Vol.31 中小企業の新入社員・若手社員に求められる知識やスキル【番外編】
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今回のご相談内容
Co-ducation社では、中小企業の組織支援の一環として、新入社員や若手社員、中堅社員など階層別のビジネススキル研修も提供しているとお聞きしました。
人材育成計画を立てる際の参考にしたいので、一般的に各階層で求められる知識やスキルについて、ご紹介いただけないでしょうか。
新入社員~中堅社員向け基礎知識やスキル
ご質問ありがとうございます。
研修会社各社が出している内容と重複する部分も多いかと思いますが、この場を借りて、Co-ducation社が考える中小企業の新入社員や若手・中堅社員の方に求められるスキルや知識についてご紹介したいと思います。
【1】新入社員~若手社員編(入社1~3年目社員)
まず、高校や大学、大学院、専門学校などを卒業し、アルバイト以外に就労経験のない新人社員に、求められる基本スキルや知識を7つご紹介します。
1.ビジネスマナー
職種や業種によって違いは生じますが、以下は基本的に押さえておきたい内容です。
- 挨拶
- 名刺交換
- 席次(会議室やタクシーなど)
- 来客や訪問時の対応
- 電話応対
- 正しい言葉遣い
- 封筒や宛名の書き方
- メールの書き方(Ccなど) など
これに加えて、今の新社会人に新たに求められている知識・スキルは、「ITリテラシー」です。
複数の飲食店などで、アルバイトの店員が個人のSNSで不適切な動画・画像を流出させ、問題になりましたが、情報セキュリティに関する知識や最低限守らなければいけないルール、SNSなど情報発信ツールを使用する際の注意点などを新入社員に学んでもらうことは、現在の日本で、必要不可欠になっているといってもいいでしょう。「教わってないから知りませんでした」では済まされない問題に発展する可能性があります。
Pマークを取得している企業では必須である個人情報の基礎問題を学んでもらう以外にも、「サーバーとは?」「クラウドの仕組み」等ネットに関する基本的な知識はどの職種でも学んで損はありません。
2.ビジネスマインド
アルバイト以外に就労経験のない新人社員には、まず、プロ意識や顧客志向に対する視野を広げ、考えるチカラを高めてもらうことが重要です。
以下のような経営・会計に関する基礎知識は、全社員が学ぶ価値のある内容です。
- 企業活動の目的
- 「売上」「コスト」「利益」
- 会社の仕組み
- 市場の仕組み
- ステークホルダー(会社を取り巻く環境)など
- ビジネススキルを高める意味
営業などの職種についた場合は、実務の中で数字に対する感覚が養われていくケースもありますが、職種によってはなかなか学ぶ機会が得られない場合もあります。配属前のタイミングで、全員に1度学びの機会を提供できるといいでしょう。
経営・会計知識を高める重要性はこちらの記事でも解説していますので参考にしてください。
3.ビジネスコミュニケーション
ここでいうビジネスコミュニケーションは、「話す」「書く」などの伝える力と「聞く(訊く)」などの理解する力を指します。
- 「報告」「連絡」「相談」
- ビジネスメールの書き方
- 議事録の書き方 など
この領域は、例えば
- 会議の技術
- 交渉力
- プレゼンテーション力
- EQコミュニケーション
- ファシリテーション力 など
いくらでも高めていくことができますが、まだ実務経験の浅い新卒1年目社員が学んでおきたいのは「報連相」です。上司・先輩から指示をもらい、適切に報連相ができるようになること。
これらのスキルは、次に紹介する「論理的思考力」が下地になりますので、4と併せてトレーニングしていくことが重要です。
4.論理的思考力(ロジカルシンキング)
仮説思考やクリティカルシンキングなど「思考力」を養うキーワードは多々登場していますが、やはりビジネスにおいて、まずは基本の論理的思考力(ロジカルシンキング)を身につけておくことは重要です。
- MECE(漏れなくダブりなく)
- 因果関係
- 構造化 など
思考力を高めていくためには、単に知識をインプットして終わりではなく、考えて実践し、振り返るを繰り返し繰り返し取り組んでいくことが不可欠です。
研修で学んで終わりではなく、就業報告書に論理的思考で整理して書く欄を設けるなど実務の中で新入社員が実践していける工夫を取り入れることが大切になってきます。
5.タイムマネジメント
論理的思考力と同様に、新卒1年目から身につけていきたいスキルは、タイムマネジメント能力です。
そもそも仕事において、「やるべきこと」「やっておいたほうがいいこと」は無限にあります。しかも、競合などがいる中でこれだけやれば必ず結果が出るということもありません。その上で、効率的・効果的に成果を出すことや自分に求められている役割などを考えるチカラは、是非1年目から高めていきたいところです。
- 重要×緊急
- 1週間のスケジューリング
- 段取り力
- クリティカルパス
- 業務フロー など
6.PC作業スキル(Excel/PowerPoint)
新入社員が即戦力としてチカラを発揮しやすいのが、エクセルやパワーポイントなどのOfficeに関するスキルです。ショートカット機能を使いこなすだけでも、生産性を格段に上げることができます。
出典:写真AC
- 資料作成の目的
- ショートカット
- 基本的な関数
- xlsやpptでできること
- Windows版、Mac版の違い など
操作方法を覚えることも勿論ですが、仕事においてエクセルやパワーポイントを使う際は、個人で完結せずに、多くの場合、社内や取引先と共有することが前提となります。
「自分だけにしかわからない資料」「自分以外が編集できない資料」は、あまりよい資料とは言えません。何のための資料なのか、誰にとっても使いやすい工夫も考えながら機能を使えるようになっていくことが重要です。
7.目標設定・キャリアデザイン
1年後にどのような社員になっていたいかを描きます。
適切な目標設定によって、そこに向っている充実感が生まれ、上記で紹介してきたスキルアップのモチベーションに繋がったり、振り返りやフィードバックの際の意味が深まります。
- 自分の目標設定タイプ
- 人生の車輪
- キャリアデザイン
- シナリオプランニング など
評価制度がある場合は、それに沿ってキャリアデザインを考えます。
目標やキャリアプランは年初に1度書いて終わりではなく、1~6までのスキル向上と併せて、半年後や1年後などに定期的に振り返りと再設定を行っていくことが重要です。
【2】若手・中堅社員編(入社3年目以降の社員)
続いて、入社1年目から実務を経験して、仕事についてある程度慣れ始めた3年目以降の社員に求められるスキルや知識を5つ紹介します。
1.【1】で学んだ内容の再学習
実務を経験した上で、
- ビジネスマインド
- ビジネスコミュニケーション
- ロジカルシンキング
- タイムマネジメント など
を再学習します。
今までご支援させていただいてきた中で、この再学習の機会に対して「既に学んだことがあるものと同じことを学ぶ価値がわからなかった」という感想はほとんど聞いたことがありません。
「あの頃は何となくしか理解できていなかったのがわかるようになってきた」「実務を経験してきてこれらの重要性が身に染みた」「もう1度学ぶ機会があってよかった」という声を多くいただいています。
実際に仕事をやるようになってからしか、わからないことはどうしてもあります。まずは是非振り返りと再学習から始めてみてください。【1】で学んだ、ビジネスパーソンが共通で身につけたい基礎知識やスキルは、実務を経験した上で、もう1度学習する価値が充分にあります。
2.ビジネスコミュニケーション発展編
社員が実務もある程度回せるようになったら、
- 会議の技術
- 交渉力
- プレゼンテーション力
- EQコミュニケーション
- ファシリテーション力
- 対人力・共感力
- モチベーションマネジメント
- 部下育成
- チームビルディング力 など
場面ごとに求められる能力について学びの機会を提供することをお勧めします。
成長意欲の高い社員は自ら勉強して勝手にスキルアップしていくこともありますが、目の前の業務をこなすことで止まっている社員は、なかなかレベルアップできません。
社員の自発的な学習に委ねることもできますが、会社で学びの時間を提供してビジネススキルを向上する意味や価値を見つめ直す余裕を持たせてあげるのもいいでしょう。
出典:写真AC
3.論理的思考力(ロジカルシンキング)発展編
これまでに学び、鍛えてきたことに対して、さらに観点や変数を増やすために、発展的な内容のトレーニングの場を提供します。
- クリティカルシンキング
- ゼロベース思考
- 仮説思考
- 先読み思考
- リスクマネジメント
- 見ている変数 など
日々繰り返しトレーニングしていても、なかなか自分で、自分の思考の癖や漏れている観点などに気付くことは容易ではありません。
自分の視野が狭くなっているところ、足りていない観点などについて適切なフィードバックを受ける機会としても、意義深い時間となります。
4.次世代リーダー人材育成
スキル研修とは別に、10年後、20年後など将来的に経営を担う人材や階層を対象に、自社の事業や制度を検討する対話の時間を持つこともお勧めです。
- 10年後、20年後の事業の軸は?
- 10年後、20年後の社会情勢や市場の状況は?
- 10年後、20年後の組織の姿は?
- 自社にとって理想の組織体制とは?
- 自社にとって理想の評価制度とは?
など、次世代を担う未来の幹部候補たちに、中長期的な目線や経営全体を考えてもらう時間をつくります。
早い段階から会社の未来を考える機会を与えることで、次期幹部候補や後継者候補を育てる目的の他、幹部候補まではいかない場合でも、現場で今 エースとして活躍する中堅人材の視野が広がり、リーダーシップが高まることは、今後の管理職育成や部署の生産性向上などにポジティブな影響をもたらします。
5.業種・職種別スキルアップ研修
ここまでご紹介してきた以外ですと、会社によって、また業種や職種によって、求められる知識やスキル研修になります。
このあたりまで会社として学びの場を用意するのか、社員の自発的な学習に委ねるのかは各社の考え方や判断によります。
- 業務改善
- 企画力
- マーケティング戦略
- 提案力
- 問題解決力
- ソリューション営業力 など
いかがだったでしょうか。
社外講師に依頼した方がいい部類の研修
コンサル会社のセールストークのようになってしまいますが、上記の中には、社内でやるよりも、社外講師に依頼した方がいい部類の研修もあります。
例えば、ビジネスマインドの「会社の仕組み」は、残業や利益といったことについて本質的な話を上司や先輩社員が社員教育としてやろうとすると、「会社にとって都合のいいように話をしている感じがする・・・」「理解はできるけど、正論で丸め込まれた気分・・・」などという誤解を受けやすくなってしまいます。
「次世代リーダー人材育成」なども、適切に社員の視野を広げて検討してもらうためには、ファシリテーターや講師の存在が不可欠ですが、自社の上司や社長が場にいると、どうしてもこの時間の言論によって「評価されてしまう」という意識が生まれ、率直な意見や考えが出にくくなってしまいます。
中小企業の新人研修や階層別研修では、大手人材育成会社の公開講座や集合研修を活用される場合も多いかと思いますが、内製が向いている研修/向いていない研修を上手く使い分けていただけると幸いです。
今回ご紹介できなかった管理職や幹部の育成については、下記の記事などをご参照ください。
弊社の人材育成サービスの特徴
最後に弊社の人材育成サービスの特徴をご紹介します。
- いずれも座学だけでなくワーク中心の内容であること
- 対象社員3名~20名程度まで対応可能
- 1週間連続の集中講座も対応可能ですし、月1回半日を半年~1年間継続などの頻度で各テーマの研修を行い、学習⇒実践(宿題)⇒振り返り⇒FB⇒学習というサイクルを回す実践型の開催も可
- 基本はオフィスまたは研修会場にお伺いし行いますが、コロナウイルスを考慮したオンライン(リモート)での研修開催も可能 ※要相談
- 自社で研修を内製したい企業向けに、人事担当者の育成を支援することも可 (例:1年目は弊社で研修プログラムを提供し、2年目からはそれを参考に支援を受けながら内製化 ※人事業務が初心者の担当者でも問題ありません)
基本的には人材育成のみではなく、組織コンサルティング支援の一環としてご支援させていただいておりますが、コロナウイルスなどの影響により、「新入社員の時間を持て余してしまっている」 「オンラインで新人研修を実施したい」などでお困りの場合は、新人研修や若手研修一式セットでご支援させていただくことも可能です。
詳しくは、下記までご相談ください。
今回のメルマガは以上となります。いつも最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。
[Vol31 2020/03/31配信号、執筆:本田]