Vol.125 若手の向上心がない
Contents
今回のご相談内容
弊社は、毎年、新卒採用を行っておりますが、最近の若手社員は向上心がないなと感じることが多いです。弊社の採用の問題でしょうか、それとも今の新卒社員全体の傾向として、そのような傾向はあったりしますか?
また、若手メンバーにもっと向上心を持って取り組んでほしいとき、会社として何をしていけばいいのでしょうか。
石川からのご回答
今の若い世代は向上心がない?
いろいろな会社をご支援していて、経営層や管理職の方々から若手の向上心がないという悩みを聞くことが多くあります。実際に私も、若い人たちが、希望、野心、理想・・・というようなものをそれほど持っていないように感じることがあります。
ちょっと話は変わりますが、私は長いことパーソナルコーチングの仕事もしていますが、コーチングをやっていて思うのは「目標の”高さ”というのはほとんど変化することがない」ということです。
例えば「年収1000万円にはなりたい」と思って頑張ってきた人が、年収1000万円を達成した時に、「よし、もっと頑張って2000万円を稼ぐぞ」とか「1億円を稼ぐぞ」みたいにはほとんどならないなと思います。
また「年収1000万円になりたい」と思っている人に、「年収1億円を目指してみたらどうですか?」とふってみても、「年収1億円を目指したくなってきました!」となることもほとんどないなと思います。
目標の“高さ”というのは、そんな簡単に変わるものではないものかもしれません。
話を「若手の向上心のなさ」に戻すと、これは致し方ないなと思うところもあります。
私は1978年生まれです。バブル崩壊が1990年と言われていますから、小学校を卒業するくらいまでは右肩上がりの「世間」を感じていました。日本は豊かになってきたし、さらに豊かになっていくんだという「空気」を吸って育ってきたなと思います。
「失われた30年」という表現がありますが、これはつまりバブル崩壊後の日本経済の状態を表す言葉です。
例えば1999年に生まれた現在25歳の若手からすると「生まれてから今までずっと”失われた”日本を生きている」ということになります。
こういう世代が未来を希望に持ったりすることは、非常に難しいのかもしれない、と思ったりします。
未来に希望を持つとはどういうことか
「未来に希望を持つ」とはどういうことでしょうか?
どんどんお給料が上がっていって、どんどん暮らしがより良いものになって、いい家に住んで、贅沢な旅行をたくさんして・・・というような生活になっていくことが想像できる、ということが一つかもしれません。
そうだったときに、そのような「希望を持てる未来像」をどれほど若手社員に見せることが出来ているか?ということはあります。さらに言うと、これは一社だけの問題ではなく「社会全体として、より豊かになっていける」という感覚を持たせられているかどうか、です。
ただ少なくとも、自社として若手に「希望を持てる未来像」を見せられているかどうかは非常に大事な要素だろうと思います。
「希望を持てる未来像」を共有できていないときに「向上心がない」「もっと頑張れ」と言われても、若手からすれば「何に向かって頑張ればいいんですか?」ということにもなると思うのです。
ビジョンを示す重要性が高くなっている
社会全体として、なんとなく、「頑張っていけばきっとよりリッチな生活ができるようになるどう」と思えていた時代は、特別に「うちの会社のビジョン」なんてものが示されていなくても、世間の空気を吸っていれば、頑張るエネルギーも湧いてきていたかもしれません。
しかし「社会全体として」というところは期待できない現在では、「うちの会社の明るい未来像」について、しっかりと示せるかどうかが非常に重要になってきていると言えます。
それが採用においても差別化になり、働いている社員のモチベーションにもなるところでしょう。
どう売上を伸ばし、どう給料を伸ばしていくのか。どれくらい売上を伸ばし、どれくらい給料を伸ばしていくのか。この未来像のイメージを、経営陣と社員(若手)とで、どれくらい共有できているかどうかです。
給与以外の価値も示すことができるか
多くの社員は「仕事はお金のためにするもの」「お給料をもらうために仕事をする」「お金があるならぶっちゃけ仕事なんかしたくない」というように思いこんでいたりします。
しかし仕事は、給与を得て生活を成り立たせる以外にも、素晴らしい価値がたくさんあります。
- 社会に価値を提供し、社会に貢献する喜び。
- 自分自身が成長する喜び。得意を発揮する喜び。
- お客様に喜ばれる喜び。仲間と助け合う喜び。
・・・などなど素晴らしい価値がたくさんあります。
給与はもちろん重要な要素ですが、給与以外の面でも「当社で働くことには素晴らしい価値がある」ということを自信を持って提示できるか。
実際に社員がそのような価値を体感できるマネジメントとなっているか。これも非常に重要なところであろうと思います。
「若手の向上心がない」にどう対応するか?
「うちの会社に入った人間は、向上心が芽生え、強くなっていく」。
そのような会社であることは、できます。
もちろん元々向上心のある若手を、採用できればいいでしょうが、そもそもそういう人材が育ちにくかった日本社会の状態があったことを受入れてしまった方が、効果的な対応ができるというものです。
入社前の状態から入社後に
「仕事は時間の切り売り」⇒「仕事を頑張ると充実感がある」
「どうせ頑張っても報われない」⇒「努力は正当に評価される」
「お金があるなら仕事しない」⇒「お金があっても仕事はしたい」
というように仕事観、労働観が変わっていくような会社であるということです。
そしてそれは結局、社長をはじめとした経営陣、管理職陣が、日々そのような姿勢で仕事をしているということにつきます。
日常の会話の中で、例えば先輩とランチをしていて、「ぶっちゃけお金があるなら仕事したくないっすよね」「えー、そうなんだ。俺は、 お金あっても仕事はしたいなぁ。仕事の充実感はなくしたくないなぁ」というような会話になるかどうか。
そこが鍵であると思います。
いかがだったでしょうか。いつも最後までご覧いただき、ありがとうございます。記事に対する感想や質問などもいつでもお待ちしております!
また、これまで組織をよりよくしていくご支援に実際に取り組んできて、「組織変革を上手く進めるツボ」や「組織変革が上手くいかない落とし穴」といったことが、かなり見えてきました。この体験から得られた知見を、体系的に論理として整理したものを、「組織をより良くしたい」と思っている方がと共有したいと思い、組織変革塾を不定期ですが開催しております。
組織変革塾は、組織開発の仕事をしている同業の方(組織開発コンサルタントの方)や組織開発の仕事をしていきたい隣接職種の方(コーチ、研修講師、社労士などの方)にもご参加いただけますので、よろしければまずは是非詳細ページをご覧いただけましたら幸いです。
[Vo125. 2024/05/05配信号、執筆:石川英明]