社員が自律自走するコツ Growth Mindset(グロースマインドセット)
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主体性がなく
自走しない部下たち・・・
出典:写真AC
命令したり、叱責したり、褒めたり、食事を奢ったり、アドバイスしたり・・・管理職や経営者というものはとかく忙しいものです。
しかも、親の心子知らずで、一生懸命部下を動かそうとして努力をしていることは、部下はちっとも感じてもいなさそうだったりする。毎日一生懸命部下の世話をしていても、結局、笛吹けども踊らずで、「ここに向かって頑張ろう!」と目標を掲げても、面倒くさそうな反応しか返ってこない。。。
このような状態を脱したいと思っている経営者の方は多いのではないでしょうか。
多くの企業が悪循環に陥る
この問題については、はじめに、大前提として日本の学校教育の影響があります。
現代の学校教育は、自主性を育むような形をほとんどとっていないと言っても過言ではありません。学校に行って「あなたの目標は?」と聞かれることがまずないのです。
またチームで助け合うということも学びません。テストは、一人一人が解かねばならず「チームで助け合って点数をあげる」といった体験をほとんどしません。
それから、実力差がある人達同士でどう付き合えばいいかなども分からないようになっています。もしチーム学習をしていれば「算数が得意な子は、算数が苦手な子を助け、国語が得意な子は、国語が苦手な子を助ける」といったことも自然と身につくかもしれませんが、そういったことも体験的学習ができないのが、現代のほとんどの教育環境なのです。
ですから「自分で目標を設定し」「仲間と助け合いながら目標を達成する」といったことは、社会人になるまで一度も身に着けていない人がほとんどなのです。
そのような状態で社会人になっていますから、例えば新卒採用をして、新入社員を迎え入れると「まったくもって基礎がない」となることは、むしろ普通のことなのです。
その状態で始まった際に、多くの会社では、さらに「悪癖を強化してしまう」アプローチで、教育をしていってしまいます。「自分なりに考えさせる」ことをしていると、ちっとも仕事が進まないので、上司の方が「具体的に指示・命令する」ということになるのです。
いえ、もう少し正確に言えば「自分なりに考えさせる」ように、上司たちも努力はしているのです。しかし、あまりに稚拙な意見しか上がってこないため「こりゃ、ダメだ」と思って、諦めてしまうのです。
そうすると、諦めて指示する→より部下が考えなくなる、育たない⇒より部下に対して諦めの気持ちが強くなる⇒仕方ないから更に細かく指示するの悪循環になっていきます。
これはスタンフォード大学のドゥエック教授のいうFixed Mindset=自分の能力は固定的で、できないものはできない(だから努力しない)を強化していってしまう構造です。「どうせできない」という考えが、上司の側にも部下の側にもどんどんと強化されていってしまうのです。
そして、部下は自分では考えずに「上司の言われたことだけをやる」ようになっていき、上司は「部下が考えないので、自分で考えないといけない」ように、どんどんとなっていくのです。
このような構造を続けていて、自走自律型の組織になるわけがありません。
どうやって
好循環の組織にしていくか
では、どのようにして自走自律型の組織にしていけばいいのでしょうか?
前述のドゥエック教授の研究によれば
Growth Mindset:
自分の能力は伸びるもので、今できないものでも今後できるようになっていく(だから自然と学習する)
Fixed Mindset:
自分の能力は固定的で、できないものはできない(だから努力しない)
という2つのMindset(心持ち・態度)があるそうです。
もちろん社員には前者のGrowth Mindsetであって欲しいものかと思います。
この2つのMindsetが強化されるポイントというのは、それぞれ
Growth Mindset 強化:
挑戦が奨励される、(失敗からも)学習が促される、(結果によらず)プロセスが称賛される
Fixed Mindset 強化:
成功が称賛される、失敗が咎められる
ということになります。
後者のFixed Mindset強化にあたる「成功が称賛され」「失敗が咎められる」というのは、当然のことのようにも思われるかもしれませんが、これは「結果でしか判断しませんよ」「努力のプロセスには価値がありませんよ」「前よりも成長したかどうかにも興味がありませんよ」ということを、言外に強くメッセージとして発信していることになるのです。
例えば、小学生の子供の話にたとえると、「テストで100点取ったら褒められる」「100点以外は親からすごく冷たくされる」ということが続くと、Fixed Mindsetが強くなっていくのです。
「理科は、前は50点だったのが今回70点になったのに、そんなことどうでもいいんだな。。。」「98点のテストだってすごく頑張ったのに、どうでもいいんだな。。。」「なんで2点足りないんだばっかり責められるなんて。。。」となっていきます。
こうなっていくと、「100点以外に価値はない」という価値観(Fixed Mindset)が強まり、下手をすると、100点を取れたテスト以外は、隠して親に見せないようになっていきます。
一方で、前者のGrowth Mindset強化にあたる「挑戦が奨励され」「(失敗からも)学習が促され」「(結果によらず)プロセスが称賛される」ようだと、どうでしょうか?
同じく、小学生の子供の例で考えてみると、「お、ちゃんと苦手な科目のテストも頑張って受けたんだな、偉いぞ」と挑戦が奨励され、「そうか、理科は70点だったのか。
でも、前回50点だったよな?20点上がったのか!すごいじゃないか」とプロセスが承認され、「それで、今回70点だったの、どうしたらもっと点数あがりそうだと思ってるんだ?」と学習を促されたら、どうでしょう?
「30点には価値がない、50点には価値がない」ではなく、そこを起点として「どうしたらもっと上がるか?」を一緒に考え続ける文化が、組織にあれば、それほど強いことはありません。
出典:写真AC
確かに仕事においては「30点のものはお客様にお出しできない」ということはあります。だから上司が「100点の品質に直してお客様にお出しする」とする場合はあるでしょう。
しかしその場合に「何でお前は30点しか出せないんだ!役立たず!」というコミュニケーションをすれば、部下のFixed Mindsetは強くなるばかりです。
しかし、「今回挑戦してくれて30点まで出してくれたのも素晴らしい。さて、次40点、50点にしていくにはどうしたらいいだろう?」といったコミュニケーションをすれば、部下のGrowth Mindsetは育まれていくのです。
そして、このMindset(姿勢・態度)が育まれていくことが、自走自律する組織にとってはとても重要なのです。
Grwoth Midsetが土台となっている組織では、人々は自然とPDCAを回して、仕事の質を高めていきます。自主的にです。まさにこれこそが自走自律している組織です。
こうなる前に、短期的思考から部下にダメ出ししたり、命令を強化したりするがために、いつまで経っても自走自律組織になっていかないのです。
逆に言えば、忍耐強くその土台を築いていけば、そのあとは、放っておいても自走自律で仕事が進んでいくようになります。