Vol.122 外部から専門家として組織を支援するときによくあるお悩み
Contents
今回のご相談内容
今回は外部コンサルタントとして、企業組織を支援する仕事をもっと増やしていきたい方のご相談にお答えします。
- 「組織や人事領域の支援をしたいけど、なかなかそのニーズを持った経営者に出会えない」
- 「これまで社会保険労務士としての仕事しかしておらず、組織領域もやったことがない領域なので引き受けていいのか悩んでいる」
- 「研修講師をしていて、もっと幅を広げてみたいがいつもお願いされる領域を超えた提案ができない」
など、外部から企業組織を支援する立場でよくあるお悩みや、外部の専門家として組織開発に携わるときに忘れてはいけない観点などを解説します。
石川からのご回答
このHPの読者の方は、経営者の方や人事責任者の方などが多いですが、社労士の方や研修講師の方など、私と同業の方や似たようなお仕事をされている方も結構読んでくださっているようです。今回は、そういう方々を主な対象として、「外部から専門家として組織を支援する」ことについて書いてみたいと思います。
意外と「内部から組織を変えようとしているが、ヒントがあった」という内容になるかもしれませんので、楽しんで読んでいただければと思います。
社労士や同業の方でよくあるお悩み
組織や人事領域の支援をしたいけどなかなかそのニーズを持った経営者に出会えない
社労士の方などとお話をしていると、「人事コンサルや組織コンサル領域に業務範囲を広げていきたいけれど、そういうご依頼をいただけない」というお悩みを聞くことがちょこちょこあります。
正直なところ、私も「組織をよくしたい」という経営者になかなかお会いすることが出来ずに、自社のマーケティングや営業上、なかなか苦労してきた歴史があります。
でも、もう少し具体的になってきて
- 「採用で困っている」
- 「管理職陣にもっとしっかりやって欲しい」
- 「評価制度を変えたい」
など、そういうったことはニーズがあるなと思います。
なのでまずは、「採用支援してます」「管理職研修やってます」「評価制度構築をやってます」というような看板を掲げるといいのではないか、と思います。
やったことがない領域なのでできない / いつもお願いされる領域を超えた提案ができない
そういう仕事をしたいけど「しかし、やったことがないので・・・」と言われたこともあります。
やったことがない領域だからやれないと言っていたら永遠に領域拡大はできないわけなので、その場合は「経験者を採用する」とか「その領域をやっている会社を手伝わせてもらう」とか「無料で何社か支援して実績を作る」とか、そういうようにして領域を拡大していく必要があります。
「マナー研修の講師をやっていますが、本当はマナー以外にも相談に乗りたいのに、”今年もマナー研修をお願いします”で終わってしまいます」というようなお悩みを聞くこともあります。
これはすごく単純に
「なぜマナー研修を実施するのか?」
「マナー研修を実施した結果、どんなビジネス的成果が欲しいのか?」
ということをコミュニケーションすることで乗り越えていくことになります。
これは私も経験がありますが「なぜロジカルシンキング研修を実施するのか?」と担当者さんにお聞きしても「上が、ロジカルシンキング研修をやれって言ってるので・・・」で終わってしまうこともあります。
しかし、「ロジカルシンキング研修をやるのは、まず第一に会議のレベルを上げたいんですよね。基本的なロジカルシンキングが出来てなくて会議のレベルが低いんです。もちろん、会議だけじゃなくて、ビジネスの質を上げたいし、成果(売上・利益など)を出すためですね」と言われるケースもあります。
こうなってくると、色々と「本質的コンサルティングする」という余地が出てきます。
「会議の質を上げたいのなら、ロジカルシンキングだけじゃなくて、ファシリテーションも学習したほうがいいのでは?」とか「会議のレベルが低いのは、会社として心理的安全性が担保されていないからでは?」とか、「ビジネスの成果を上げるのに、ボトルネックになっているのはロジカルシンキングではないのでは?」とか、色々と話を展開したり、深堀りしたりすることができてきます。
こうして「組織コンサルティング」の領域について、お客さんと話をすることができるようになっていくものです。
外部コンサルタントとして組織を支援するときに特に大事にしたい観点は
組織開発の領域に入っていったときに、私がとても大事だと思っているのは「誰が発注者さんなのか?」という観点です。
例えば人事部長さんが「もっとよくしたい」と思ってご相談くださっているケースもあります。社長にご相談されているケースもあります。「ロジカルシンキング研修の実施を部長から指示された担当者」さんが、発注者さんのケースもあります。
どんなケースであれ、クライアント企業との【接点】はその人になります。その人との関係性が切れてしまったら、その企業(組織)を支援する機会は失われてしまいます。
だから「誰が発注者さんなのか?」ということは、とても大事な観点です。
そして、発注者のニーズと、組織の他のメンバーのニーズは違うことがほとんどです。
発注者である人事部長は「若手を教育したい」と思っていて、その会社の社長は「(教育なんていいから)とにかく売上を伸ばそう」と思っていて、若手社員たちは「社長のパワハラがどうにかならない」と悩んでいる、みたいことはしょっちゅうあります。
この組織状況全体を引き受けることが、組織開発的な仕事をするうえでまず最重要の前提です。
そして「発注者のニーズ」はその中でも重要で、そこをないがしろにすると当然ながら、その顧客企業との関係が切れてしまいます。
外部の人間が組織開発支援をしていくときに最も難しいポイントは
しかしだからと言って、発注者から見えているものだけを前提に動いていって「組織がよくなる」かというと、そうはいかないケースも多々あります。
例えば、社長が発注者で「社員の根性が足りない。社員の根性を鍛えてくれ。社員の根性が足りないから、売上が伸びないんだ」というオーダーをもらったとします。しかし、実際のその会社の状況としては「社長の根性論に辟易して離職する人が多く、業績が伸びていない」だったりします。
その時に「根性を鍛える研修」をやって、実際に売上が伸びればいいですが、益々離職率が悪化するとなれば、本当に組織がよくなったとか、成果を出せたとは言えないわけです。
こういう場合に、発注者との関係性を育みながらも、発注者の意向通りに進めるわけではない、ということをやっていかなければいけないことがあります。
これは外部の人間が、組織開発支援をしていくときに、最も難しいポイントの一つであろうと思います。
本当に組織を良くしていこうと思うと
本当に組織を良くしていこうと思うと、やるべきことは多々あります。
例えば、業務フローや業務の役割分担・組織図を整える必要があったり、評価制度を改善したほうがよかったり、管理職のコーチング力を高める必要があったり、社員の思考スキルを鍛えるのが必要だったりします。
その時に、何をどういう順番でやっていくとよいか?ということを考えることもとても大切な仕事です。全てを同時に遂行していくのは、ほとんどの場合お金的・時間的に無理があります。また「Aをクリアしてからじゃないと、Bの効果が出ない」といったこともあります。
こういったあたりのグランドデザインを自分自身で整理しつつ、「組織との接点」である発注者さんの意向とすり合わせながら、実際に組織に関わっていきます。
そうやって実際に組織に関わっていく(形式としては、ワークショップや、研修や、会議といった形でかかわっていきます)ことになりますが、その関わりの中で具体的な大切なことについてはまた別の機会にお伝えしていきたいと思います。
いかがだったでしょうか。いつも最後までご覧いただき、ありがとうございます。記事に対する感想や質問などもいつでもお待ちしております!
また、これまで組織をよりよくしていくご支援に実際に取り組んできて、「組織変革を上手く進めるツボ」や「組織変革が上手くいかない落とし穴」といったことが、かなり見えてきました。この体験から得られた知見を、体系的に論理として整理したものを、「組織をより良くしたい」と思っている方がと共有したいと思い、組織変革塾を不定期ですが開催しております。
組織変革塾は、組織開発の仕事をしている同業の方(組織開発コンサルタントの方)や組織開発の仕事をしていきたい隣接職種の方(コーチ、研修講師、社労士などの方)にもご参加いただけますので、よろしければまずは是非詳細ページをご覧いただけましたら幸いです。
[Vo122. 2024/02/05配信号、執筆:石川英明]