組織開発 用語辞典:「経営は何をすべきか」
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「経営の未来」「経営は何をすべきか」とは
ロンドンビジネススクールのゲイリー・ハメル教授の主要な著作に「経営の未来」「経営は何をすべきか」があります。
これらの著作の中では、ビジネスにおける情熱の重要性が指摘されています。特にそれを象徴している文をここに引用します。
顧客が毎朝起きて「何か新しいもの、ほかとは違うもの、素晴らしいものはないか?」と考えるような世の中では、企業が繁栄するかどうかは、あらゆる階層の社員の主体性、想像力、情熱を引き出せるかどうかにかかっている。そしてそのためには、全員が自分の仕事、勤務先やその使命と精神面で強くつながっていることが欠かせない。
ゲイリー・ハメル「経営は何をすべきか」
レベル1から3は、世界のどこでも雇うことができるので、社員から従順さ、勤勉さ、知識だけしか引き出せないなら、あなたの会社はいずれ経営が傾くということである。
主体性を持った人材は、課題や機会を見て取るとすぐさま行動を起こす。
創造性は、常識に挑戦する意欲を持ち、いつでも素晴らしいアイデアはないかとよその業界の様子を探るような、そんな資質だ。
情熱は、仕事を使命、社会をよい方向に変える手段として捉える姿勢である。このような情熱漲る人材にとっては、仕事と趣味の境界はあったとしてもごく曖昧なものだ。彼らは仕事に自分のすべてを傾ける。
創造性が大きな意味を持つ今日の経済で最大の価値を生む資質とは、ピラミッドの頂点に位置する「情熱」である。大胆さ、想像力、熱意こそが、差別化の究極の源泉である。
ゲイリー・ハメル「経営は何をすべきか」
市場環境の変化が激しいVUCA時代においては、言われたことしかやらない、市場に求められたことに後手後手に対応する、といったことしかできないようだと、その人材や企業は淘汰されていってしまいます。
市場や顧客から求められなくても、自らの情熱から、率先してよりよいサービスを創造し、市場へ提案するような人材こそが、このVUCA時代における重要な競争力なのです。
いかに自社の事業領域に、情熱を持った人材をエンゲージメントできるか。また、自社の事業領域に対する情熱を育むことができるかが、経営の重要課題になっています。
”情熱”は、一人一人の内側からしから生まれることができず、外から付け足すことができません。「情熱を持て」と命令されて持てるものではないのです。現実的には、自社の事業に対する”情熱”をもともと持っている人材を採用する努力が、まず第一の努力になります。
第二に、今既に社内にいる人材の情熱を引き出し、高める努力もあります。「今、情熱的でない人材を、情熱的な人材に育てる」のは簡単なことではありませんが、全くできないということでもありません。
”情熱”は外から方向づけることができません。「野球選手になることに情熱的になりなさい」と指示をして、その人が情熱的になることはありません。「あなたが本当に情熱を持っていることは何ですか?」と問いかけて、自由に答えるとこから”情熱を引き出す”ことが始まっていきます。
しかし、引き出された情熱が「そのまま自社の事業領域に直接貢献する」とは限りません。「花屋さんになりたい!」という情熱が出てきても「うちは野球チームだよ。。」というような”ズレ”が出てくる可能性はあります。
この”ズレ”が明確になってしまうのを怖れるため、情熱を引き出すことをやめてしまうケースは多くあります。
情熱を引き出し、かつそれを自社の事業領域にエンゲージしていく必要があります。ズレ(ギャップ)はあって構わないので、むしろそれをハッキリと明確化し、「どのようにエンゲージすることができるか?」を、社員本人も、経営側や上長も真摯に考える、ということからエンゲージメントが高まっていきます。
参考
書籍
経営は何をすべきか
著:ゲイリー・ハメル、 訳:有賀 裕子 2013年 ダイヤモンド社
経営の未来
著:ゲイリー ハメル 2008年 日本経済新聞出版社