Vol.62 いい人材がなかなか採用できない
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今回のご相談内容
いい人材がなかなか採用できず、困っています。
どうしたらよいでしょうか。
石川からのご回答
ご質問ありがとうございます。まずは「いい人材」とはどのような人材でしょうか、ということから考えてみたいと思います。
自社の事業に情熱を持ち、言われてないことでも自分で調べたり、考えたり、動いたりしていくような人材がいい人材でしょうか。それとも、言われたことに素直に従い、着実に実行できるといった人材がいい人材でしょうか。
もし後者のような人材を求めるのであれば、それは正社員として採用するのではなく、外注先として契約するということも選択肢かと思います。きっちりと要件を伝え、納期や契約金額をハッキリとさせ、着実に依頼した仕事を遂行してもらうということです。
現在は、かなり多くの仕事が「外注」を検討できるビジネス環境にあります。しっかりと吟味をしていくと自社の正社員として雇用すべき人材というのは、もしかするとそれほど多くないかもしれません。
採用の段階で訴求するものがその後にも大きく影響する
新卒採用でも中途採用でも、自社の事業に情熱を持ち、言われてないことでもどんどん自分で調べて、考えて、動く・・・といった人材を採用するには、逆説的になりますが「情熱を感じるような事業」を営んでいるということが重要になります。
例えば、今はオイシックスと経営統合をした大地を守る会という会社がありました。
有機農法などの農作物を通販するといった企業でしたが、社名に現れているように、地球環境を大切にしよう、そのためにできることをしようという理念を強く持った会社でした。
この企業は、大学で、環境について学んできた学生などには大変人気で、入社するための倍率は大変高いものがありました。「環境に貢献する仕事をしたい!」という情熱を持った学生を引きつける事業内容であったということです。
採用の段階で、人材に一番に訴求するものが「待遇のよさ」などであった場合、「待遇のよさ」を重視する人材が集まってくると考えていいでしょう。
そうであれば、入社してからもそういった人材たちは「会社に待遇改善を求める」「よりよい待遇の転職先を常に探している」「待遇に見合った分だけ働く」といった行動が多くなることは容易に予測されます。
採用の段階で、人材に一番に訴求するものが「自社の事業の意義や重要性」などであった場合、それに共感し、「この事業に関わりたい!貢献したい!」という人材が集まってくると考えていいでしょう。
そうであれば、入社してからもそういった人材たちは「この事業をどうしたら伸ばしていけるだろうか?」「どうしたらもっと自社を発展させられるだろうか?」などと考えて、行動するといったことが期待できるでしょう。
このような「いい人材」を採用しようとというときには、前提となる「事業の魅力」「事業の意義や(社会的)価値」といったものを磨いていくということが重要になります。
中小企業でも「自社事業のブランディング」は重要
中小企業であっても、大企業であっても「自社事業のブランディング」は重要です。もちろん顧客に対するブランディングもありますが、採用における企業ブランディングも考える必要があります。
採用、ということになると「どの媒体に、どう採用予算を使うか」といったことにフォーカスされることも多いかと思います。もちろんそういった具体的なレベルの検討も重要ですが、根本的に「人材を引きつけられる会社」にしていくということ、それを情報発信するということも非常に重要だと言ってよいでしょう。
短期的には「こういった採用媒体を活用する」といったことを細かくアップデートしていくことが必要ですが、中長期的に「人材の方から、どんどん集まってくる」という状態を形成することが理想的ではあります。
それは単に採用だけの問題に限らず、「入社後の人材の活躍度・成果」「会社の競争力」といったことにも直結してくることでもあります。
会社理念、存在意義、事業の目的、ミッション、パーパス・・・・などなど様々な呼び方をされていて、経営の教科書的には随分と前から「重要だ」と言われてきたものですが、時代の変化もあって、ますますその重要性が増してきています。
特に新卒採用に関わっていると「はたらく意味」を求める学生が非常に多くなってきていると感じます。中途採用であっても、その傾向は強くなっているかと思います。
「仕事なんだから、いいから働け」とか「給料をもらう以外に仕事をする意味なんてない」といった状態を続けていると、中長期的に採用難に陥り、人材の質が低下し、そのために事業の競争力も低下していき・・・といった負のスパイラルに入っていってしまう危険性もあります。
「いい人材」が、向こうからどんどん「入りたい」と言ってくる会社にする。
そのことを常に念頭において、打つべき施策を積み上げていくことが求められているかと思います。
今回の回答は、以上となります。
いつも最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。
[Vol.62 2020/12/22配信号、執筆:石川英明]