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人材採用に関する
よくあるお悩み
出典:写真AC
「いい人材がとれない」
「採用した人材が活躍しない」
「折角採用したのにすぐに辞めてしまう」
こういった課題を抱えていらっしゃる企業にはよく出会います。「採用」というものも、非常に難しく悩ましい課題の一つです。
本稿では、なぜ採用で苦労するのか、採用が上手くいっている会社はどのようなことをしているのかなど、人材の採用に関するポイントを解説していきたいと思います。
人材採用についての考え方
理想的な採用とは?
まず、その企業にとって「理想的な採用ができた」というのはどういう状態なのかを考えてみましょう。
- 入社した人材が活躍して成果を出している。
- その活躍が長く続いている(離職しない)。
- その活躍を生み出すために、採用側が特別な努力や負担(教育の努力など)がない。
このような状態であれば、それは「理想的な採用ができた」ということになるでしょう。
逆に、
× 入社した人材が活躍せず、成果が出ていない。
× 活躍して成果を出していた人材は辞めていってしまっている。
× 採用した人材が「使える」ようになるには、受け入れ部署に多大な負担がかかる。細かに業務スキルを教える必要があり、教えてもなかなか習得しない。
このような状態であれば、「その採用は上手くいっていない」ということになるでしょう。
なぜ採用が上手くいかないのか
言ってみれば当たり前のことですが、採用の成功というのは「採用した人材が入社後に活躍する」というところまでいって成功したと言えるわけです。
ですので、例えば「東大卒が採用できた」とか「大手企業出身者が採用できた」というような、一見「採用が成功した」と見えるようなものでも、入社後に「あの人、全然活躍できていないよね」というようなことになれば、その採用は成功したとは言えないわけです。
人材採用をスペック(学歴、職歴など)のみを重視して行っていくと、このような「失敗」に陥ってしまうことになります。
スペックはもちろん無視はできませんが、スペック以上に「働く意欲」の部分で自社とマッチしているかどうかが、採用成功のためには重要な要素になってくるのです。
例えば、人材Aさんは「売る売り物は何でもいいけれど、ネットマーケティングの経験をもっと積みたいし、そこへの裁量や予算がある職場で(しばらく)働きたい」というようなことが「働く意欲」となっていたとします。
採用側としても「ネットマーケティングで成果を出してくれればよくて、愛社精神もいらないし、数年後に離職しても構わない」というようなスタンスでいるのであれば、これは「マッチングしている」ということになるでしょう。
しかし採用側として、例えば「自社商品への愛情も大事だし、会社への帰属意識や全社への貢献意識も大切だ」というように思っている場合は、Aさんとはマッチしないかもしれません。Aさんのスペックがどれほど高くても、です。
「スキルの高い人材が採用できた!」と思っていても、入社後しばらくたつとAさんの元気がなくなり、思ったよりも成果を出してくれない・・・そして退職していってしまった・・・というようなことにもなるわけです。
会社としては、商品の伝統もあるし「売れれば何でもいい」というわけでもない。ので、Aさんがやろうとする施策に「それはうちの伝統とは合わない」というような口出しをする・・・
となると、Aさんは「なんだよ、思い切り自分のやりたいように色々試せると思っていたのに、制約だらだな。。。」というようになっていったりするわけです。
どんなことがその人の意欲、モチベーションとなっているのか、そこの部分の相性をしっかりと考えて採用しないと、このようなことになってしまう恐れがあります。
採用の一つの理想形はビジョン採用
採用の一つの理想形は、ビジョン型採用です。
ゲイリー・ハメルが調査研究した、企業の競争力に大きく寄与する能力である「情熱」や「創造性」ですが、この情熱や創造性を自社において大いに発揮してもらうためには、ビジョン型採用がとても重要になります。
ビジョン型採用とは、その会社が進んでいこうとしている方向性、成し遂げようとしている目標、そこに共感する、自分もそれに関わりたい、というような【ビジョンのマッチング】ができている採用です。
さらに、そのビジョンの実現に向けて、自分がどんな役割(ロール)で関わっていけるか、自分の個性・経験・才能・強みと言ったものを生かして関わっていけるのかという【ロールのマッチング】もできているとより良いでしょう。
「ビジョン型採用」ができると、ビジョン共鳴型人材が採用でき、その人材はこちらから何か仕掛けなくても、自ら勝手に頑張ります。
会社のビジョンは、その人材が実現したいビジョンだからです。ですので、必要な学習も自分で自然と進め、成長してくれます。
ビジョン型採用の反対は「福利厚生条件型採用」です。「給料がいいよ」「待遇がいいよ」「早く帰れるよ」、だからうちの会社に入社してくださいという採用です。
このような採用活動をしていると、待遇重視人材ばかり入社してくることになります。
待遇重視人材は、「より待遇のよい転職先があればすぐに転職する」ということになります。また、「頑張って成果をだして、給料を上げよう」というような意識はなく「給料を(先に)上げてくれるんだったら、もっと頑張ってもいいですよ」というような意識が強い傾向があります。
もし待遇重視人材が社内に多いとしたら、それは採用の問題であり、さらにその根底には「ビジョナリーカンパニー」でない、という問題があることになります。
採用力を高めようと思ったら、自社のビジョン力を高めること(人材を惹きつけるような魅力的なビジョンを持っていること)、これがとても重要です。
採用する前に、人材の状態が「能動的である」ということは、とても大切な要素になります。
「能動的」に働けるということは、その会社の出したい成果を(もしくはその人材に出しと欲しいと会社が思っている成果を)、その人材も出したいと思っている、ということです。
採用活動で、この能動性を確認できているかは大事なポイントです。面接で応募者に「やる気はありますか?」と聞いたら、多くの人がもちろん「やる気あります」と答えると思いますが。
そもそも会社としてのビジョンがあるか
そもそも、「こういうことを達成していきたい会社です」などといった会社としてのビジョンは明確化されていますか?
例えば、「世界の水問題を解決していきたい会社です!」というビジョンがあったら、「私は世界の水問題をビジネスで解決したいと思っています」という人材が入社したら、その人は”能動的に”働くでしょう。(役割、配置の問題はもちろんありますが)
「ネット通販をやっていきたい会社です!」でも、「アプリゲームを作る会社です!」でも構いません。こういったものが事業ビジョンです。
その事業ビジョンを掲げて、発信して、「そういう会社に入りたい」という人材が自然と寄ってくる。このような形で採用ができているところでは、人材採用は上手くいきます。
例えば「大地を守る会」という、有機農法などの食品を通販している会社がありました(2017年にオイシックスと経営統合しています)。
その会社には、毎年山ほどの学生が応募をしていました。「私も環境問題に貢献できる仕事がしたいと思っているのです」という学生が山ほどいたからです。ですから、非常に入社倍率の高い人気企業でした。
このように事業ビジョンがしっかりとあれば、似たビジョンをもった人材を自然と惹き付けられるのです。
事業ビジョンは色々あり得ます。「地元〇〇の雇用を守る」ということが事業ビジョンということだってあるでしょう。「儲かる検索キーワードのところで、効率よくネットで稼ぐ」ということがビジョンということだってあります。
楽して稼ごうがビジョンであり、社員にも「楽して稼いでもらいたい」と思っているのであれば、そういう一貫性があるのであれば、それも採用に効果的なビジョンとして機能します。
「僕もネットを使って、できるだけ効率的に稼ぎたいと思っていたんです」という人材が集まってきます。彼らは「楽をして稼ぐための努力」は惜しまないでしょう。
中途採用か新卒採用か
採用のもうひとつのよくあるテーマとして、中途採用重視でいくか、新卒採用重視でいくかという問題があります。
これは「どちらがいい」ということはありません。自社の価値観や方針で判断すべきものです。
新卒採用のメリット・デメリット
まず新卒採用を継続して行うことのメリット・デメリットを挙げます。
デメリットとしては
- 毎年必ず社員数が増え(離職率にもよりますが)、人件費総額が膨らみ続けることになる。
- 毎年必ず採用の負荷がかかる。採用担当者の実働、面接官等の負荷、代理店等への支払い、受け入れ部門の教育負荷など。
といったことが挙げられます。
逆にメリットとしては
- 「できない」前提の新卒が入ってくるので「教える」文化が根付きやすい。
- 「教える」効率を高めるために、社内マニュアル等の整備が進みやすい。
- 毎年「新しい風」が入ってきて、組織を新鮮に保ちやすい。
- 「何年後には、何人くらい部下・後輩がいて」ということを社員がイメージでき、モチベーションとしやすい。
といったことが挙げられます。
中途採用のメリット・デメリット
「必要なときだけ中途採用を行う」場合には、
メリットとしては
- 採用コストが最小限に抑えられる
- 即戦力の中途採用のため、教育コストも最小限に抑えられる
- 他社での経験・知識を自社に活用することができる
といったことが挙げられます。
逆に デメリットとしては
- 「ずっと同じメンバーで働く」となることが多く、組織のマンネリ度が上がる
- 「自分のことは自分でできるはず」という文化が強くなりがちで、助け合うような風土を育みにくい(採用面以外でのアプローチも可能だが)
- 面倒を見る部下の数が増える、といったことが起こらず「出世」などをイメージしにくい。実際に、同じ業務を何年もやり続ける、という場合もありマンネリに陥る。
といったことが挙げられます。
大まかな一般論としては、つくりたい組織として「少数精鋭のプロフェッショナル集団」のような組織にしたければ、中途採用中心に採用活動を行っていくことが合っているでしょう。
逆に「企業規模も成長させていく」「社内で人材が学習・成長していく文化にする」というような場合には、新卒採用中心に行っていくことが向いていると言えます。
自社が、どのような組織でありたいのか、その組織ビジョンに照らして、採用方法も適切なものを選択していくとよいでしょう。
施策を進める上で
重要になるポイント
採用基準は評価制度と同じ
人材採用を行う際に、「どのような人材を採用すべきか?」と考えて、採用基準を設定することがあるかと思いますが、基本的には「新しく採用基準について考える」という作業は不要です。社内に、評価制度がある場合には。
社内で評価制度があって「こういう貢献をしてください」「こういう人材に成長してください」というものがあれば、それはそのまま「そういう人材を採用したい」ということに、ほとんどの場合なるはずです。(全くの新領域の業務を新設する場合などは違いますが)
社内の評価項目の観点に沿って、採用プロセス(面接など)においても、人材を採点していけばよいのです。
例えば、評価項目に「業務スピード」や「改善力」などがあったとしたら、選考プロセスでも、どれほど業務スピードの重要性を理解しているか、これまでの経験で自ら改善をしてきたことがあるか、などをしっかりと確認をしていくとよいでしょう。
面接は「見抜く」と「口説く」
採用プロセスは「その人材が(自社にとって)どれほど優秀な人材かを判断する」という見抜く面と、「優秀な人材に、自社で働きたいと思ってもらう」という口説く面とがあります。
見抜く
まず「見抜く」について解説します。採用プロセスの限られた時間の中で、いかに効果的に見抜くかを要素ごとにご紹介していきます。
スキル:できるだけ実際にやってみてもらう
特定業務のスキルについての判断が必要な場合は、実際に業務を行ってもらうことがよいでしょう。
分かりやすい例で言えば、プログラマーにプログラミングスキルを求める場合、選考プロセスの中で実際にプログラミングをしてもらいます。そうすると、どれくらいのスキルを持っているのかは、よく見えるはずです。
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主体性:苦労話を聞く
主体性については「どれほどの成果をこれまで出してきたか?」などの成功体験を聞いても、それほど正確な判断はできません。
例えば中途採用の面接で、このような質問をしたとして、素晴らしい成果を聞かされたとします。「おお、すごい成果を出してきた人材だ」と思って採用しても、入社してからは、からきしということはありえます。
これは「前職で、たまたまとても優秀な上司のもとで働いていて、上司に言われた通りに動いていたら成果が出ていた」というようなケースでも面接で上手に話せてしまうからです。
「主体性」について見抜くには、苦労話を聞くことがお勧めです。細かい苦労話というのは、本当にその出来事に主体的に関わった人間にしか語ることができません。
「誰かの成功事例を横で見ていた」というような人には、語ることが難しいのです。苦労話について、細かく話をすることができる人材は、置かれた環境の中で本当に主体性をもって動いてきた人材の可能性が高いのです。
また「苦労話」があるということは、自分の能力以上のところにチャレンジしようとしてきた証拠でもあります。自分の能力内で楽勝でできることしかしてこなかった人材は、苦労話を語ることができません。
協調性:周囲の人の情報を聞く
「協調性」ついて見抜くには、周囲の人間がどのような人たちだったのか、それを詳しく聞いてみるとよいでしょう。
協調性の高い人材は、周囲の人間に関心があり、それぞれの個性に対して適切にコミュニケーションしようと努力しています。協調性のない人材は、他者への関心が低く、他者の情報を持っていたとしても大雑把であることが多いのです。
論理性:身近な架空のケースを考えてもらう
「論理性」について見抜くには、コンサルティングファームで使われているような「ケース面接」を行うことが効果的です。その場で、何かお題を出して、即興でそのお題について考えてもらう、という方法です。
ケース面接の良いところは「他人の成果を、さも自分の成果のように騙ることができない」というところです。その人材本来の、論理的思考力が見えやすいのです。
「前職において、どのような成果を出したか?成果を出せた要因は何だと考えているか?」などの質問をしてしまうと、これは主体性の要素と同じように「たまたま近くの優秀な人の受け売り」でも、スルスルと答えられてしまう可能性があります。
ビジョンへの共感:これまでの個人的な経験
最後に、「ビジョンへの共感」への見抜き方ですが、これはシンプルに「これまで、そのビジョンに向って行ってきた個人的な行為」を聞くとよいでしょう。
例えば「水問題を解決する!」という事業ビジョンだったときに、「あなたは水問題に対して、自分でできる範囲でどんなことをしてきましたか?」ということをストレートに聞いてみましょう。
本当にそのビジョンに情熱がある人材であれば、伝えられることは山ほど出てくるはずです。
口説く
「これは」という人材には「複数ある就職(転職)先の候補から、自社を選んでもらう」というアプローチも大切になります。
まず、大枠のところで「採用にしっかりと力を入れる」ということが大切です。これは具体的に言うと「社内のエース級人材を、採用プロセスにしっかりと参加させる」ということです。
実際にこれまで多数の企業の採用に携わってきましたが、採用が上手くいく企業は、企業説明会の担当者や面接官などにエース級人材をしっかりと投入しています。
逆に「エース級人材は忙しいから、採用業務は暇な人材でやってもらう」というような企業は、やはりなかなか採用が上手くいきません。
もちろんエース級の人材を、実業務から剥がして採用業務投入するというのは大変なことでもあります。しかしその「投資」を怠ると、やはり自社の採用力は低下してしまうのです。
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求職者の企業への志望度は「実際に会った人」の印象によって大きく影響されます。説明会の担当者が素晴らしかった、面接してくれた社員が素晴らしかった・・・といようなことで志望度が上がっていくのです。
逆に「説明会の担当者、イマイチだったな」というようなことになれば、そのまま志望度は低下していきます。人材が「実際に社員と触れる」タッチポイントこそが、最大の「口説く」ポイントです。
面接の中での「口説く」には、大きく三つの要素があります。
- 自社の良さを、しっかりと伝える
- あなたを評価している、ということをしっかり伝える
- 求職者の立場に寄り添って接する
1.自社の良さを、しっかりと伝える
1は王道ですが、外せません。
自社が、いかにビジョンに向って邁進している組織か、個々の個性を尊重して裁量を与えている会社か、そういったことを具体例を交えて、しっかりとアピールすることが重要です。
面接においても「この人は通過させる」と判断した後には、「私から、自社についてもしっかりお伝えしたいので、ちょっとお時間いただけますか」と切り出し、しっかりと時間を確保してアピールすべきです。
2.あなたを評価している、ということをしっかり伝える
また、2も重要になります。自分の能力をしっかりと評価してくれて、重要な人材として迎えてくれる組織に、人は入りたいものだからです。
「面接を通して感じたが、貴方の●●というところが素晴らしい。その●●は、うちの会社のなかで■■と絶対に生かしてもらえるイメージができた。」こういったことを、丁寧に伝えていくことです。
しっかりと見てくれているんだ、評価してくれているんだ、という認知が深まると、自社への志望度を上げてくれることになります。
3.求職者の立場に寄り添って接する
3が決定打になった、という採用も少なくありません。
例えば、「とは言え、勤務地的にちょっと遠いですよね。その辺は正直気になっていたりしますか?」このような会話ができることで、求職者側が「ああ、ちゃんと自分を大切にしてくれている、人材を大切にする会社なのだろうな」と感じて、それが入社の決定的な理由になったケースは多々あります。
新卒採用などにおいては顕著だったりしますが、面接官が、面接だけでなく、学生の立場に立った就活のアドバイスなどをしっかりしてあげたことで、その企業への志望度が非常に高まる、というようなことは多々あるのです。
支援事例
新卒採用に苦労していた企業の例
ご相談内容
「新卒採用が思うように上手くいかない」という課題を抱えている。
具体的な課題の1つとして、内定後の辞退が多いこと。ある年には3人採用したかったのが、辞退を想定して5人に内定を出したものの、4人に辞退され1名しか採用できなかったということがあり、思ったように採用ができなくて困っている。
ご支援内容
この企業では、まず「ビジョンなどをしっかりと発信していく」ことにしました。
新卒採用専用のホームページを準備し、自社のビジョンや魅力、社員のインタビューなどのコンテンツを充実させました。
前年までは新卒採用ホームページはなく、学生の印象としても「人を大切にしている会社なのかな?」と疑問視されてしまう状況でした。
そして、ESの提出、会社説明会、一次選考(集団選考)、二次選考(個人面接)の全てのプロセスにおいて「口説く」という観点を組み込みました。
一例を挙げると「とにかく早くレスポンスする」ということを徹底しました。それによって「この会社は私を大切に思ってくれている」ということを強く印象付けるようにしたのです。
また面接官に研修を施し、適切な質問によって能力を見定める技術を高めてもらいました。
細かいことは本当にたくさん丁寧にやったわけですが、かいつまんで言うと上記のようなことを実施した結果、まず説明会に100人集めるのが「なんとか5人集まるのを20回頑張って開催する」状況だったのが「定員20名の説明会がすぐに満席になり5回で終了」という状況に改善されました。
そして課題だった「内定辞退」は0%になり、内定を出した人材は全員そのまま入社することになりました。