Vol.115 会社の成長スピードは何によって規定されるのか?

今回のご相談内容

中小企業の経営をしています。中期経営計画を考えながら、会社の成長スピードは何によって規定されるのか、何を基準に設定するといいのか、あらためて疑問を抱きました。

会社が成長した方がいいという想いは当然あるのですが、3年後に売上を倍にするのか、毎年110%増を目指すのか、目標を立てたところで会社がついてこれるのか……会社の成長スピードや目標を考える上で、押さえておきたい大事な観点は何があるでしょうか。

石川からのご回答

会社の成長スピードは何によって規定されるのか

これまで様々な会社に携わらせていただきました。社員10人程度の中小企業も、社員1万人以上の大企業も、スタートアップ企業も、伝統企業も、上場企業も、非上場企業も、様々な企業のご支援をさせていただきました。

基本的には、ほとんどの会社が「成長」をよしとして経営が行われていました。ただ、その【成長スピード】をどれくらいに設定するかは会社によってかなり違いがありました。

「毎年10%ずつ売上を増やしていこう」
「5年後までに10倍の売上・利益・社員数にするぞ」
「今の利益が維持できていたら、それ以上売上は成長する必要はない」
「競合他社に売上で負けるな」
「同業他社よりROEが悪いと株価が下がるから避けなければ」

などなど、本当に様々な【成長スピード】がありました。

最も大きい要素である「上場しているか否か」

まず、圧倒的に<上場しているか否か>という要素があります。

上場企業は投資家から資金を集められる代わりに、基本的には「成長し続ける」ことが求められます。非上場企業にはそれはありません。「今年も売上1億円。10年後も売上1億円」でも何の問題もないのです。

上場企業においては「資本効率がいいか」どうかが重要になってきます。

手元に100億円の現金を持っていて、それを1年で101億円に増やす企業と、105億円に増やす企業とでは後者の方が優秀だということになります。

仮に1年単位では赤字があったとしても、10年スパンでの計画で「100億円を10年かけて110億円にします」という会社と「100億円を10年かけて200億円にします」という会社であれば、やはり後者の方が優秀だということになります。

基本的に、株式市場においては後者の企業に資金が集まる(株価が高まる)ということになっています。上場企業においては、この資本効率(持っているリソースを使ってどれだけ増やせるか)ということがとても重要です。

そして同業他社があった場合に、この資本効率で比較することになります。

最も分かりやすいのは、例えばアサヒビールとキリンビールという同業種においては「どちらの方が資本効率が高いか?」は、経営陣も、株主もとても気にするところで、経営陣が気にするということは、社員に対しても「資本効率高く仕事せよ」という方針が出ることになります。

しかし、非上場企業においては全く違うことが起こります。

株式会社としてラーメン屋をやっているA店とB店があったときに、A店は「10年以内に店舗数を10倍にする!」という成長スピードを掲げ、B店は「10年後もお客さんが絶えないこのお店を継続する」という成長スピードを掲げることがあります。

<経営者自身の夢>という要素が、成長スピードを規定する大きな要素になります。

会社の成長スピードがあがらない要因

ところが。

私は非上場の、中小企業のご支援も多数させていただいていますが、<経営者自身の夢>という要素だけで、実際の成長スピードが決まるわけでは全くありません。それだけで決まるなら「売上を10倍にしたい!」と願った経営者の会社は、すべからず業績が10倍になる、ということです。

願わなければならないかもしれませんが、願ったとしても叶うとは限らないのが現実です。

ものすごく基本的なことを言いますが<市場力>は、企業の成長スピードに大いに影響があります。

需要が大きい、増えている、そして競合が少ないといった市場で、ビジネスをしている場合には、成長スピードは早くしやすくなります。既に飽和している成熟市場においては、それほど劇的な成長スピードを求めることは難しくなります。同じくビール市場などはまさに成熟市場ですが、「ビールの売上を1年で10倍にする」というようなことは、現実的な目標設定としては難しくなるでしょう。

自分たちがどんなマーケットでビジネスをしているのか。当たり前ですが、これは成長スピードに対して大きな影響を持ちます。

日本は多くの市場が成熟市場になっていますから「それならばビジネス余地の多い海外でビジネスをしよう」と考えるのも、ごく妥当です。

最後にもう一つ。

これは多くの会社をご支援してきて肌身で感じていることですが、<社員がコミットメントできている>かどうかということが、成長スピードに大きな影響があります。

例え経営者が「よし、3年で売上を10倍にするぞ!」と掲げていても、社員が「そんな数字無理だよ」「今年の110%達成だって大変だったのに、どうやって10倍なんかにするんだよ」と思っていたとしたら、これはなかなか、思い描いた成長スピードを実現することは難しくなります。

社員が目標にコミットできる環境をつくる重要性

ここでマネジメントとしては、二つの可能性があります。

一つは「現場が納得できる成長スピードに下方修正する」ということです。「3年で10倍、、、じゃなくて3年で3倍にしよう!」というような具合です。「それあれば頑張ればできそうです!」となることがあります。

もう一つは「3年で10倍を達成する戦略はこれなんだ!」と実現方法に説得力を持たせることです。そうすることで「それであれば頑張れば実現できそうです!」となるわけです。

いずれにせよ社員が「頑張ればできそうだ」と思える状態を作るのは、マネジメントにとってとても重要なことです。

「それは無理だよ」と思っている目標に対して、人間の創意工夫は生まれてきません。

その状態で「10倍を達成する方法を考えて実行せよ!それが社員の仕事だ!」と言ったところで、どうしても創意工夫は生まれてこないわけです。

けれど「確かに頑張ってやってみたらいけるかもしれない」という状態であれば、創意工夫が生まれてきます。そうすれば、社員一人一人のパフォーマンスを引き出すことが可能です。

そして望むような成長スピードを実現していくことができるのです。

<上場しているか否か>
<経営者自身の夢>
<市場力>
<社員のコミットメント>

この4つは、会社の「成長スピード」に大きく影響を与えるものだと考えられます。

4つの観点から「では、自社の成長スピードをどのように設定しようか?」と考えてみていただくと、マネジメントのしやすさが変わってくるかもしれません。

 
いつも最後までご覧いただき、ありがとうございます。記事に対する感想や質問などもいつでもお待ちしております!

 

[Vo115. 2023/05/09配信号、執筆:石川英明]