Vol.44 在宅勤務における効果的なマネジメントとは

今回のご相談内容

弊社もコロナウイルス対策として、在宅勤務(リモートワーク・テレワーク)中心のスタイルに切り替わりました。出社の場合も全員が一斉に出社することはほとんどなくなり、各部署で交代制で出社するようにしています。

そして、在宅勤務中の社員の居眠りやさぼりをどうするのか、評価はどうしたらいいのかなど、例にもれずさまざまな声があがり、現在試行錯誤しております。

今回は、リモートワークの場合の効果的なマネジメントや、主に上司が部下とのコミュニケーションで気を付けるべきところを教えていただきたいです。

    

石川からのご回答   

そもそも効果的なマネジメントとは?

働き方が在宅勤務やリモートワークにシフトしたからと言って、効果的なマネジメントのあり方も変化があるかと言うと、実はほとんどありません。

マネジメントは、言ってみれば「社員の能動性を引き出す」ことに尽きます。それはリモートワークであろうと、リアルな出社であろうと変わりはありません。

「リアルに出社していたときはマネジメント出来ていたけど、リモートワークとなるとマネジメントが難しい」となっている管理職の方は、「そもそも今までマネジメントをどんなものと捉えていたか?」を見直す、よい機会だろうと思います。
   

十二分なマネジメント、権限移譲といったことができていれば、社員を「監視」する必要性は減ります。社員を監視する必要性を感じているとすれば、それはマネジメントのどこかが機能不全を起こしているのです。

部下一人一人が「この仕事を、この期日までに、このクオリティで仕上げるべき意味」というものを納得していれば、部下は能動的に仕事をします。

マネジメントは、その【お膳立て】をするということです。

そのお膳立てをせずに「いいからやれ」と言って、オフィス空間の中で監視によって仕事をさせていてたとしたら、それはマネジメント(管理)というよりは、単なる監視に過ぎません。
   

出典:写真AC

    

在宅勤務によりマネジメントで難しくなった面

それでも勿論「在宅勤務やリモートワークによってマネジメントが難しくなっている面」がないわけではありません。

最近、仲間たちと「周辺視野/中心視野」という話をしていました。

中心視野は、明確に「これを見ている」という意識が働き、「これはリンゴである」のように、言語化される部分のことを指します。

人間には周辺視野もあって、目には何となく入っているが、ハッキリと言語化されたりしていない情報もあります。武道の達人などはこの周辺視野が発達していて「見える」ことが多く、その情報に身を委ねることができ、相手の攻撃などに「瞬間的に」対応できたりする、というようなものです。

優れた経営者、管理職は、この「周辺視野」も使いながら経営判断を行っています。
   

リモートワーク中心となると、この周辺視野を活用することが、非常に難しくなります。オフィスにいて「なんとなく感じていること」という膨大な情報量を、経営判断に活用できなくなるからです。

これを補完するには「今までやっていなかったが、毎朝朝礼を10分やるようにした」などの、周辺視野の情報補完の施策も必要となってくるでしょう。
   

おそらくですが、日本人は文化的に「周辺視野」が比較的発達している民族ではないかと思います。

誰に教わったわけでもなく、経営者が「周辺視野」を活用しながら経営判断をしている(経営判断をできてしまう)というところも、かなり日本的なように思います。

これは「社員同士の協力」といったこともそうで、なんとなくあっちのチームが忙しそうだぞ・・・というようなことを、自分の業務をやりながらも感じ取りながら、日本人は仕事をしています。

中心視野では自分の仕事を遂行しつつ、同時に、周辺視野では、他部署の雰囲気といったものを感じ取りながら場にいるわけです。

こういった「周辺視野の活用」という部分は、リモートワークでは確実に難しくなります。ですから、この補完施策というのは、マネジメントとして考えなければいけないことにはなってくるでしょう。

   

これからのマネジメントで気を付けたいこと

一方、中心視野に関して言えば、明確に、言語的に「だからこの仕事を自分がやるのだ」と腹落ちするような状態を作る、お膳立てをしっかりとする、ということはリモートワークにおいてはむしろやりやすいと言ってもいいほどです。

少なくとも「オンラインだから劣化する」ということはかなり少ないだろうと思われます。

  • この仕事の意味や価値は何か?何のためにやるのか?
  • この期限の意味は何か?なぜこの日までにやらなければいけないのか?

こういったことはしっかりと言語的に伝えられ、言語的に理解されるべき領域です。

こういったことを日頃から丁寧に実践していたマネジメント層は、おそらくこのリモートワーク下においても、それほど変化を感じていないことでしょう。
   

さて「評価が難しくなる」「成果主義的評価しかできなくなる」といった意見もちらほら目にしますが、これも正しくはありません。

評価は「なんとなく」されたりしていたら、部下の方は納得できないでしょう。納得感のない評価制度(の運用)ほどもったいないものはありません。だとすると、評価はこれまでも「事実ベースで行われる」ということは必要とされてきたわけです。

定性的な評価、例えば「積極的な姿勢」といったことが、評価項目にあったとします。

これが、リモートワーク前には評価ができて、リモートワークだと評価ができなくなる、というのはどういうことでしょうか?

もし事実ベースでこの評価をしようとすれば「会議中に、積極的に新しい観点から発言していた」「後輩の相談事に快く対応していた」などの事実があって、それをもとに評価されるべきです。

こう見たときに「会議中の発言」などの事実は、リモートワークにおいても変わらないことが分かります。そういった情報をもとに評価を行うのであれば、オンラインであれ、オフラインであれ、変わりはありません。
   

問題は「後輩の相談事に快く対応していた」というような「評価者との直接のコミュニケーションの場でない行動」です。

メンバー同士の関係性において、大きな貢献があるといった行動については確かに事実を観察しにくくなります。その点においては、360度評価的なものを補助的に導入するということは現実的にあるでしょう。

「この同僚によく助けられた/この同僚にたまに助けられた/この同僚とはかかわりがなかった」などのアンケート情報を吸い上げて、見えていない部分を補完するようにするということです。

   

既に起こり始めていることと思いますが、今後より一層、その会社の「マネジメント力」によって、会社の浮沈の差が大きくなってくるだろうと思われます。

もともと地力のあった組織は、このパンデミック下においても実力を発揮していくことになると思いますが、「実はマネジメント力は鍛えられていなかった」といった組織は、生産性の低下や離職率の増加などに苦しむことになるかもしれません。
   

同じ会社の中でも「マネジメント力のあるマネジャー」と「実はマネジメント力がそれほどなかったマネジャー」とで、チームの生産性に差が出てきたりすると思われます。

こういったことも機会ととらえて「本質的なマネジメント力を向上させる」という方向に持っていけるといいのだろうなと思います。

今回のご質問に対する回答は以上となります。

いつも最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。

    

[Vol.44 2020/07/28配信号、執筆:石川英明]