Vol.15 人事評価と報酬は連動しているべきなのか
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今回のご相談内容
前回までのメルマガ(前編・後編)で「なぜ評価制度が必要なのか」というお話をお聞きしてきましたが、会社が期待する項目に沿って人事評価制度をつくった後、実際に、社員に自分の評価を上げようとやる気を持って仕事をしてもらうためには、やはり人事評価と昇給制度を連動させておく必要があるのでしょうか。
石川からのご回答
ご質問ありがとうございます。こちらはまさに、前回のメルマガでまた別の機会にとお伝えしていた内容ですね。それでは、今回は、「評価と報酬は連動させるべきなのかどうか?」という部分について解説したいと思います。
評価と報酬は連動させるべきなのか
このことについては、諸説あります。しかし、結論から言うと、私は評価と報酬は基本的に連動させるべきだと考えています。
このことが難しいのは、本来、報酬と連動するものは評価ではなく、業績だからです。利益が増えれば、報酬も増える。これはとてもシンプルなことです。
しかし、評価が高いからと言って利益が増えるとは限りません。
前回のサッカー選手の例えでいえば、ある選手がスタメンを獲れるほどに成長したとして、しかしチームが勝つとも限らないし、優勝して賞金をもらえるとも限らないのです。
「個人としては評価が高まったが、組織全体としては業績は伸びていない。」
こういうことは普通に起こりえることです。
では、業績が伸びていない中で、個人評価が高まった人への報酬の原資は、どこから捻出すればいいのでしょう?
これを実現するためには、大枠の労働分配率(利益に対する人件費の割合)を
- 「枠は多めに」
- 「実際に給与支払いは低めに」
するしかありません。
年収300万円の社員が評価が高く、5%賃金がアップすると、315万円になります。この15万円は「業績が伸びていなくても」支払うということになります。
連動させるときに起こること
・・・とここまで説明をしていくと、社員数によって経営者の方の反応が変わることが多いものです。
30名以上の社員数であれば「じゃーそうしておくか」という感じなりますが、10名未満の社員数であると「うーん、業績が伸びてないのに15万円給料が増えるのはきついなぁ。。。」という感じの方も多くなります。
後者の場合は「月々の固定給の昇給率(評価連動)は小さく、業績連動のインセンティブを大きく」することをよく提案しています。
つまり、評価が高くても月々の給与の昇給は1%程度にする。(月給20万円⇒20万2千円)インセンティブは、例えば会社の粗利が1000万円とき、原資として3割の300万円。頭割りで一人100万円。会社の粗利が1/10になれば、インセンティブも1/10の額になる、というような形です。
このように「1年間の業績に対する連動」を大きくすると、「会社の業績を上げなきゃしょうがない」という気持ちが強くなります。これは、プラスに働けば「みんなで会社の業績をあげていこう!」という意識にしていくことができるわけです。
しかし、一方で「自分が頑張っても、評価が上がっても給料が増えるわけじゃなくて、結局会社の業績次第かぁ」と、努力する気持ちをスポイルしてしまうリスクもあります。
結局、どのような制度を作ったとしても、どういう気持ちで社員が受け取るかということはどうしても残るわけです。この部分は、また別の機会に詳しくご紹介させていただきます。
今回のご質問に対する回答は以上となります。いかがだったでしょうか。
[Vol.15 2018/06/26配信号、執筆:石川英明]