Vol.11 権利ばかり主張してくる社員
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今回のご相談内容
会社のことを考えて色々提案してきてくれるのはいいのですが、正直、自分勝手な要求ばかりで辟易しています。
勉強熱心でもあり、”他社ではこういう制度のところがある” ”こういう事例が雑誌に出ていた”というところを出してくるのですが、休暇制度だったり、報酬制度だったり、どうも権利ばかりを主張してくる感じで困っています。
石川からのご回答
会社全体のことを考えて、会社の制度についても提案してくれること自体は喜ばしいことですが、その内容が稚拙であると対応するのも疲れてしまいますよね。しかも、その社員が「良いことをしている!」という気持ちが強い時に、むやみに否定するのも難しい感じがします。
そういった少し未熟で自分勝手な面がある社員であるほど、丁寧さを欠くと「スネてしまう」といったことにもなり、それはそれでまた面倒ですね(苦笑)
権利ばかり主張する社員への
対処法
この該当する社員が、どういう社員かによって対応は大きく二つの方向が考えられます。
一つは「自分の担当業務についてはちゃんとできておらず、それなのに会社全体のことについて提案してくる」というケースです。もう一つは「自分の担当業務についてはちゃんと成果を出していて、その上で会社全体のことについて提案してくる」というケースです。
前者の場合は、基本的にはハッキリと「あなたに今、会社全体のことを考えることは求めていない。優先順位として、自分の担当業務で成果が出せるように勉強を積むことを期待している」といったことを伝える必要があります。
「会社全体のことを考えてくれることは勿論嬉しいので、まず自分の担当業務でしっかりと成果を出したうえで、また半年後とかに会社の制度についても提案を持ってきてほしい」というように、会社全体のことを考えること自体を否定はしないけれど、ハッキリと”物事には順番というものがあるよ”ということを伝える必要があります。
後者の場合は、”まずは自分の仕事をちゃんとしろよ”という突っ込みどころはないわけですから、”提案してくること”そのものは否定されるべきものではないなと思います。
しかし、実際にいくつかの会社でこういうケースには遭遇してきていますが、確かに「うわぁ、権利ばかり主張してる感じで、経営のリスクとか見えてないなぁ」と思うものが多いものです。
分かりやすいものは「忙しいから、人を採用しましょう」というものですね。
人を採用すること自体は別に悪いことではありませんが
- 「人件費(固定費)が上がる」
- 「その分、利益の絶対額を増やす必要がある」
といった経営面を考えずに、提案してくる社員も多くいます。
「うちの会社もフレックス制度にしましょうよ」といったものもそうです。
確かに、フレックス制度を導入して上手くいった会社もあります。しかし、フレックス制度を導入して組織が壊れてしまった事例もあるわけですし、フレックス制度は失敗だったと考えてフレックス制度を中止した会社もあるわけです。
そういう、負の面を考えずに「あー、自分も午後から出社するとかできたらいいな!」といった気持ちからスタートして、提案してきてしまうケースがあります。
このような時に「他社事例を調べたり、会社全体のことを考える」という姿勢は否定せずむしろ褒めて、しかし同時に「提案内容は視点が偏っており未熟である」ということを注意する、ということをやることが必要になります。
社員のスキルアップへとつなげる
一つのお勧めとしては、以下のように提案してきた部下に伝えます。
「おお、フレックス制度か。そういうのをちゃんと検討するのは大事だなぁ。ありがとう。しっかり検討したいし、それもあなたのスキルアップにもなるだろうから、成功事例、失敗事例をそれぞれ調べてみて欲しい。」
「フレックスをやること、やらないことが、社員目線、顧客目線、財務目線、セキュリティ目線などでそれぞれどういうメリット・デメリットがあるかなども整理してみてほしい。その上でA案B案C案くらい、3案くらいの比較表にしてもらえるといいな」
このように伝えます。
これを聞いて、ちゃんとやってくる社員であればそれはむしろ優秀ということになりますし、その社員はこの仕事を通して着実に、経営者目線を獲得していくことでしょう。
もし「あ、そこまでやらないといけないなら、面倒だからいいや」と内心おもって、提案をしてこなくなれば、一旦それはそれでOKでしょう。
折角、社員がどのような方向性であれ「やる気」という無形資産を持ってくれているわけですから、活用しないのはもったいないことです。基本的には本人の知識量アップ、スキルアップにつながっていくように誘導していくことが望ましいと言えます。
今回のご相談への回答は以上になります。お役に立つところがあれば幸いです。
[Vol.11 2018/05/29配信号、執筆:石川英明]