Vol.21 人事部長という立場から組織変革を推進するためには(後編)

今回のご相談内容

普段のメルマガでは「経営者の立場で」というものが多いかと思いますが、私は人事部長という立場です。

このような立場から、いかに組織の変革を推進していくか、その注意点などを教えていただければ幸いです。

    

石川からのご回答

前回のメルマガでは、

A.人事部長は「組織変革」が必要だと考えているが、社長が関心がないケース

について解説していきましたので、

今回は、

B.「組織変革」が必要だと両者ともに考えているが、人事部長は「社長の変化」が必要と考え、社長は「現場の変化」が必要と考えているケース

について、考えてみたいと思います。
     

社長とアプローチが違うケース

B.「組織変革」が必要だと両者ともに考えているが、人事部長は「社長の変化」が必要と考え、社長は「現場の変化」が必要と考えているケース

このケースでは、もう少し問題が難しくなります。

例えば、人事部長は「社長のトップダウンが厳しすぎて社員が疲弊している。トップダウンを緩和していく必要がある」と思っていて、社長は「現場のスピード感が足りない。現場の地力を高めないといけない」と思っている、というようなケースです。

このようなケースもよくあります。
 

シンプルに言うと「人事部長はペースダウンをしようとしている」「社長はスピードアップをしようとしている」ということになります。

このような場合では、人事部長の立場としては、 まずは「社長はスピードアップしようとしている」ということを大切にする必要があります。

「社長!ペースダウンしましょう!」と言って通じる相手ならばよいですが、それが難しいことも多いかと思います。

であるならば、あくまで「社長の意向であるスピードアップに沿った提案である」となっている必要があります。
         

出典:写真AC

     

全体像を提示する

例えば、プロ野球チームで「春先は首位を走っていたのに、夏場以降どんどん成績が落ちて最後は最下位だった」というようなことがあります。

それは一言で言えば 「選手層が薄い」ことによって起こったりします。エース級の選手が、一人二人とケガなどで離脱すると共に順位も下降していってしまうのです。

ということは「優勝をする」ということを目指すのであれば、ただ単に目の前の試合に勝つことだけでなく「選手層を厚くする」というアクションも必要だということになります。
         

これは企業経営にも通じるところがあります。もし、経営のスピードを高めたいのであれば、人材の質と層も高まっている必要があります。

では、人材の質を高めていくということになりますが、これもプロ野球であれば「練習のさせ過ぎでケガをさせた」となってはもともこもありません。

人材一人一人に「適切な負荷」をかけることで、最大の成長を得られるように支援することで、会社の人材の質の平均値を高めていくことができるようになります。

「適切な負荷」に対して現状では「負荷が重すぎる」のであれば(それによって離職者や休職者が出ている状況などがあればなおさら)、負荷を軽くすることが”合理的”です。

負荷を軽くすることによって、むしろスピードアップするということが起こります。
          

実績によって説得する

負荷を軽くしたことによって、部下の成長が早まり、成果が出た。こういった事例を見逃さずに、一つでも発見したらそれを報告することも重要です。

「以前よりも、成果が出ました」「それは負荷を軽くしたからです」

このような成功例を積み重ねることによって、社長に、組織づくりへの理解を深めてもらうのです。
     

「トップダウンでストレッチした目標を提示することが、現場のスピードを最速化する方法だ」と思い込んでいた社長が、

「高すぎる目標を提示するよりも、無理のない目標を提示したほうがスピードが上がるケースもあるのか」

「トップダウンで提示するのではなく、ボトムアップ的に目標数字を設定させた方がむしろスピードアップすることもあるのか」

などと選択肢が増えてくるようになれば、しめたものです。

このように視野を広げてもらうには、社内の実績だけでなく、他社の事例などによってもアプローチすることができます。そういう意味では、組織開発の仕事を進めようとする人は、常に他社事例に敏感であるべきと言えるかもしれません。
        

「組織が変わっていく」ということが起こるのに、実はポジションは関係ありません。

トップマネジメントの方が進めやすいのは間違いありませんが、どのような立場でも自分から仕掛けていけるものです。そのような例にも私はたくさん接する機会に恵まれてきました。

メルマガの限られた文面でどれほどお伝えしきれたか、という思いもありますが、少しでも参考にしていただければ幸いです。

[Vol.21 2020/01/21配信号、執筆:石川英明]

    

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