Vol.16 社員に会社の方向性が見えないと言われました(前編)
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今回のご相談内容
ビジョンや全社の目標といったものについてお聞きしたいことがあります。
当社では、明確にビジョンを示しているにも関わらず、先日ある社内アンケートを行ったところ
- 「会社の方向性が見えない」
- 「目指すところをはっきりと示してほしい」
といった声がそれなりの割合で出てきていました。
正直なところ、ショックがありました。どうしてこのようなことが起こってしまうのでしょうか?
石川からのご回答
このご質問に対しては、二つの層の回答があります。
一つは「ビジョンを示しているつもりでも、その意味合いをしっかりと浸透させるにはかなりの努力が必要です」ということです。
もう一つは「社員から方向性が見えないといった意見が出てくる場合、ビジョンの問題よりも直属の上司とのコミュニケーションの問題の可能性があります」ということです。
まず、後者の視点からご説明します。
上司の指示に矛盾を感じて起こる
一般社員が「会社の方向性が見えない」というような場合、それは具体的には上司から「おい、もっとミスないように質の高い仕事をしろよ」と言われ、その翌日には「おい、のそのそやってるなよ、スピーディに仕事しろよ」と言われた、みたいなことを指していることが多いのです。
これは一般社員からすると「質と、スピード!どっちなんだよ!ちゃんと方向性を示してよ!矛盾したこと言わないでよ!」みたいな気持ちになるわけです。
これが「方向性が見えない」といったアンケート記入になることはよくあります。
実際の”仕事”においては、矛盾したものを引き受けながらやっていかなければならないものです。
「利益」などということはその最も象徴的なもので、経費を減らしつつ、売上を伸ばす必要がある、ということになります。ものすごくコストをかけて売上を伸ばしても、利益が減ってはあまり意味がありません。
そういう「矛盾した要素を引き受けながらやる」ことが仕事なわけですが、こういった点を理解していない社員からすると、上司が「質も!スピードも!」と言ってくると「矛盾した理不尽な指示を出してくるダメな上司」というような印象を持ってしまうのです。
この問題を解決しない限り、「全社のビジョンについてより一層語る時間を増やし、社員の理解・共感を深める」といった努力をしたとしても、社内アンケートを取ると相変わらず「しっかり方向性を示してほしい」といった不満が、社員から出てきてしまうのです。
社員に大人になってもらう
この問題を解決するには、社員に「矛盾したものを引き受ける必要がある」ということを理解してもらう必要があります。
これは、ひらたく言えば「社員に大人になってもらう必要がある」ということです。
社員に大人になってもらうには少し工夫が要ります。
社長や上司から直接「質もスピードもどっちも大事に決まっているだろう!」と教えてあげたところで、「なんだよ無茶言いやがって」となってしまう危険性が大いにあるからです。
これは、宣伝のようになってはしまいますが、こういう時こそ外部の研修講師やコンサルタントが「教える」方が、社員も一般論として受け入れやすく、理解しやすいという面があります。
もう一つは、適切なゲームや謎かけのような形にして”自分たち自身で考えてもらう”ということです。
「教える」よりは「考えてもらう」のです。
「仕事で、質を無視してスピードだけ追求していたらどうなると思う?逆に、スピードを無視して質だけ追求してたらどうなると思う?お客さんから見たらどうだろう?」と。
「確かにめちゃくちゃ美味しいけれど、入店してから3時間一品も出てこないお店。確かにすぐ出てくるけど、焦げてたり、冷めてたりするのしか出てこないお店。どう?」というように。
こういったお題を、社員数人にグループ検討してもらうというようなプロセスをとることで「社長、やっぱり、お客さん目線で考えると、質もよくて、スピードも速くて、かつ安い料理店がいいです」という、当たり前の結論をちゃんと持ってきてくれたりします。
そして、自分たちでその結論を出すことは、社長から100回同じ話を説教されるよりも効果が高かったりするのです。
今回は後者の視点から書きましたが、前者の視点も重要ですので、その点はまた次回お伝えしたいと思います。
[Vol.16 2018/07/03配信号、執筆:石川英明]
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