Vol.69 事業継承に悩んでいる
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今回のご相談内容
事業継承について悩んでいます。
年齢的なこともありますし、自分自身のモチベーションとしても、社長として目標を掲げてみんなを引っ張っていくよりも、信頼できる後継者に会社を委ね、次世代のメンバーでさらなる発展を目指してほしい気持ちが強くなってきました。
しかし、いざ事業継承をしていくためには何をしていけばいいのでしょうか。
石川からのご回答
事業継承についてのご相談もよく受けます。なかなか難しい課題ですが、順を追って丁寧に行っていけば、良い結果が得られるものでもあります。
今回は実際にご支援してきた経験も踏まえ、事業継承の一般的なステップとそのステップで重要となる要素を解説していきたいと思います。
1.事業継承をする覚悟
まず、社長を退いて、他の人に社長を任せるということについて覚悟する必要があります。
引退後は、基本的に後継者に任せて、口出しをしないということになります。この「任せる」ということについて、覚悟が必要です。
2.事業継承をする条件
実際に「覚悟」と言っても後継者に「ここは守ってほしい」「ここは維持してほしい」というライン、条件というものも出てくるかと思います。
これについては一旦細かく洗い出してみる必要があります。
- 株主として年間●円の配当はもらう
- 会長職として、年間●円の役員報酬はもらう
- 会社として、毎年●円以上の税引き後利益を出すことを基本とする
- 会社の方針として「●●(例えば、顧客満足を重視するなど)」は継続してもらう
・・・などなど、事業継承後も「最低限ここは守ってほしい」というラインがあるかと思います。
それについては、一旦ワガママでもいいので、自分自身の本音で洗い出して、整理してみましょう。
3.事業継承をするという発表
●年後には、自分が社長業を引退して、誰かに次の社長を託す、ということを正式に発表します。
ステップ4でも解説していますが、まず複数人候補者に声をかけて、その後指名するなような場合もあるでしょう。どのタイミングでどこまで発表するかはケースによります。
出典:写真AC
4.事業継承プロセスのスタート
後継者が1人に決まっている場合
後継者が一人に決まっている場合は、その一人を役員に昇格させる、副社長に昇格させるなどして内外に「後継者はこの人である」ということを明示します。
そして1~3年程度をかけて、情報開示(財務情報などの共有)と、権限移譲(意思決定を後継者にさせる)を行っていきます。
後継者が複数候補いる場合
もし後継者候補が複数人いる場合は、その候補者たちに声をかけて1~3年かけて次期社長を選抜する旨を伝えます。(伝えずに、現社長だけが認識をしていて、選抜プロセスを密かに進めていくという方法もあります)
その際には「次期社長の人材に必要な能力・資質」を明示し、そのような能力を最も発揮できた人材を次期社長に任命するということを伝えます。
“経営陣”として、社長にならなかった人材も次期社長をしっかりと支えて欲しいと考える場合は、その旨も伝えておきます。出世レースのライバルでもありますが、結果が出た後はノーサイド、しっかりと協力して経営を進めていくことを望むと。
それが「役員」や「管理職」の必須条件であり、次期社長に協力できない人間は降格などもあり得ることも伝えておく必要があります。
そして期限内で候補者の観察をよく行い、誰を社長に指名するか決定します。
5.事業継承の本格化
上述した情報開示(財務情報などの共有)と、権限移譲(意思決定を後継者にさせる)を本格化させていきます。
まずは役職としては社長として存在し続け、後継者を副社長などの役職に登用します。
そして部下が社長に直接相談や報告に来ることを断ることをスタートします。「それは副社長に相談しなさい」と、直接自分とやり取りすることを徹底的に断ります。
副社長からの相談にはしっかりと乗るようにします。
報告はしっかりとさせておき、重要な議案については自分の考えを述べ、その判断理由もしっかりと説明します。
この「説明」が後継者育成の肝となります。これによって、後継者が高い視座や広い視野を獲得し、総合的な判断力を鍛えていくことができます。
徐々に「説明する」から「説明してもらう」にシフトしていきます。
- この議案についてどうすべきだと考えているか、
- その理由はどんなものか。
それを聞くようにシフトしていきます。
このプロセスを通して、後継者に「一人前の経営者」に育っていってもらいます。
6.事業継承の完了
期限を決め、その間に後継者育成を進めて、期限が来たところで新社長に就任してもらいます。会長として残るか、株主だけの立場になるかなどは、当初取り決めていたものを守るようにします。
株主として、四半期に一回、経営者に報告を求める、などは継続してよいでしょう。
重要な点は「How(どうやるか)」の指示はしないということです。
四半期決算の報告などを聞いていると、問題点なども出てくることもあるでしょうが、その際に「このようなアクションをとって(How)解決しなさい」ということを、株主や会長として指示してしまうと、結局、実質自分が経営し続けることになります。
問題があった場合に放置するということではもちろんなく、例えば株主として「この問題について、次回までに改善案を持ってきて聞かせて欲しい」「改善結果を聞かせて欲しい」ということはもちろんあり得ます。
「これは問題だ(What)」ということまで制限されるものではありません。
このWhatとHowの切り分けをしっかりと行うことで、適切な距離で関わることができ、事業継承を完了することができるようになります。
今回の回答は、以上となります。
いつも最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
[Vol.69 2021/03/03配信号、執筆:石川英明]
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