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部署間の連携の難しさと
よくあるお悩み
経営者の方から「もっと部署を超えて、協力し合いながら仕事をして欲しい」という声はよく聞きます。それをテーマにご相談を受けることもよくあります。
また、社員の方からも、不満やストレスでよく出てくるのは「隣の部署がちゃんと仕事をしてくれない」「あっちの部署のせいで、こっちが迷惑している」といった話です。
部署間の連携というのは難しく、なかなか自然にスムースとはいきにくいものなのです。
これまで「部署間の連携」をよくするといったお仕事はたくさんさせていただいてきました。
- 製造業の、営業部・開発部・生産部の連携が上手くいっていない
- 東京の本社と岐阜の工場の連携が上手くいっていない
- 通販企業において、販売企画部と物流部の連携が上手くいっていない
など、このような問題に対してご相談をたくさん受けてきました。
部署間の連携についての考え方
なぜ部署間の連携は
上手くいかないのか
なぜ部署間の連携が上手くいかないのかというと、それは一言で言ってしまえば「お互いの苦労が分からない」ことに尽きます。
例えば、上記の通販企業において販売企画部と物流部はしょっちゅう喧嘩に近い問題を起こしていました。
販売企画部には、物流部の仕事の何が大変なのか分かりません。「ただ出荷するだけでしょう?」くらいしか想像ができないのです。自分たちの仕事で、物流部にどのような影響が出るのかもよく分かっていません。
物流部には、販売企画部の何が大変なのかが分かりません。「どうして出荷指示がこんなに遅くなるのか?」「机の上で企画書書いてるだけなんだから、時間はいくらでもあるでしょう?」と思っていたりします。自分たちの仕事が、販売企画部に対してどのような影響がでるのかもよく分かっていません。
このような状況は、非常によく起こります。
まず企業というのは「効率化」を基本的に指向します。無駄を削いで、無駄なコストをかけずに、財務体質を良くしようとします。この力学というのは、企業であれば多かれ少なかれ常に働いていることが普通です。
「効率化」を目指すと「専門家」を生み出すことになります。一人の人間が一人の業務に習熟していったほうが効率的だからです。サッカー選手がサッカーだけに5年間集中したほうが、サッカーも水泳もピアノも習って、、、、よりも効率的にサッカーに習熟するであろうことは容易に想像できます。
出典:写真AC
しかし当たり前ですが、専門家は自分の専門以外のことは分からなくなります。「販売企画」をつくることを専門にしていれば、物流のことは分からなくなるのです。だから、部署間の連携というのは難しくなるのです。
これを意図的に防ぐためにも、「ジョブローテーション」を企業として強い意識でやり続けている会社もあります。有名なところでは、花王です。1社員が、数年おきに様々な部署の仕事を体験するので「大きな会社の中で、自分の部署の仕事のことしか知らない」ということがありません。
仕事を頼む側の部署、頼まれる側の部署。両方の立場を経験すれば「お互いにとってよい仕事の進め方」を自然と考えやすくなるのは当然の道理です。
しかしこれは一方で、(短期的な)習熟性や効率性を犠牲にした制度でもあります。どうしてもこの点はトレードオフになります。
私が主にお手伝いしているのは5名~50名ほどの規模の企業様ですが、数千名社員がいるような企業と同じようにジョブローテーションを行うことは現実的ではないということは多々あります。
例えば、ある社員を他部署に異動させてしまうと、その社員が担当していた業務は誰もやることができずに「ぽっかり穴が開いてしまう」というようなことが、中小企業では普通にあり得るからです。
どのように部署間連携を
強化していくのか
人間は”他人”が苦しんでいてもスルーします。道端で人が倒れていても、自分が忙しければそのまま駅まで歩いていく、というようなことは普通にあるでしょう。
しかし例えば友人や家族が、一緒に歩いていて突然倒れたら、その時はスルーはしないでしょう。救急車を呼ぶなり、なにかしら自分のできることをしようとするはずです。
この違いは、重要です。
会社組織において「他部署の人間は、他人」という感覚であることは多々あります。他人であれば、苦しんでいようがそれはまさにit’s not my businessです。
まずはこの「他部署の人間は、他人」という感覚を打破することが、土台としてとても大切になります。逆に言えば、この土台を整えることができれば、それだけでかなりの部署間の問題が解決できたりもします。
「納期変わりましたから」なのか、 「ごめん、どうしても納期ずらしてくれって。このお客さんは●●でさ。すみませんがお願いします!」と一言付け加えられるかどうか。
それで全然違うようになっていくわけです。
施策を進める上で
重要になるポイント
関係性を向上させる場を設ける
「納期変わりました」しか言えない関係性なのか、「ごめん、どうしても納期ずらしてくれって。このお客さん●●でさ。すみませんが、お願いします!」と言える関係性になるのか。
それは、働いている個々人のまさに関係性そのものが土台になっています。
私たちは、各企業の状況・文化などに合わせて、そういった「関係性向上のための場」を提供させていただいています。
例えば、趣味の話で盛り上がれるような時間を、業務時間内のワークショップという形で実施する場合もあります。個人的なキャリアの歴史や、未来の展望などを共有し、相互理解を深めるような場を持つ場合もあります。Strength Finderなどを活用して、相互の個性の違いへの理解を深めるような場を持つ場合もあります。
いずれにせよ、「他人」だった他部署の人間が、少しずつ仲間や友達の感覚に近くなっていきます。
出典:写真AC
お互いの業務上の苦労をプレゼンする、という場合もあります。
そのプレゼンを聞くと「えー!そんな大変なことやってくれてたんだ!」と理解が深まることも多いのです。(やり方を丁寧にやらないと、ただの苦労自慢になり、余計ギスギスする場合もあるので安易にはやらないでください)
お互いの業務上の感謝を伝え合う場を、公式の場として設ける場合もあります。これも上手くやらないと大失敗する落とし穴もありますので気を付けてはいただきたいですが、丁寧に進めれば非常に効果があります。
「ああ、お互いにやっぱり支え合いながら仕事できてるんだな」「ありがとうを言われて、やっぱり嬉しいな」という感じになってきます。
事例:新入社員研修を活用したケース
インターンや新入社員研修を活用したケースもあります。新入社員に、各部署にヒアリングにいかせて、全社業務フローを整理させ、発表させるのです。
「こっちの部署はこういうところが大変です。こっちの部署ではこういう意識を持ったほうがいい。 逆にこっちの部署ではこういうところが大変です。」
新入社員たちの発表に、先輩社員たちも「なるほど」とうなっていました。「そんな苦労が、あっちの部署にはあるのか。知らなかったな」と。
新入社員としても疑似的なジョブローテーションを体験でき、先輩社員たちも会社全体のつながりの理解を深めることができる。一石二鳥の方法です。
もう一歩深く業務連携について
検討する
ベースの関係性ができてきたら、もう一歩深く業務連携上の問題について議論を深めていくとよいでしょう。
これも、先ほど解説したベースの関係性ができているかによって、会議の質が大きく変わってきます。
例えば、「Xという100時間かかる業務を、A部署でやるのか、B部署でやるのか」という話になったとき、どうしてもA部署とB部署は敵対関係に陥りやすくなります。「そっちの仕事でしょうよ」と言いたくなります。ただでさえ忙しいのにこれ以上やってられませんと。
しかしベースの関係性ができていて「私たちは仲間なんだ」という意識が育まれていれば、話は別です。
「たしかにこのXという100時間かかる仕事は、誰かがやらないといけないなぁ」
「やるとしたら、A部署とB部署だな」
「どうやって、協力し合ってこの仕事をやり遂げるか、検討しよう」
という感じでやっていけるからです。
「仲間である」という認識があることは、前提として本当に重要になるのです。
その上で「Xをやるのは、共通目標を達成する上で大切だ」と思えること、そして全体最適思考で、役割分担を考えるようになることが重要です。
この土壌を整えていない中でいきなり「A部署とB部署で会議して、Xをどう進めるか決めておけ」と命令しても、上手くいきません。逆に言えば、土壌ができていれば、しっかりと前向きな議論をしていくことができます。
あるメーカーでは、生産管理と営業で問題が起こっていました。問題としては「中国工場の品質問題や納期遅れ問題があって、営業としては非常に迷惑している」といった話でした。
しかし、生産管理としては中国工場の管理に対して既に最善を尽くしているわけですから「そうは言われても、、、」という状況で、そのためにこの2部署の関係はいつもギスギスしていました。
しかし、関係性向上のワークショップなどを経て、徐々に「仲間意識」が強くなってくると、2部署が”一緒に”問題解決に取り組み始めました。
「ふむふむ、営業さんとしては、営業活動も競合との値引き交渉で厳しい中で、納期遅れなどがあるとさらに値切りの交渉材料にされてしまって厳しいんですね。。。」
「なるほど、こっちとしてはそれはやれるだけのことやってますね。。。それでも中国工場がこういう風に納期遅れになっちゃうときがあるんですね。これは打ち手が浮かばないな。。。」
と今までになく「一緒に悩む」会議になっていきました。
出典:写真AC
この問題については、結果として、生産管理側がさらに踏み込んで中国工場の管理をやっていくことになりました。現地への出張も増やし、工場での納期管理の実態も見ながら、取引先の運営状態に口出しをしていくようになったのです。
そのために、営業側も努力をし、今まで生産管理側に任せていた発注票の作成などを、営業側でカバーするといったようにもしていきました。
実際に、納期遅れがなくなるという成果が出るまでにはそれなりの時間を要しましたが、しっかりと成果が出ていきましたし、その途中のプロセスにおいても営業と生産管理の関係性はますますよくなっていきました。
実際にビジネス上の成果を出すためには、ここまで踏み込んだ議論、努力が必要なことが多くあります。しかしそれを推進していく上で「部署間の関係の悪さ」という壁が立ちはだかっていることも多いのです。
逆に言えば、部署間の関係性を向上させることによって、劇的にビジネスの成果を高めることもできるわけです。
支援事例
相互理解から
業績を伸ばした企業の例
ご相談内容
当社はメーカーで、主に、「営業」「製造開発」「在庫管理」「顧客サポート」「マーケティング」と部門が分かれている。
起きている事象としては 、
- 営業から見ると、製造開発が納期遅れを起こすのでお客様からクレームがくる。
- 製造開発からすると、どれが当たるか分からないので手広く作るしかない、結果としてどうしても納期が遅れがちになる。
- 在庫管理からすると、製造開発は遅れるし、営業は急かすしで、板挟みになる。
- 顧客サポートからすると、品質の悪いものも市場に出て、どうしてもクレームが増え、会社のブランド価値が下がる。
- マーケティングからすると、全製品売れ筋商品として頑張るため業務量が膨大。
といった感じで、部署間の連携に関して社内から不満の声が多く、どの部署にどう対応するべきか悩んでいる。
ご支援内容
この会社では、まず部署間で、ThanksとSorryの共有を徹底しました。
例えば、営業からすると「需要予測を上手く製造開発に伝えられなくて“全部作ろう”にさせてしまってごめんなさい」「いつも在庫管理に無理を言って、無理やり納期を間に合わせてもらってホントに助かっています。ありがとうございます」と言ったようなことを、ちゃんとコミュニケーションしました。
それによって多少なりとも感情的なわだかまりが減ったところで、業務フローを可視化し、全体で起こっていることをシステムシンキングも用いながら整理しました。
さらに、Strengthの相互理解と、個人的背景の相互理解を深めていくと、本当に素晴らしいチームワークの会社になっていきました。
業務効率は向上し、離職率は低下し、市場が縮小していくところでビジネスをやっている中で、競合の多くが倒産していきましたが、むしろ業績が向上していったのです。
部署間の連携でコールセンター
部門の雰囲気が改善した例
ご相談内容
コールセンター部門が、非常に雰囲気が悪く、仕事のミスも多く、離職率も高い。コールセンター部門は一般的にストレスが高く、職場の雰囲気が悪化しやすいものだが、うちの会社は特にそれが顕著だと思われる。
顧客からのクレームに対処する業務時間が長く、特に社内で大ヒット商品が生まれると、クレームの件数はどうしても増えるため「会社全体は喜んでいるが、コールセンター部門だけ葬式のようになっている」という構造が続いている。そのために、部署間の関係性も悪化してしまい困っている。
ご支援内容
結論から言うと、社内的にしっかりとフィードバックループを回すと、部門の雰囲気がよくなり、全社的な連携がよくなり、離職率も低下しました。
具体的には二つのアクションを強化しました。
一つ目は「感謝のフィードバック」です。
自分たちの仕事(クレームに対応する)が、自社にとっていかに重要で大切な仕事かについて、繰り返し繰り返し話をする時間を取りました。
また社長が、部門社員へ感謝を伝える場面も用意するようにし「大変な仕事をやってもらっていて、本当に感謝している」ということが、以前よりもずっと頻繁に伝えられるようになりました。
もう一つは「他部署社員が、定期的にコールセンターに一定期間配属される仕組み」を作りました。
1週間程度の短期間ですが、一度は顧客からのクレームの電話を受けることになります。そうすると「コールセンター部門の人には大変なことをしてもらっている。。。」と肌身で分かるようになり、他部署社員から、自然と丁寧なコミュニケーションが取られるようになりました。
大ヒット商品が出た場合にも「クレームの数は増えてしまってごめんなさい」「対応の積み重ねで、お客様が信頼してくれていてからこそのヒット商品です」といった会話が、自然と他部署から出るようになりました。