Vol.81 社内の愚痴や不満を減らしたい ―働きやすい職場は誰が作るのか?
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今回のご相談内容
社内の愚痴や不満を減らしたい。愚痴や不満の声が大きく、ギスギスしていると、それだけで会社の生産性が下がる気がします。ただ受け身的に愚痴や不満を言うのではなく、もっと視野を広く持って、必要ならば主体的に改善するようになってほしいです。働きやすい職場をつくるにはどうしたらいいのでしょうか。
石川からのご回答
「愚痴や不満を言う」という習慣は、多くの人が身に着けています。それは、なぜかというと、多くの人が「自分が所属している組織に対して、自分が主体的に関わって変えていく」という経験をしたことがないからです。
勿論、例外はありますが、例えば学校という組織に所属すると、自分が入学前から決まっていた校則に従わなければなりません。生徒として主体的に校則を作っていくという経験をしたことがある人はほとんどいないのではないでしょうか。
「そういうものだ」という前提で不平不満をいう人たち
「うちの校則、おかしいよね。」「うちの校則古いよね」というような発言をすることはあっても、「校則を変えるように、校則変更プロジェクトを立ち上げて実際に校則を変えた」というような行動をすることはほとんどないだろうと思います。
社会のルールについても同様で、「なんでこんなに税金が高いんだ」「全く、お上は税金泥棒だ」というような発言をすることはあっても、「税率を変えるように、税率改正プロジェクトを立ち上げて、税率を変えた」というような経験をしたことがある人は、非常に限られているだろうと思います。
会社に入れば、会社のルールが色々ありますが、そのルールは「自分が主体的になって改良すべきもの」ではなく、ほとんどの人にとっては「嫌々でも従うもの」といった存在であることでしょう。このような状態であること自体が、「愚痴や不満が出てくる」ことの根本的な原因と言えます。
愚痴や不満が減った実際にある会社の物語
長くご支援させていただいているあるクライアント企業は、社員の愚痴や不満と言ったものが驚くほど少ない状態です。「何か、会社のここを変えたい、ここは問題というものはありますか?」と社員の方に聞くと「うーん、、、」「ホントに働きやすいからなぁ、、、」という反応が返ってきます。
しかし、この状態は最初からそうだったわけでもなく、一朝一夕にそうなったわけでもありません。「自分たちで、会社を作っていける」という経験を、長年継続してきたからこその賜物です。
例えば、その会社には「時間休」というものがあります。以前は有給休暇は、1日単位か、もしくは半日単位で取得するものでしたが、
「2時間だけ休んで、役所の手続きをしてから出社したい」
「野球観戦に余裕をもっていくために、1時間だけ早く帰りたい」
といったニーズが社員の中にはありました。
そこで、社員が主体となって「時間休導入プロジェクト」が起こり、
- 法律的に問題ないのか?
- タイムカードの管理などはどうすればよいのか?
- 他社の事例で、問題が起きてしまったケースなどはないか?
などが調べられ、経営陣への提案としてまとめられました。
その提案は、メリット・デメリットもよく整理され、とてもまとまっていたため、経営陣も「この制度の導入なら問題ない」とGoサインを出すことができ、時間休制度が導入されました。このように「自分たちで会社のルールを作る」という経験をたくさんしてきているのです。
他にも、時差出勤制度やリモートワーク制度なども、現場主体でルールが作られてきました。人事評価制度についても「評価制度改善プロジェクトチーム」が作られ、社員が主体となって「会社にとって最善の評価制度」を考え、経営陣に提案する形で作られています。
このような経験値を積んでいると、愚痴や不満と言うものはあまり出てこなくなります。
出典:写真AC
愚痴や不満を減らすには社員に〇〇することが効果的
新入社員が「うちの会社のここおかしくないですか?」と先輩社員に言ったとしたら
「気になるなら、改善案を考えて提案したらいいんじゃない?ちゃんと考えた案なら、うちの経営陣なら聞いてくれるよ。却下されるようなら、考えが浅かったり狭かったりしてるんだよきっと」
というような反応がくることになります。
愚痴をいうスキがありません。
社員の愚痴や不満に悩まされる経営者や管理職の方も多いかと思いますが、多くの場合「経営者自身が、不満を解決してあげようとし過ぎている」ところがあります。不満が出てきたら「そうか。じゃーその問題の解決策を提案してね!期待しているよ!」と、社員にその解決の主体を担わせることが効果的です。
業務改善や、制度改革のために業務時間の一部を割いてよいということを明示しているとさらに効果的です。「会社をよりよくするためにすることも、仕事の一つです」ということをハッキリと伝えておくわけです。
また、社員から出てきた提案は、最初の頃は未熟なものも出てきたりします。その社員にとってはメリットだらけでも、他部署のことなどを考えると負担が生じるというようなこともあります。
そのようなときには「自分だけのメリットじゃなくて、全社にとってのメリットが大きい形にまとめてきてね」ということもフィードバックしてよいでしょう。そうすると、会社全体の業務の連携などについても学習するよい機会ともなります。
働きやすい職場は誰がつくるのか?
「自分たちが働きやすい職場は、自分たちで作る」
このことが文化として根付いてくると、会社から愚痴や不満と言ったものは非常に減ることになります。そういう組織では「うちの校則おかしいよね」「ほんとに。なんであんな古臭い校則なんだろ」というような思考パタンが出てこないようになります。
そういう思考パタンを持った社員も、入社してから思考パタンが変わってきます。「うちの会社のルール、あれおかしいよね」「ホントだね。ジャー今度改善提案一緒に考えてみよう」こういった思考パタンになるわけです。
このような思考パタンが共有された組織では、愚痴や不満といったものが減っていくのは容易に想像されるかと思います。
早速実践できる部分もあると思いますので、職場の愚痴や不満で悩んでいる方は是非今回の話を組織運営に活用していただけましたら幸いです。
今回の回答は以上となります。少しでもこの記事がお役に立てば幸いです。
[Vo80l. 2021/06/15配信号、執筆:石川英明]