Vol.70 これからの時代に何故 目標設定は重要なのか
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今回のご相談内容
これからの時代において、目標設定は何故重要なのでしょうか。
石川からのご回答
企業において「目標設定」は非常に重要な営みです。
この目標設定が、しっかりと機能している組織は健全な活動ができるでしょうし、成果を出せる強い組織であると言えるでしょう。
目標設定が上手くいかないと「面従腹背」や「やらされ感」といった状態が生じることになり、個人のパフォーマンスも上がらず、結果として組織としてのパフォーマンスも上がらないことになります。
「実現したい」と思えるからこその目標
目標は、個人が「それを実現したい」と思うからこそ、その実現(達成)に向けた試行錯誤や努力が行われることになります。
目標やビジョンに対する態度のレベルとして『学習する組織』では以下のような定義がされています。
Lv.7 コミットメント
それを心から望む。あくまでもそれを実現しようとする。必要ならば、どんな「法」(構造)をも編み出す。Lv.6 参画
それを心から望む。「法の精神」内でできることならば何でもする。Lv.5 心からの追従
ビジョンのメリットを理解している。期待されていることはすべてするし、それ以上のこともする。「法の文言」に従う。「良き兵士」Lv.4 形だけの追従
全体としては、ビジョンのメリットを理解している。期待されていることはするが、それ以上のことはしない。「そこそこ良き兵士」Lv.3 嫌々ながらの追従
ビジョンのメリットを理解していない。だが、職を失いたくもない。義務だからという理由で期待されていることは一通りこなすものの、乗り気でないことを周囲に示す。Lv.2 不追従
ビジョンのメリットを理解せず、期待されていることをするつもりもない。「やらないよ。無理強いはできないさ。」Lv.1 無関心
ビジョンに賛成でも反対でもない。興味なし。エネルギーもなし。「もう帰っていい?」
現在も多くの企業で「トップダウンによる目標設定」が行われています。
つまり、会社として売上50億円を目指すので、A部署は30億円を達成するノルマがあり、営業の担当者は10億円の売上を達成するノルマがある・・・というように「上から降りてくる」という形で目標設定が行われます。
しかしこの一方的な目標設定だけでは、Lv1から、よくてLv4程度のコミットメントしか社員から引き出せないでしょう。
それでは会社として卓越した成果を創造していくことは難しくなります。
これからのビジネスにおいて重要な企業の競争要因
ロンドンビジネススクール客員教授のゲイリー・ハメルはその著書の中で「企業の競争力に貢献する、社員の能力」について以下のように説明しています。
顧客が毎朝起きて「何か新しいもの、ほかとは違うもの、素晴らしいものはないか?」と考えるような世の中では、企業が繁栄するかどうかは、あらゆる階層の社員の主体性、想像力、情熱を引き出せるかどうかにかかっている。
そしてそのためには、全員が自分の仕事、勤務先やその使命と精神面で強くつながっていることが欠かせない。
レベル1から3は、世界のどこでも雇うことができるので、社員から従順さ、勤勉さ、知識だけしか引き出せないなら、あなたの会社はいずれ経営が傾くということである。
主体性を持った人材は、課題や機会を見て取るとすぐさま行動を起こす。
創造性は、常識に挑戦する意欲を持ち、いつでも素晴らしいアイデアはないかとよその業界の様子を探るような、そんな資質だ。
情熱は、仕事を使命、社会をよい方向に変える手段として捉える姿勢である。
このような情熱漲る人材にとっては、仕事と趣味の境界はあったとしてもごく曖昧なものだ。
彼らは仕事に自分のすべてを傾ける。
創造性が大きな意味を持つ今日の経済で最大の価値を生む資質とは、ピラミッドの頂点に位置する「情熱」である。
大胆さ、想像力、熱意こそが、差別化の究極の源泉である。
ゲイリー・ハメルによれば、社員一人一人のLv.4以上の能力を引き出せるような、目標設定が重要ということになります。
実際に、様々な企業に関わらせていただいて「言われたことしかやらない」「どうしたらもっと積極的に考えてくれるのか?」という相談を、経営者や管理職の方から多くいただいてきました。
その対策の一つとして、目標設定の質を高めるということはとても重要な打ち手と言えます。
そして、AIなどが発展し「ビックデータなど過去のデータから最適解を抽出し提供する」といった仕事に関しては、付加価値が生まれず、
「人間が人間と関わって生まれてくる新しいアイデアや体験」といったことこそが付加価値の源泉となっている時代の流れの中で、社員の創造性を引き出せる目標設定は、ますます重要になってきていると言えます。
今回の回答は、以上となります。
いつも最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
[Vol.70 2021/03/09配信号、執筆:石川英明]