Vol.45 これからの時代の中小企業の役割とは?
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今回のご相談内容
これからの時代の中小企業の役割というのは何でしょうか?
大企業の大量仕入れ、価格設定などにかなわないところがあります。
石川からのご回答
例えば、「街のコーヒー屋さん」といったことを考えたときに、チェーン店と価格競争をしても勝てないだろうと思います。
そのあたりはおっしゃる通りだと認識しています。
大量に仕入れることで、同量当たりの単価を下げて仕入れることができます。また「チェーン全体での在庫管理」によって、廃棄率などを下げやすい、といったところもあると思います。
中小企業は、大企業に、価格競争ではなかなか敵いません。
仕入れも高くて、販売価格も高くて、利益率は高くない。だけど「街に必要とされている」といったお店でないと難しいでしょう。(おそらくですが、チェーン店でないコーヒー屋さんは、この30年ほどでかなり減ったのではないでしょうか)
まず一つは「高い利益率を求めない」という発想はあるかと思います。
「すごく儲かるわけじゃないけれど、お店をやっている時間が好きだから、やっている」というような商売の仕方です。
趣味で旅行に行っている・・・のと似たような感覚で「趣味でお店に出ている」のだとしたら、その時間は、働いているのか、遊んでいるのか、切り分けられない時間、ということになってきます。
もしそういう時間と位置付けることができるのであれば、それほど高い利益率がなくてもよいということになります。
多くの”労働者”が「遊ぶために稼ぐ」「稼いだお金を使って遊ぶ」ということをしているときに、「遊びながら稼ぐ」ことをしているのだとしたら、お金の感覚も全く違うものになってくるということです。
ニッチ市場でビジネスをする
中小企業だけれども、ちゃんと儲かるビジネスをやりたいんだ、利益率のよいビジネスをやりたいんだ、という場合ももちろんあると思います。
今の時代の中小企業というと、Youtuberなどが思い浮かびます。10万人、100万に視聴されるような動画を配信出来ているYoutuberは、ちゃんとビジネスとして成立しています。
いくつかの観点がありますが、一つ注目したいのは「世間一般では全然知られていないけれど、その領域のコアなファンからはものすごく好かれている」という要素です。これは、中小企業において、昔と変わらず、とても重要な点だと思います。
要は、ニッチ市場でビジネスをするということです。
それがオンラインであれ、オフラインであれニッチな市場で「この小さな市場では、圧倒的にNo.1」という状態を作れれば、中小企業でもしっかりと儲かるビジネスができるだろうと思います。
ニッチな市場は、大企業にとって魅力がありませんから大企業もほとんど入ってこない。逆に言うと「魅力がないくらい小さい」ことが重要です。
そのような市場で、ペルソナを絞りに絞って、そのペルソナのかゆいところに手が届くような万全のものを提供する。そうすることで、よいビジネスを構築していくこともできるかと思います。
効率性を考えないからこそ得られる顧客満足度
もう一つ、中小企業における「市場での優位要因」のようなものを考えると、「効率性を考えないからこそ得られる顧客満足度」といったことになるかと思います。
大企業は基本的に「利益率」や「効率性」というものを常に判断の中で求められます。
もちろん中小企業でも重要な観点ですが、大企業のその習性を逆手にとって「とことん顧客に寄り添う」といったことをしていく、というのも一つの方法であり「中小企業の存在価値」といえるかもしれません。
大型スーパーでは得られない買い物体験。それを「街の魚屋さんだと得られる」というようなことです。
軽妙な会話や、魚の知識、そういった”顧客接点の厚さ”は、市場を絞り込んだ中小企業だからこそできる、といったことがあります。
「1to1(ワントゥワン)マーケティング」といった言葉が出てきてからかなり時間が経ったと思いますが、真のワントゥワンを実現しやすいのは、例えば地域密着の中小企業などです。
「家族構成まで含めた個人情報が八百屋の店主の頭の中に全部入っている」というようなものは、そういうサービスを嫌う顧客もいるでしょうが、その状況だからこそ提供できる付加価値は必ずあります。
大企業は、リスクの観点から、そういった個人情報をなかなか蓄積できないでしょう。このあたりに中小企業ならではの付加価値、競争要因はあるように思います。
大きな流れで言うと「均質化された大量生産品」は、生活の土台としてある程度の大企業が独占的に提供していくことになると思います。例えば、分かりやすく、衣類は、まずはユニクロやGUでそろう、という感じです。
そこを「中小企業のアパレル」が勝負をするとしたら、「顧客との密着度」ということになるでしょう。これは、時代の大きな流れとして、そうなってくると思います。
「手作り感」や「一緒につくる体験」「オリジナル性」といったものは、マス商品、マスサービスは苦手とする領域です。
そして、その部分の付加価値こそが高いという傾向は、今後ますます強くなっていくだろうと思われます。
いつも最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。
[Vol.45 2020/08/04配信号、執筆:石川英明]