組織マネジメントの大前提

正しい「人間に対する知識」を
学ぶ価値

組織コンサルティングの前提

    

事業面は好調な企業でも、「組織マネジメント」の領域では課題感を持っている経営者の方は多いのではないでしょうか。

経営は、「事業推進」「組織マネジメント」の両面があります。事業推進も、組織マネジメントも好調であれば、企業は順調に成長していきます。

一方、組織マネジメント面は良いが、事業推進が悪い状態では、当然ながら会社が倒産してしまいます。反対に、事業推進面は良いが、組織マネジメント面が悪い状態の企業は、組織面がボトルネックとなって、事業推進が一定以上進まないということが起きてきます。
    

組織マネジメント面には、組織経営が人を対象としている以上、人間に対する知識がとても大切になります。特に人を動かし、組織を作り、事業を推進していく経営者が、正しい「人間に対する知識」を持っていなければ、効率的に成果を得ることはできません。
    

例えばプロ野球選手であれば、正しい栄養学に基づいた食事をすることは、とても大切なことになるでしょうし、筋力トレーニングなども正しい知識のもとに行っていくことが重要になります。

組織マネジメントにおいても、社長の「人間とはこういうものだ」「人間とはこうあるべきものだ」という思い込みによって組織経営をしていくよりも、科学的な調査などから「人間とはこういうものだ」と発見されてきているものを学んで活用するほうが、合理的です。
     

社長自身の「人間とはこういうものだ」という信念が、科学的な調査結果などと一致していればなんの問題もありませんが、ズレが生じていることも多々あるでしょう。

昔は野球部の訓練として「うさぎ跳び」というのは普通に行われていましたが、今はうさぎ跳びをトレーニングとして取り入れている高校野球部はほとんどありません。

それは、科学的なデータから、怪我の増加や、筋力アップに寄与しづらいことなどが見えてきたからです。当時の指導者は「うさぎ跳びによって強くなる」と信じていたわけですが、データによってその信念が怪しいものであることが見えてきたわけです。
    

経営者は、人を動かし、組織を作り、事業を推進していく以上、「人間」に対するできるだけ正しい知識を持つべきだろうと私たちは考えています。

そして、既に世の中には、経営に役立つ研究成果が多数報告されているわけですから、これを活用しない手はありません。是非「人間とはどういうものか」ということに対するできる限り科学的な正しい知識を得て、より効率的、効果的に経営を進めていただけたらと思います。
     

会社組織をスポーツチームに
例えるのは間違っている

組織マネジメントに関わる中で発見した、会社組織に対してよくある誤解のひとつは、「会社組織をプロスポーツチームになんとなく例えてしまう」ことです。
    

ビジネス書などでも、監督のチーム論・戦術論は書店に必ず並んでいますし、例えばサッカーの『なでしこジャパン』で強くなった佐々木監督の手法が注目されるようになったり…

「チーム(組織)というものは、こうやってやったら強くなるんだ」というのを参考にしようと、プロスポーツチームに基づくビジネス理論は世の中に多く出回っています。

ですがそもそも、それこそ前提として、プロスポーツチームの監督の方が、会社組織の経営者より、正直よほど簡単です。みなさんのやっている社長いう仕事の方が全然難しいことを、大前提として認識しておく必要があります。
    

野球でもサッカーでも何でも好きなスポーツで構いませんので想像してみてください。

例えば、あなたがプロ野球チームの監督になったとします。そのときに、まず「やる気のない選手は基本的にいるはずがない」ですよね。全員スタメンになりたいですし、試合に出たら勝ちたいですし、MVPを獲れる活躍をしたいですし、試合の途中で帰りたい選手なんていません。

いわゆる「やる気」「モチベーション」「意欲」といったことは、プロスポーツチームの監督にとっては、まず問題となることがありません。

ですので、会社をスポーツチームに例え、スポーツチームの組織論にあてはめて、企業の悩みを解決しようとしても、多くの場合うまくいきません。
    

会社組織をスポーツチームに例えるのは間違っている

     

新しい組織マネジメントが
必要とされる時代背景

高度経済成長期の感覚・理論は
通用しない

ひと昔前の理論や理屈は普及していくタイムラグがあり、どうしても一般的に書籍やネット上の記事は、「少し古い」ところがあります。それこそ、今の若い人たちにはそれは通用しないみたいなことがあります。
    

高度経済成長期の日本は、約50年ほど世界が羨む経済成長を実現していました。

あの時代は、まず敗戦から頑張った人たちが率先して身を粉にして働くことをした結果、経済的に上手くいったので、それに続く10歳若い人たちや20歳若い人たちが「頑張れば、豊かになれるんだ」という希望を持てていました。

なので、あの頃の若い人材たちは憧れの年長者から「いいから、おまえはこれをやれ」と指示を出されたときに、「何でやるんですか?」とは言わずに、憧れの人たちが言っているからと素直に(ある意味、無条件に)従うことができました。

野球少年がイチローからアドバイスされて、「全然納得いかないけど(もしくは理由はよくわからないけど)、イチローさんが言うならやってみよう」と思う、といったことに近いものです。

ですが、現代の日本社会ではこの感覚は成り立たなくなっています。みなさまがご存知のとおり、日本の経済環境は、高度経済成長期が終わり、現在は長い低迷期にあると言っても問題ないかと思います(そもそもGDPなどの経済指標を、社会の重要指標とし追いかけるべきなのかという議論は、それはそれでありますが、ここでは割愛します)。
    

その上、今の若い世代は、ちょうど社会人になるあたりのときに、リーマンショックなどで終身雇用神話が崩壊したのを目の当たりにしました。

両親や身近な人が、それこそ身を粉にして働いてきた会社からリストラされるのを目撃し、「会社は信じられない場所だ」「いつクビを切られるのかわからないのに尽くしたくない」「会社のために頑張っても仕方ない」という不安や疑心が強くなっているのです。

そういった社会背景もあって、今の若い世代の感覚は、「正直、別にあなたみたいな60歳になりたくないです」「本当にあなたみたいな50歳の生活が幸せなんですか?」のように変わってきており、「いいから、やれよ」というこれまでのようなコミュニケーションでは仕事がまわらなくなっているのです。
    

日本の経済環境の変化:GDP成長率の推移

        

世の中に普及しているマネジメント理論の多くは、これまでの成功体験、つまり高度経済成長期の感覚を前提にしています。

けれど、 この日本の経済環境が上手くまわっていたときにできたマネジメントの理論は、基本的に現在の経済環境下では通用しないと考えたほうがよいでしょう。過去の成功体験に固執してしまうと、組織は上手くまわりません。
   

コンサルタントの仕事の中で、大企業ともお付き合いをしてきましたが、今 大企業では、若手の社員が「管理職になりたくない」と言い始めており、どうやったら管理職になりたいと言ってもらえるだろうか・・・と、上層部は頭を抱えている話をよく耳にします。

大企業ですと多くの場合組合があり、一般社員はそこへ加入しますが、管理職になると非組合員となり、残業代が出なくなります。 

そうすると、例えば今、600万円の給与で残業代を含めると700~800万円の年収だったとき、管理職になると残業代なしの年収800万円になるとしたら、「嫌だ・・・管理職になりたくない。これ以上給与が増えなくてもいいから、残業代がつく平社員のままがいい」みたいなことが起こっていて、当然「管理職」への憧れはなく素直には上の指示は聞かないですし、「出世のために頑張れ」も通用しません。
    

また、いわゆるゆとり世代にになってくると、物欲の感覚も全然違います。彼らはそもそも、「いい車に乗りたい」「豪邸に住みたい」「豪遊してみたい」と思っていない人が多いのです。

昔でしたら、「いつかはクラウンだ!そのために頑張る」みたいなことがモチベーションとして機能していましたが、今の若い世代は「軽自動車でも快適だからいいじゃん」「そのために(物欲や生活水準をあげるために)頑張るというよりは、なら休暇ください」「自由な時間がほしいです」「友達と過ごしたいです」という傾向が強くあります。
   

ワークライフバランス(WLB)や働き方改革などの言葉が注目を浴びているのも、この今の若い世代の感覚を象徴しているといえるかもしれません。

事業マネジメントが、市場環境に対して敏感に対応する必要があるように、組織マネジメントは、社員の特性などに敏感に対応する必要があります。新しい時代、新しい世代の労働者の価値観、特性と言ったことも正確に認識をして対応していくことで、効果的な組織マネジメントができるのです。
     

ゆとり世代の傾向(ゆとり世代の良いところと悪いところ)

     

【補足解説】「人材」の重要性が高まってきた時代背景

大量生産・大量消費の時代
かなり遡りますが、産業革命以降に近代ビジネスがスタートしました。世界的に人口増加を伴い、「大量生産・大量消費」時代が始まります。
         
このときはわかりやすく、「生産量を増やせば、富が増える」状態で、ものをつくれば、買い手はいくらでも買い続けてくれました。
        
人口が増加し続けていたので、消費者の分母自体が大きくなり続けていましたので。ビジネス的には非常にやりやすい時期でした。日本の高度経済成長期もこの時代です。
   
大量生産・大量消費時代においては、ビジネスの主役は「設備(工場)」でした。
    
工場の稼働力を最大限高めて、生産量を増やすことで、富を増やすことができたのです。その時代においては、極端に言えば「工場の動きに従って動く人間」が重要でした。
差別化・効率化が重要となる
徐々に物が溢れ、余り出すと、差別化が重要になってきます。また、効率性(生産性)を高めてコストを削減することも重要になってきました。
           
要は消費者の分母が底打ちしてきたので、「大量に作れば作っただけ売れる」というモデルは限界を迎えていましたが、まだまだメーカーがイキイキとしていた頃で、モノの品質が良ければ売れる時代でした。
          
この頃はまだ、企業マネジメントにおいては人材の重要性は今よりもまだまだ低く、「一部の賢い人間」が考えた計画に沿って、従順に動く人間がいれば充分でした。
【現在】人材の重要性が高まる
そして、現在のビジネス環境では、人材の重要性は非常に高まっています。
    
モノありきではなく、店舗でも「店員の態度が悪かったから行かない」「コールセンターの対応が悪かったからもうあのブランドは使わない」といったように、クリエイティビティ(創造性)やホスピタリティ(察知力)が、ビジネスのあらゆる場面で差別化要因となってきているのです。
    
今は、社員の創造性や察知力をいかに全組織的に高められるかが、経営の最重要課題となっています。

    

組織マネジメントの
重要な研究成果

「人間」「労働者」についての研究はこれまで多く行われてきました。次に、組織マネジメント上、注目すべき主な研究成果についてご紹介したいと思います。

これらの研究成果を知って組織マネジメントに活かすのと、これらの研究成果を無視して我流を貫いて組織づくりをしていくのでは、生み出せる成果が全く違います。これからの組織づくりでは、科学的研究成果をよく知り、実践、活用していくことが求められています。
    

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ハーズバーグ
『動機付け衛生要因理論』

人の「意欲が高まる要因(動機付け要因)」と「意欲が下がる要因(衛生要因)」は別の要素であるという研究です。そして「お金」は、足りないと意欲が下がるが、多く支払ったところで働く人の意欲を高めるわけではない衛生要因であると分ったことが大きな発見でした。

        

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ダニエル・ピンク
『モチベーション3.0』

人の創造性や主体性は、内発的動機によって生み出されるという研究成果を本にまとめています。アメとムチによる「外発的動機づけ」では、人の創造性や主体性をむしろ下げてしまうのです。

     

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ゲイリー・ハメル
『経営は何をすべきか』

現代のビジネス環境においては、人の情熱や創造性を引き出せる企業が、競争力を有し、人から従順さや勤勉さしか引き出せない企業は、競争力が高まらないということを報告しています。

      

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マズロー
『欲求階層説(自己実現理論)』

心理学の古典とも言えるマズローの欲求階層説は、人間の本質的な性質を研究したものです。根源的な欲求が満たされていくと、高次の欲求が現れてくるという説です。どの階層の欲求が強いかは、人によって異なります。

      

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チクセントミハイ
『フロー体験理論』

人間の集中力は主に「目的・難易度・フィードバック・環境」の4つの要素によって変化する、という研究成果です。適切な難易度の仕事に取り組むことの重要性が示されています。

       

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キャロル・ドゥエック
『Growth Mindset』

才能は固定的なものであると考えるFixed Mindsetの人は、失敗を恐れ、挑戦せず、成長が停滞し、成果を出すことも難しくなります。逆にGrowth Mindsetの人は、能力は拡張していくものと考え、挑戦し、失敗してもそこから学び成長し、長期的に成果を生み出していきます。Growth Mindsetをいかに育むかについても言及があります。

      

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ダニエル・キム
『組織の成功循環モデル』

MITのダニエル・キム教授が提唱している「上手くいっている組織の循環」という概念です。関係の質、思考の質、行動の質、結果の質の4つ要素が好循環でうまく回っている組織は、成功しているというものです。

      

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Google
『心理的安全性』

Googleがプロジェクト・アリストテレスの成果として発表したことで一躍注目されるようになったのが「心理的安全性」です。生産性の高いチームは、不安点や懸念点などもオープンに共有できる心理的安全性が高いチームであった、ということが報告されています。

      

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ポジティブ心理学

人の感情の状態が、人の集中力や創造性に大きな影響を与えているということが報告されています。リラックスして、集中できるような感情状態にあると、人の創造性は高まり、逆に、過度な緊張や、不安の中にあると創造性が下がるだけでなく心身の健康を害することにもなります。

     

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感情指数 EQ/EI

経営陣、管理職、リーダーといったポジションの人たちのEQが向上することによって、様々なパフォーマンスが向上する(売上の向上や、離職率の低下、コスト削減など)という報告もあります。

      

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心の状態の伝播力
/SQ・脳科学

人間の脳にはミラーニューロンという「感情を察知する機能」があり、人の感情状態は無意識のうちにも素早く伝播するのです。リーダーがイライラしていれば、メンバーにイライラが伝播し、創造性が低下しますし、リーダーが落ち着いていれば、メンバーも落ち着いて集中して仕事に取り組めるのです。

      

人から高い生産性を引き出したいのなら

  • 本人の内発的な情熱、意義を感じることと、会社の存在意義や目標が、しっかりとエンゲージしていることがとても重要
  • 一人一人の個性や能力に応じて、フロー状態にしておけることがとても重要
  • メンバー同士の相互理解が深く、関係の質が高いことでコミュニケーション、意志疎通が円滑であることがとても重要
  • リーダーの感情状態は、組織の感情状態に影響を与え、組織の感情状態がポジティブ(リラックス、安心、集中など)であることがとても重要

     

リーダーシップの影響

組織マネジメントを推進していく上では、「リーダーのBeの影響」というものもどうしても外せない要素になります。ここで曖昧にBeと呼んでいるものは、価値観、理念、思想、感情、人格・・・といったものの総称と考えてください。
   

例えば、1つには、上述の研究成果にあるように、リーダーの感情状態が、組織全体の感情状態に影響を与え、それが組織全体の創造性に影響を与える、ということがあります。

一時期、管理職や経営者向けに「アンガーマネジメント(怒りの感情を制御する技術)研修」を行うことがかなり流行しましたが、これなども、リーダーのBeの重要性が認識されてきたからに他なりません。

マネジメント層に対するEQトレーニング(感情を適切にコントロールするためのトレーニング)を行うことで、ビジネス上のインパクトが出たということも多数報告されています。
    

組織は、どれほどフラットにしても、役員と社員、くらいの二階層ほどは、ほぼ必ず存在します。ほとんどの企業では三階層以上が存在しているでしょう。そういうヒエラルキー構造にあったときに、ヒエラルキーの上位者、つまり管理職や経営陣といったポジションにある人達のリーダーシップ(Be)の影響はどうしても大きくなります。

それはつまり、管理職や経営陣のリーダーシップ(Be)が磨かれることによって、組織全体に対する好影響を与えていくことができる、ということです。
    

ここからは、実際に組織づくりのご支援をしてきた中で見えてきた、経営者が陥りがちなリーダーシップについてご紹介をしていきたいと思います。

よく起こりがちなケースのご紹介ですので、人によっては自分は大丈夫だなと思える部分もあるかもしれません。一般的に組織運営・組織マネジメントにおいて起こりやすい、陥りやすい現象として、捉えていただければ幸いです。
     

頭と心が分離したリーダーシップ

素晴らしい経営者や勉強熱心な社長ほど、それこそ「社長はこうあるべきだ」「リーダーの心得」のような書籍をたくさん読んでいたり、セミナーなどに参加されて日々自己を磨いていたりします。

とにかくまずは頭で「リーダーとしてこうあるべき」をインプットして、早速 現場で率先して動き、実行します。

そうすると、やはり「成果」がちゃんと出ます。会社のトップが正しい動きをしているので、良い成果が生まれる循環はできるのです。すると、まずます「リーダーとしてこうあるべき」は大事だよなという考えが強化されていきます。
    

「リーダーとしてこうあるべき」というリーダーシップのシステム図

           

しかし、このとき、実は心の方は無理をしていたり、疲れていたり、頑張りすぎている場合も結構起こっていたりします。「何で、俺だけ(リーダーだけ)こんなに頑張っているんだろう」といった疲弊感がたまっていきます。

疲労感や疲弊感がたまると、自身が頑張っていることを理解してほしい気持ちや、もう少し報われるべきだよなという気持ちが生まれてきます。

こうなってきたとき、「より一層成果を出して敬意や感謝を得たい」という気持ちに繋がっていくケースが多いです。「もっと会社を大きくしたら認めてもらえる」「業績がもっと増えたら褒めてもらえる」といったように。
        

そして、より一層成果を出そうとすると、社員に対する厳しさもどうしても強くなってしまいます。社員も厳しく言われると頑張るので、ここでも「成果」はちゃんと出ます。

けれど、この循環で成果が出ても、社長が賞賛される場はありませんし、社員からの感謝や敬意が感じられません。何故なら、この成果を出すために社員は厳しく言われて頑張ってきていますので、成果が出ても「ようやく解放された」「何で社長に感謝しないといけないんだよ」という気持ちが強くなってしまっているのです。

私たちはこれを、「頭と心が分離したリーダーシップ」と呼んでいますが、このサイクルで成果を出し続けても、どこかで破綻してしまうことがよく起こります。
     

頭と心が分離したリーダーシップのシステム図

              

あくまで理屈上はという話になりますが、やはりリーダーの頭と心が一致している状態であることは重要になります。

自分がリーダーとして、社員を幸せにしたいなという気持ちにもフォーカスし、そこから率先して動き成果を出し、成果が出たら社員が喜んでいるのを見て、社員が喜んでることをリーダー自身も喜び(まるで子どもの成長を喜ぶ親の心境に近いかもしれませんが)・・・という循環でもし成果が出ていたとしたら、これはストレスのない世界になります。

このように、 「経営者が、自分自身に対し、どういう捉え方をしているのか」 という観点は、組織をマネジメントしていく上で、非常に大事なポイントになります。
    

頭と心が統合されたリーダーシップのシステム図

          

自分が「すごい人」であることを
認めていないリーダーシップ

経営者自身の自己分析、自己認知を高めることが重要という点で、もうひとつ大事なのは、「もっと自分がすごい人であることを認めてください」ということです。これは、社長や経営者、上司となる方に、よくよくお伝えしなければいけないケースに私たちはよく出会います。

社長や経営者は(そもそもこのような立場になるような方ですので)、人格者で、真面目で努力家であり、とても謙虚な方が多いのですが、それ故「自分がすごい人だと思っていない」ために、苦労されているケースがあります。
    

経営者となる方は、非常に優秀な方です。優秀だからこそ、経営者(またはリーダー)をやっているのです。この記事を読んでいる皆さまと同じレベルで優秀な社員がいたとしたら、恐らくその方は自分の会社を起業できたりするはずなのです。

なので、そんな優秀な経営者の方々の基準で、「これくらいできて、あたりまえだろう」と感じるレベルは、社員の側からすると、「難しすぎる要求」であり、「期待値が高すぎる」状態になっている場合が多く見受けられます。

経営者からしたら、「連立方程式くらいできるだろう」と思っていても、社員は実はまだ足し算やかけ算を覚えている…というようなギャップが、よく起こっているのです。
    

次の図は、上述したチクセントミハイの「フロー体験理論」は与えられた仕事の難易度と仕事の成果(パフォーマンス)に関する、心理学の研究です。Co-ducationでは組織マネジメントを推進する上で様々な心理学の研究結果を紹介していますが、この理論は、その中でも「これだけは絶対に押さえてほしい」と強くオススメする理論です。
     

チクセントミハイのフロー体験理論
【参考】 フロー体験理論

    

このフロー体験理論をもとに考えたとき、社員を「不安ゾーン」か「退屈ゾーン」か、どちらにおいているケースが多いかというと、「不安ゾーン」に置いているケースの方が多いものです。

「これくらいできるだろう」「もっとできるはずだろう」という、優秀な経営者や、優秀な上司の過度な期待のために、不安ゾーンに置かれて、むしろパフォーマンスが低下してしまっている社員が多数存在しています。

もしも、社員からより高いパフォーマンスを引き出したいのであれば、日々の業務やコミュニケーションにおいては、できるだけフロー状態にいられるような難易度設定となっているよう配慮すべきです。例えば「今月はここまで達成しよう」という目標設定自体が、不安ゾーンや退屈ゾーンにあっては、社員のパフォーマンスは最大化されません。
    

経営者やリーダーとして活躍される方は非常に優秀な方々ばかりです。ですので、そのような方々の目線からみたら、社員に対して、「そのレベルもできないのか」と感じてしまう場面はよく起こります。

けれど、それは「社員ができない」のではなく、まずは「ご自身の仕事能力が非常に高いこと」を受け入れることが重要です。
    

自分がすごい人であることをわかるのは、難しいものです。リーダーシップ論の多くは、謙虚でいなさいと伝えていますし、それと矛盾するようにも思われます。

しかし、自分の能力の高さを受け入れることと、それをやたらに鼻にかけることや、社員の働きを軽視することは全くの別物です。自分の能力の高さを受け入れていると共に、能力の高さを自慢することもなく、社員の働きに感謝する、ということはできます。
         

身内的リーダーシップ

経営者の方の中には、お客様に対しては非常に丁寧に仕事をしているのに、社員が相手になるとどうして急にそんなに雑な接し方になってしまうのでしょうか・・・というケースもよく接します。

この場合、せっかく雇った人材が離職してしまったり、社員のやる気が失われてしまったり、酷い場合には裏切られるということまで起こってしまいます。
    

つい社員(自社)のことになると、お客様と同じように丁寧には接することができなくなってしまうケースは、経営者側からすると、特にオーナー社長からすると、「会社は自分の家のようなものだ」という感覚をお持ちのケースが多いです。

自分が採用した社員は、家族の一員と言ったら大袈裟かもしれませんが、身内のようなものだと感じていらっしゃるようなケースです。

社長側には、どこか社員を身内のように想っている気持ちがあったとき、例えばですが、家族で、父親(社長)が子ども(社員)に対して、何かとひとつひとつお伺いを立てる…というのは、やってられないなぁとなるのも、非常によくわかります。

けれど、社員の側は社長のような感覚を基本的には持っていません。

社員の多くは自社に対して(社長に対して)、転職もあり得る中での一職場にすぎないという気持ちで仕事をしており、自社(社長)に対して家族というよりはお客様に接するのに近い、丁寧なコミュニケーションを求めているケースがほとんどです。

このように、多くの場合、社長と社員間において、相手に期待するコミュニケーションの丁寧さ/雑さにギャップが生じています。
     

主体的でいて欲しいリーダーシップ

経営者や上司の方に、「社員にどういう風にいてほしいですか?」とお聞きすると、「主体的に仕事をしてほしい」という言葉がよく出てきます。「主体的」とは、自分なりに考えて動くことを指す言葉です。

でも、経営者や上司の方にもう一歩本音を聞くと、「自分が出した指示・命令に対して、主体的に頑張ってほしい」という言葉が出てきます。ここで多くの方が社員へ期待する主体的とは、「指示や命令に対して、積極的にいてほしい」のようなのです。
    

経営者や上司が指示・命令をしたとき、社員や部下が「わかりました!」と意欲的に行動すること。これは主体的なのかというと、言われたことをただやっているだけ、受け身的ともいえます。

もちろんゼロか100かの世界ではありません。けれど、ついつい「社員には主体的でいてほしいし、自分の指示・命令に対して素直でいてほしい」という矛盾した2つの要素をいいとこどりしようという期待が強く働いてしまうようです。

実際には、社員へ主体的でいてほしいと思っていても「自分の出した仕事の指示や命令に対して、素直でいてほしい」、更に言えば「イエスマンでいてほしい」という気持ちがあり、この「主体性を発揮してほしい」と「指示・命令に積極的に頑張ってほしい」は、人間心理の側面からとらえると矛盾している部分があることは認識しておく必要があります。
    

「頭と心が分離したリーダーシップ」「自分の凄さを受け入れていないリーダーシップ」「身内的リーダーシップ」「主体的でいて欲しいリーダーシップ」などは、経営者自身にストレスを与えます。

それ故、そのストレス状態が組織全体に伝播してしまい、組織全体の生産性を低下させる・・・ということが起こります。逆に言えば、これらを改善していくことで、組織全体の生産性に好影響を与えていくことができるのです。
    

    

本稿では、組織マネジメントの諸所のコツを学ぶ前に、まず経営者の方に知っておいてほしい組織マネジメントの基本となる考え方や知識、注意点、また最新の研究を解説してきました。

次からはいよいよ組織マネジメントを具体的な領域ごとにご紹介していきます。
    

組織マネジメントの全体像

     

      

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