったように。

    人々が「自ら目標を設定し、主体的に働く」といった状態を、多くの経営者は望みますが「主体的に働きたい!」というのは、次の段階の承認の欲求レベル以上のものです。その手前の所属の欲求が満たされていなければ、これらの欲求は生じてこないのです。(下位の欲求の充足が、優先されるのです)

    そう考えると、職場の人間関係が向上するように配慮することが、マネジメントにとっていかに重要かが見えてきます。職場の人間関係(上司部下の関係、同僚同士の関係など)がギスギスしているレベルであると、人々は自分の才能を発揮して主体的に働いていくことは難しくなるのです。(この内容は、「組織マネジメントの前提」「部署内の一体感醸成」などで解説します)

    マズローの欲求階層説(自己実現理論)と組織ビジョン


    話を戻し、この欲求がまだ満たされていない社員への問いかけを考えていきましょう。所属欲求は、端的に言えば「居場所を求める」欲求ですので、「この会社は自分の居場所で、よき仲間たちと協働している」といった認識が生まれるようなビジョンの提示が重要です。

    あくまで例えになりますが。「このビジョンが実現されたら、メンバーとの関係がますます良くなる」「これが実現されたときには、お客様から深く感謝されていて、とてもこの会社にいることを誇らしく感じると思う」といったように。

    また、「・・・というビジョン実現のために頑張っていけば、うちの会社の社会的な地位も上がっていくし”いい会社に勤めているね”とかって思ってもらいやすくなるよ!」といったことを伝えることも重要になってきたりします。


    こうして所属の欲求が満たされてくると、生じてくるのが「承認の欲求」ということになります。この承認の欲求というのは「自己肯定、自己尊重」といったもので、自分の才能を生かして、自分らしく仕事をしたい、それができているという風に実感できることが重要になります。

    この欲求レベルを、自分の動機として仕事をしているとき、人は「イキイキと働いている」と言える状態にかなり近いことになります。ですから、全社員が所属の欲求までは満たされていて、承認の欲求以上のレベルで仕事ができる職場であるというのはかなり理想的な状態になります。

    この層にいる社員は、個性の発揮を求めていますので、「この会社にいたら、あなたの夢を追いかけられるよ」「この会社での仕事は、あなたの才能を存分に発揮できるよ!」といった部分をちゃんと伝えることが重要になります。

    また、「・・・というビジョン実現のために頑張っていくプロセスで、あなたたちの才能やアイデアをどんどん生かしてほしいし、そうでないと実現していかないから、期待しているよ!」といったことを伝えることも効果的です。


    最後の「自己実現の欲求」ですが、これはマズローが言っているのは「真善美の追求」という欲求です。一般的に「自己実現」というと自分らしく生きるというように解釈されがちかと思いますが、これは欲求階層説でいうと自我欲求なのです。

    世のため、人のため、より善きこと、より美しいものを実現していきたい。自分のためか?人のためか?その境界が溶けてしまっているのが自己実現だとマズローは言っています。苺の最後の一粒を、孫の口に運ぶのが自己実現だとも言ってました。

    そして、マズロー自身は「実際に、自己実現欲求レベルで生きている人は多くはない」と言っています。ですから、全社員がこのレベルでいるということを望むのは、少々高望みと言えるかもしれません。

    自己実現欲求の層へは、社会的意義があることを伝えることが重要になります。


    このように補足的な”翻訳”をすることで、強いビジョンを、強くて大きいビジョンにしていくことができます。



    社員ひとりひとりの違ったニーズに対して、それぞれにちゃんと響くようにビジョン示さなければ、「大きなビジョン」になりません。例えば、「目標売上100億円!」だけでは、社員からするとただの数字でしかなく、組織のビジョンとしては機能しないのです(ただし、それが社長にとって最も強いビジョンならば、社長の個人的なビジョンとしては機能します)。

    経営理念が浸透している会社と機能していない会社


    素晴らしいビジョンを掲げているのに、社員には響いていないと感じられている方は、「そのビジョンは社員の目線からすると、どのような意味や価値があるのか」 「それが実現されたとき、社員のどのようなニーズを満たせるのか」を是非考えてみてください。

    もしかしたら、あなたの中ではさまざまな価値や社会的意義とつながっている素晴らしいビジョンであっても、実際に社員へ伝えている言葉は氷山の一角にとどまり、社員の想像力では、「それはどのような意味のあることなんだ?」と全体を理解できていないのかもしれません。

    「ビジョン」は社員のやる気を高めるために提示するものです。お客様に「買いたい!」と思わせるのと同じように、社員に「実現したい!」と思わせる工夫をすることが重要です。


    「強さ」×「大きさ」でビジョンを描く考え方については、以上になります。


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