Vol.39 「社長決めてください」と社員から何でも困りごとが持ち込まれる状況を変えたい
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今回のご相談内容
社員から「社長決めてください!」ということが、大事から小事まで、日々様々なことが持ち込まれてきます。
業務に関することならまだしも、「Aさんが○○していたんですけど、うちの会社はそれってありなんですか!?」というような、人間関係の些細ないざこざみたいなものもあり……正直なところ、「自分たちで考えてよ」「そんな細かいところまで知らないよ」と思うようなことも多々あります。
社長は決めるのが仕事と思ってやってはいますが、このような状況をどうにか改善できないモノでしょうか。
石川からのご回答
社長や管理職のところには、日々さまざまな「決めてください」が持ち込まれますよね。会社は、人の集まっている組織ですから、人間関係に起因するような相談事も持ち込まれたりします。
相談者さまが悩まれているような、「あの人は自転車通勤してるんですけど、うちの会社は自転車通勤いいんですか!」とか、「その決済まで社長の仕事かよ。。。」とトホホと思ってしまうようなことが持ち込まれたりすることも多々あります。
もしここで「分った、ちょっと考えておくよ」と、社長の方が預かって、それから「全社員、自転車通勤は禁止とする」とか「自転車通勤は許可し、駐輪場を会社で借りる」とか、ルールを決めて発表するような対応をしたとします。
そうすると当然のことながら「困ったことがあったら社長に言えばいいんだ」と考えるようになり、ますます社長のところに「決めてください」が持ち込まれるようになります。
また、どうしても「Aと決めた」という場合には「Bがいいと思っていたのに」という社員からは不満が出る、ということも起こってしまいます。
確かに社長の仕事は「決める」仕事なのですが、これはそれほどいいやり方とは言えません。
「決める」と「考える」を分ける
決める前には「様々な観点から熟慮し、最善策を考える」といったプロセスがあります。そのプロセスなしに「決める」ことをすると、勿論、結果として大変なことになります。
このプロセスは、実は社員教育にもってこいのことです。視野を広げて会社全体のことを考える、という経験値を積ませることができます。最終的に「決める」のは社長の仕事ですが、「考える」のは社員に任せていいわけです。
ですから「決めてください」が来たら、基本的に社員にこう返します。「私が決められるように、最善手が何か考えて持ってきてね」と。
そして注文を付けてOKです。
「全社員の納得感や公平性も加味して、総合的な最善手を提案できるようにもってきてね。一つの案だけでなく、複数案をよく比較検討してから持ってきてね」と。
社員の「考える」の質にも差が出る
こうして社長からバトンを渡された社員は、自分で「考える」ことを始めるわけですが、ここで一つの差が生じます。「自分一人で考える」か、「周りの社員を巻き込みながら考える」かです。
実際には、他の社員へヒアリングなどを行っていくと、その当該社員とは全然違う意見や状況などがあったりもするものです。
もし、提案された内容が「独善的な提案だな」と思われた場合には、「これ周りの人の意見も聞いてみた?」といったことを確認し、それがNoだった場合には、その提案を一旦却下してよいでしょう。
選択肢A、B、Cの中で、A案がよいと提案されたときに「うーん、Bの方がいいだろうなぁ」とズレがあることもあるかと思います。その場合は、それぞれの案に対するメリットやデメリットの洗い出しが甘いか、洗い出しは出来ているものの、重みづけの感覚がズレているかの場合があります。
洗い出しがが甘い場合には「他にも考えるべき観点があると思う」とか「この観点も加味してもう一度検討してきて」と一旦却下してよいでしょう。
洗い出しは出来ていて、重みづけのズレがある場合には、このデメリットは経営上クリティカルで軽視できないから、A案じゃなくて、B案でいきます」といった説明をしっかりと加えるとよいでしょう。
このようなやり取りを通して、非常に実践的な社員教育をしていくことができます。
出典:写真AC
経営上の様々なところでも応用できる
基本的には同じような構造で、経営上の様々なことに対処できます。
例えば「うちの会社の人事制度はおかしい」といった不満があったとしたら、それを社長が考えて対処してあげるのではなく「では、どんな人事制度がよいかよく検討して提案を持ってきて」とすることができるわけです。
その場合に、一人に任せるのではなく「このテーマの検討チームを始めるので、参加したい人募集」のように、社内でメンバーを公募し、プロジェクトとしてスタートしていくということもできます。こういった協働作業を通して、部署を超えたチームワークを高めることへもつなげられたりしますので、一石二鳥です。
「決める」ことの権限移譲もあります。
社長、リーダー、平社員と3階層の組織体制になっていたとします。その場合にリーダーに「決める」権限を委譲するということも行っていけます。「この範囲のことはリーダーが自分の裁量で決めていい」というものを作っていくと、社長は「決める仕事」からもどんどん解放されていくようになります。
マーケティング、仕入、営業、人事など、様々な領域について社長自身が「決めていること」を日頃からリストアップしていくとよいでしょう。いきなりリストの全てを権限移譲することはできませんが、「今年中に、このリストの1割は権限委譲を進める」といったことを考えてやっていくことはできます。
権限移譲した結果、問題なく業務や組織が回っているようであればそのままとして、問題があった場合には権限移譲を取りやめるということもありえます。
その場合には「こういう判断軸での判断が、まだ出来ていない」という、取りやめる理由をしっかりと説明することが、リーダー層への重要な教育となります。
今回のご質問に対する回答は以上となります。
いつも最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。
[Vol.39 2020/06/24配信号、執筆:石川英明]