会社を活性化させる【評価制度】と
停滞させる評価制度の違いとは?
会社を活性化させる
【評価制度】と
停滞させる評価制度
の違いとは?
メール講座8日目です。この講座も残り3日となりました。今日もよろしくお願いします!本日は会社を活性化させる「評価制度」と停滞させる評価制度について講義をしたいと思います。
評価制度というのは、会社組織を運営していく上で無視できない要素です。
評価制度は、大別すると
という4つの種類があります。
どの評価制度が自社にとって最適かを考える前に、評価制度は「何のためにあるのか」ということも、重要なことです。
どちらの考え方を採用しているかということも大きな影響があります。
そして、評価制度の重要な観点として「公平性をいかに担保するか」という問題もあります。
今回は始めに、評価制度の4種類それぞれのメリット/デメリットを解説し、そもそも評価制度は会社にとって何のためにあるのか、報酬との連動性に対する考え方、実際に評価制度を策定する際のコツなどを講義します。
各制度のメリットとデメリット
評価制度4種類の
特徴を整理する
成果主義:出された成果に応じて個人を評価する
能力主義:保持している能力に応じて個人を評価する
年功序列:年齢・入社歴に応じて報酬を分配する
鉛筆なめなめ:評価者が自身の判断において個人を評価する
ひとことで特徴を説明すると以上のようなものになります。
実際の評価制度は、いずれか1つ、もしくは複数のものを組み合わせたもので成り立っています。それぞれの特徴について、もう少し詳しくみていきましょう。
成果主義は、一見とても公平です。「100万円を売ってきた営業」と「50万円を売ってきた営業」であれば、前者を高く評価するというのはとても公平で、合理性があります。
一方で、「自分は50万円しか売ってきてないが、チームメンバーをサポートしており、その結果、チーム全体として500万円の売上ができている」といったものをどう評価するのは難しいところがあります。
「自分は100万円を売ってきているが、チームメンバーには全く協力せず、チーム全体としては300万円の売上ができている」という人材と比較して、どちらの方が「良い人材」なのでしょうか。
能力主義は、その点より総合的に人材を評価できるかもしれません。「Aさんは、自分の売上は50万円だが、Aさんの尽力によりチームの売上が伸びている。能力は高い」といった評価をできるかもしれません。
しかし、チーム全体の売上が伸びているのがAさんの尽力によるものなのかどうか、それとも他のメンバーの頑張りによるものなのか、この判断はとても難しく、それを判断するのはどうしても評価者の、主観的観察によるところしかありません。そうなると「評価者に気に入られている人材は高評価になり、評価者が気に入らない人材は成果を出していても低評価になる」ということが起こり得るため、公平性の担保が難しくもなります。
これを極端に振ったものが「鉛筆なめなめ」です。社長なり、管理職なり、評価者が「自分は総合的に部下の評価をできる」という人材が、自分の持っている情報、情報への評価の仕方を正しいとして、評価をするものが鉛筆なめなめです。
鉛筆なめなめの評価制度は、被評価者と評価者の信頼関係が高いときには、驚くほど機能します。「この評価者はちゃんと自分を見てくれている」「この評価者は、自分の好みなどに偏らず、公平に被評価者全体を評価できる人だ」と部下が信頼している場合には、とても納得度が高いものになります。しかし、もしその信頼性が低ければ「結局、評価者のひいきや好みによって評価されて、ちっとも公平性はない」と不満を募らせていく可能性もあります。
年功序列というのは、また全く違う発想の評価制度です。これはどちらかというと「年齢(社歴)が上がっていくにつれて、必要な収入が上がっていく。結婚し、家を持ち、子供が生まれたら必要な支出が増えていくから」といった考え方が入っており、これは「会社への貢献度に応じて評価する」というものとは異質なものです。
もう一つ、年功序列は「経験を経るにつれて、基本的に社員の能力は上がっていくものだ」という考え方もあります。これは終身雇用と相まって「長く働いてくれている社員ほど貢献度が高い」という考え方になります。
日本経営の三種の神器と言われたものは、年功序列、終身雇用、企業別労働組合です。戦後、長いこと、日本企業は年功序列を基本とし、そして世界的に大きな隆盛を誇っていました。
しかし、80年代のバブル崩壊あたりを境に、成果主義のほうが良いのではないか?それは急進的すぎる、能力主義を加味した評価制度にすべきではないか?というように評価制度は試行錯誤をしてきました。
そもそも何のためにあるのか
評価制度は何のためにあるのか
評価制度は
何のためにあるのか
評価制度は「社員を評価する」ということに力点が置かれて運用されていることが多いですが、「社員の育成に活用する」ということに力点を置いて運用している会社もあります。
これはそのまま評価者(管理職)は、なんのために存在しているのか?ということにも連動してきます。
もし、評価制度が「社員を評価する」ために存在していたら、評価者(管理職)も社員を評価するために存在しているという側面が強くなるでしょう。そうすると、社員XはA評価、社員YはB評価というように、能力や成果を観察して評価を下す、ということが意識されて運用されることになります。
評価面談などにおいても「あなたの実績はこれだった。だからあなたの評価はB評価となる」ということを告げる(一方的に説明する)ということが中心となるでしょう。一方で、評価制度はあくまで「社員育成のツールの一つである」という位置づけで運用している場合には、状況が異なってきます。
もちろん評価ですから「この半期の行動・成果に対して、あなたはB評価です」ということを伝える面がゼロにはなりませんが、育成が中心となると、面談のコミュニケーション内容としては「どうしたら次はA評価が取れるか?」「どんなことに意識して取り組んでいくとよいか?」といったことを、部下にアドバイスしたり、一緒に考えたりすることが面談の中心的テーマとなってくるでしょう。
あるクライアント企業では、後者の考え方を中心に評価制度を構築したいと考えていて、そのサポートをしたことがあります。その際に「そもそも、これを評価制度という名称で社内で運用していくのは違和感がある」と社長が仰り、その企業では「成長支援制度」という名称で運用していくことになりました。
これはとてもいい名称のつけ方の一つだなと思っています。
自社にとってそもそも評価制度は何のためにあるのかという問いは、非常に重要です。もしも社員の育成に活用することを望んでいるのに、社員を評価するためにしか使われていないようであれば、制度や面談の方法をこの機会に見直していただくとよいかもしれません。
報酬との連動を考える
評価と報酬を
どう結び付けるか
ここでよくご質問もいただく、評価制度と報酬の連動についても解説したいと思います。現状では、「評価」と「報酬」は連動させる考え方が一般的ですが、これは必ずしもそうしなければならないわけではありません。
極端な話、報酬については完全に年功序列によって決まり、毎年の評価とは一切関係しないという人事制度にすることも可能です。「社員にはどんどん成長してほしいから、成長支援制度として活用している。しかし、そこで評価が高くても低くても、報酬とは連動しない」というような制度でも良いわけです。
終身雇用が全盛で、日本社会全体が経済成長し続けていた時期は、むしろこのような発想に近い企業も多かったと思われます。社員からすれば「会社は、最後まで面倒を見てくれるし、定年まで給料も基本的に増え続ける。だから、とにかく自分は、より貢献できるように、日々成長するよう頑張る」といった認識を持ちやすかった時代だったと言えると思います。
しかし、おそらく今は「年功序列」というのは、社員の側から見て人気のある人事システムではないでしょう。そもそも前提となる終身雇用が崩壊している中で、年功序列的システムの、社員にとっての合理性や納得感は非常に低いものとなっているからです。
「頑張った分、報酬も増える」という感覚を持てる人事システムの方が、社員にとっては納得感もあり、その結果人気となっているものと思います。
しかし、人件費という固定費を大きくしていくことは、経営にとってはリスクでもあります。できるだけ変動費である方が経営リスクは管理しやすいので、社員の基本給という固定費については、簡単にはアップさせたくないという心理が、経営側に働くことは当然です。
まず、一つ重要なのは、メール講座6日目にお伝えしたように、こういった点について社員のリテラシーを高める打ち手を打っていくことです。「固定費が上がることは、経営にとってはリスクである」「法律上、一度アップさせた給与額は、減額することは難しいため、益々簡単にはアップさせたくないものである」といったことを、社員もしっかりと理解していれば、「給料がそんなに簡単に上がるものではない」ということへの納得感も高まります。
評価と報酬の連動については、
といったパターンがあり得ます。
また決算賞与などを支給する場合には、
といったパターンがあります。
どの組み合わせにすると、自社にとっても最も効果的な制度となるか、それについては会社の歴史、業種などを鑑みて、よく吟味する必要があります。
ちゃんと機能する評価制度にするために
評価制度の
基本的な作り方
最後に、評価制度の基本的な作り方をご紹介したいと思います。まだ評価制度がなく、今後導入を検討されている方は、是非参考にしてください。また、既に評価制度がある方は自社の評価制度を見直す際の材料にしていただければ幸いです。
評価項目の数は最大で7つ。7つ以内に絞っていただくようにしています。
評価項目が8つ以上になると、一つ一つの重要性(ウェイト)が軽くなり、社員が評価項目を大切にできなくなってくる、数が多すぎてそもそも覚えていられない、業務の中で意識していられなくなるというデメリットが大きくなるためです。
そして、この評価項目を作る際に、一番土台となるのは「口癖と一致しているか?」です。例えば、20名ほどの中小企業であれば、社長の口癖と評価項目は一致していることが重要です。
例えば、いつも「仕事はスピードが大事。もっと早くできるように頑張って」とか「なんであの社員はこんなに仕事が遅いんだろう・・・」という発言を繰り返していたとします。けれど、評価項目には「スピード」が入ってない。逆に「仕事の丁寧さ」といった評価項目が入っている。
このような状態になると「評価面談では、仕事の丁寧さを求められ、それによって昇給が決まる。しかし、日常のコミュニケーションではいつもスピードを求められ、仕事が遅いと怒られる」というダブルバインド状態になってしまい、社員は混乱してしまいます。
ですからまずは「この7つの評価項目は、口癖と一致しているか?」ということが重要になります。(経営陣・管理職・社員といった3階層になっている場合は、経営陣の口癖と、管理職の口癖を揃えていくような努力もしていく必要があります)
次に「この7つの項目で高評価な人材は、組織目標に貢献していると言えるか?」というチェックが必要です。
例えば評価項目として「仕事のスピード」「仕事の確実さ」「チームワーク」「新しいことへのチャレンジ」という4つの項目を用意したとします。この4つの項目の評価が高い人材は「いい人材だし、会社の目標に貢献している」と言い切ることができれば、それで評価項目はOKです。
しかしもし「でも結局、売上を作るやつが一番偉いし、貢献しているんだよなぁ・・・」というようなセリフが出てくるようであれば考えなければいけません。
スピードが遅いときもあるし、仕事が雑な時もある。社内のチームワークという観点からすると問題児だったりもする。けれど、お客さんのハートを掴む能力はぴか一で、結局一番売り上げを作ってくる営業担当者、、、というような存在が思い浮かんで「この評価項目だと、あの営業は評価低くなるけれど、それでいいんだっけ?」というようなことは、必ずチェックするようにしてください。
そうすると例えば、評価項目が追加になるかもしれません。「売上貢献度」とか「お客様のハートを掴む力」といった評価項目が必要になるかもしれません。
このようなチェックをして言って「うん、7つ以内に絞るなら、これらの評価項目で社員を見ているし、これらの能力を社員に伸ばしてほしいと思っているし、これらの能力が高まれば絶対会社の業績にプラスだ」と納得できる評価項目を作っていくことになります。
なお、評価項目というのは「こういう社員を求めています」というメッセージですから、採用活動にもそのまま活用できます。面接などでチェックすべき観点として「自社の評価制度に照らして評価してみると、この人材は優秀だろうか?」と面接をすべきなのです。
定量的な評価項目は、評価者・被評価者で「点数付け」の認識の齟齬が起きずに公平性を担保しやすいという大きなメリットがあります。
例えば5段階評価として
A評価:新規契約数10以上
B評価:新規契約数7~9
C評価:新規契約数3~6
D評価:新規契約数1~2
E評価:新規契約数0
というようになれば、「だから君はC評価ね」というのが非常に分かりやすく、納得せざるを得ません。
A評価:改善アイデア提案数10以上
B評価:改善アイデア提案数7~9
C評価:改善アイデア提案数3~6
D評価:改善アイデア提案数1~2
E評価:改善アイデア提案数0
A評価:遅刻・欠勤0回
B評価:遅刻・欠勤1~2
C評価:遅刻・欠勤3~4
D評価:遅刻・欠勤5~6
E評価:遅刻・欠勤7以上
というように定量項目を設定していくことができます。
しかし、なんでもかんでも定量化できるとは限りません。むしろ大切な要素ほど定量化できなかったりもします。
例えば接客業において「よい挨拶ができる」ということは大切な評価項目になるかもしれませんが、挨拶を定量指標化することは大変難しいものです。挨拶の回数によって定量化すればよいでしょうか。心のこもっていない雑な挨拶を回数だけこなす社員が高い評価になってしまう可能性があります。
では「いい挨拶」というのを、挨拶の”音量”で定義して、その音量の挨拶の数をカウントすればよいでしょうか。大きな声であいさつすべき時もあれば、小さな声での挨拶が適切な時もあるかもしれません。そのようなことを、どう加味して評価すればよいでしょうか。そもそも、部下の挨拶について常に音量を図ることなどできるのでしょうか。
しかし、定量化できないからといって「挨拶」という項目を評価項目から外していいのか?というと、これもまた違ってきます。そのような場合には「定性的なまま評価項目に入れておく」ということも必要になってきます。
そして、定性項目の場合も、5段階評価の基準値というのはできるだけ明確に用意しておきます。そのことによって、期末時点での「あなたはB評価ね」といった”評価”への納得感が高まるからです。
例えば、以下のような準備をします。
A評価:お客様から「ああ、あの挨拶の気持ちいい人ね」とフィードバックが頻繁にあるレベル
B評価:お客様や上司・同僚から見て「いい挨拶をするよね」という印象があるレベル
C評価:上司や同僚から見て「挨拶が悪い」という印象がないレベル
D評価:上司や同僚から見て「挨拶を改善すべき」という印象があるレベル
E評価:上司や同僚から挨拶の改善を要求されているが無視しているレベル
定量項目であれ、定性項目であれ、例えば5段階評価をするのであれば「どのような結果・行動が、どの評価段階に当たるのか」について、できる限り期首の段階で明示できるようにすることが求められます。
Quiz&answer
クイズの答えと
次回への宿題
さて、昨日お伝えしたクイズは以下のようなものでした。
昨日のクイズは「評価制度」についてです。
ア.評価制度は、できる社員とできない社員を選別するためにある
イ.評価制度は、社員が成長する方向、貢献する方向を示すためにある
ウ.評価制度は、そもそも要らない
この3つの選択肢のうち、どれが最も正しい、最もよい考え方だと思うでしょうか?そして、その理由はなんでしょうか?ぜひ考えてみてください。
私なりの考えは、明日のメール講座でお伝えします!今回のクイズについては、答え合わせというよりも「それぞれの答えを持ち寄って考えてみる」が出来ればと思います!
昨日のクイズはこのようなものでした。あなたは昨日の時点で、どのようにお考えでしたでしょうか?
そして、今日のメール講座を読んでいただいた現時点では、どのように思われますでしょうか?
「会社を活性化させる」という視点で考えると、私は「イ.評価制度は、社員が成長する方向、貢献する方向を示すためにある」という考え方を採用することがよいと考えています。
もっと言うと、上司と部下の面談では「会社が、貢献・成長してほしいと期待している領域」と「社員自身が、貢献・成長していきたいと思っている領域」のすり合わせを行うことが大切と考えています。これこそが、ドラッカーの言っているMBOであり、目標による管理というものだと言えます。
会社からの期待と、本人の内発的動機から貢献したい領域とが、上手く重なった領域というのは、大きな活躍が見込まれます。そして、そこでの活躍が、評価制度の枠組みにおいてもしっかりと評価されるものであるとなれば、社員は安心して、伸び伸びと仕事に邁進していくことができます。
今日のクイズは採用についてになります。
ア.優秀な人材を採用するためには理念を打ち出すことが重要である
イ.優秀な人材を採用するためには待遇の良さを訴求することが重要である
ウ.優秀な人材を採用するためには優秀さを見抜く採用プロセスがあることが重要である
このうち最も、効果が低いと思われるものはどれになるでしょうか?
あなたはどう思われますか?このクイズは、明日の9日目のメール講座にて答え合わせをしたいと思います!明日のメール講座をお楽しみに!
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