Vol.25 社員に自ら学び成長する人材になってほしい
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今回のご相談内容
社員に成長して欲しいと思いますが、社員自身は「成長したい」と思って頑張っているように見られない人間が多くいます。どうしたら自分からどんどん学んでいくような人材になってくれるのでしょうか。
口を酸っぱくして何度も学習の重要性を説いても、それで社員が急に勤勉になる・・・ということは残念ながらありませんでした。
石川からのご回答
経営者の方は「学びの成功体験」を積まれている方が多いなと思います。
例えば、一営業マンの時代に、自分なりに大きな目標に挑戦してみる。上手くいかなかったときに、本屋に行って「営業で成績を残す方法」という本を読んでみる。読んでみたことを実際に使ってみる。それで売上を伸ばしたことがある。
そういう成功体験があれば「学んでいくものだ」というのが、習慣として身についていることが多いと思います。
成長しようとしない社員
学校の勉強を嫌々やってきた人たち
これは、普通に多くの日本人が経験していることかと思いますが、「学校の勉強が面白くない」ということですね。楽しくない宿題、やる意味の分からない教科・・・・それを何年も何年も繰り返し続ける・・・
そんな風にして、学習や学び、成長といったことへの拒否感が染みついている人も多いと思います。
仕事へのロイヤリティの低さ
また、アルバイト感覚で仕事をしている人もたくさんいます。ここで言っているアルバイト感覚というのは「時給感覚」「短期的な損得感覚」で仕事をするということです。
アルバイトですから、仕事は大変よりも楽な方がいい。自分の貴重な時間を使って、時給ももらえない時間で「アルバイト時の仕事の質を向上させるために勉強する」なんてもってのほかです。損をしますから。
仕事に対するこういった損得勘定の感覚を持っている人も大勢います。
出典:写真AC
【勉強嫌い】×【仕事の損得勘定】によって「自分からは全く成長しようとしない社員」が生まれます。度合いは人によって差があるでしょうが、こういった人材は、日本の中でそれなりの割合で存在していると言っていいと思います。
このような人たちに、言葉だけで「勉強しなさい!」「成長が大事だ!」と言っても、これはなかなか変わってくれません。「勉強なんて楽しくないことはしたくない」「なんで、給料が増えるわけでもないのに勉強までしないといけないんだ」「業務時間外に勉強するなんてもってのほかだ」と思われておしまいです。
では、このような人材たちに勉強好き、成長好きになってもらうにはどうしたらよいでしょうか?
理屈での説明の面
まず「仕事」というのが、どういうものかについて、説明をしておくというのはあります。
アルバイトの仕事と、正社員の仕事は、違うものです。だから給与や待遇に違いがあるわけですが、その違いをちゃんと理解していない人材たちは普通にいます。
アルバイトの仕事
- 言われたことをやればOK
- 責任は基本的に指示を出す側にある
⇒「Do」だけしていればOK
正社員の仕事
- 何をすべきかを考えるのも仕事
- ゴール達成のための段取りを考えるのも仕事
- 業務の品質を改善していくのも仕事
- 改善に必要な学習をしていくのも仕事
- 連携やチームワークにも責任を持つのも仕事
⇒「Do」だけでなく「Think」「Plan」「Learn」といったことも仕事であるということ
こういった話を、例えば私は新人研修をやらせていただく際などに受講者にお伝えしていますが「仕事ってそうだったのか!」という反応をされる方が少なからずいます。
社員に成長の喜びを感じてもらう
成長、というのは人間の根源的な喜びの一つだと思います。趣味でもなんでも「成長したな」と実感すると、嬉しいものです。
英会話が好きな人であれば「あ、前よりもスラスラ会話できるようになってる!」と思えた時は嬉しいものでしょうし、ジョギングが好きな人であれば「あ、前より同じ距離をラクに走り切れるようになったな」と実感出来たら、その時は嬉しいものだと思います。
仕事においてもこういった「成長を実感する」という機会はとても大切です。「学べ!成長しろ!」という前に、本人が成長を実感できる機会を提供していくことが効果的です。
それはつまり「振り返りの時間を持つ」ということです。
半年に一度でも「半年前よりも少しでも上達したこと、できるようになったこと」などを振り返ります。それによって「成長する喜び」を感じる機会を増やすのです。
勝手に学びだす人材へ
成長する喜びを実感するようになると、人間は欲張りなもので「もっと成長の喜びを感じたい」と思うようになってきます。そうなったときに、仕事で必要となる領域を自ら見つけてきて、どんどんと学んでいくサイクルが回り始めます。
「お客さんと上手くしゃべりたいな。あ、プレゼンについて学んでみよう」「もっと段取り上手になりたいな。そうだ、段取りの本があったな」
こうなってくればもうしめたものですね。まさに「成長欲求の高い人材」になっているわけですから。
出典:写真AC
上司や、経営者が、この「どんどんと学んでいくサイクル」が回っていくことを効果的に支援する方法もあります。それを実践することでいち早く、成長欲求の高い人材へとシフトしていきます。
上司や経営者が、支援できることの一つは「褒める」ことです。
「前と比べて、●●が上達した」ということを観察し、フィードバックするのです。本人が自分で自分の成長の振り返りをすることも大切ですが、周囲からのこういったフィードバックも意欲を刺激します。
逆に、成長を願って「出来てないところをダメ出しする」という接し方ばかりしていると「楽しくなかった学校の勉強」を思い出してしまい、成長意欲を高めるどころか、下げてしまう可能性があります。
褒めることに加えてもう一つ効果的な支援は「問いかける」ことです。
「これはどうしたら上手くいくだろう?」「この案件のお客さんの●●さんは、どういう基準で考えているだろう?」などと、”問い”を出されると、人間はついついて考えだしてしまうものです。自分なりに考えてみることによって、人の成長は加速します。
他にも「後押しする」とか「失敗したときに、そこから学び取れるようにサポートする」といった支援も効果的です。
こういった手間ひまをかけて「勝手に学んでいってしまう自律人材」になっていってしまうと、あとは楽ちんです。そのような人材が増えていけば、会社のためにもなるでしょう。
[Vol.25 2020/02/18配信号、執筆:石川英明]