Vol.119 上下関係がある中で「心理的安全性」を確保するために上司/部下がそれぞれできること

今回のご相談内容

日本企業の多くは、基本的に上下関係がある前提であり、「上司と部下」「評価者と被評価者」という関係性があるものだと思うのですが、その中で心理的安全性をつくりだすために、どのようなことができるのでしょうか。

部下の立場からすると、意見があっても、それが上司の考えと違った場合、言い出しにくいというのは理解できます。しかし、部下の心理的安全性を確保しようとすると、上司が言いたいことを言えなくなってきてしまって、今度は上司の心理的安全性が脅かされるような気もしています。

意見の違いを健全に話し合える職場を目指すために、上司や部下それぞれの立場からどのようなことができるでしょうか。

石川からのご回答

上司も部下も心理的安全性が高いという状態の難しさ

会社組織には基本的に上下関係があります。上司と部下、評価者と被評価者、という関係性があります。

この時に、部下や被評価者の立場から、異論や反論を示すことには難しさがあるでしょう。

「上司がAと言っているのに、Bだと言ったら心象が悪くなるかもしれない」
「上司がAと言っているのに、Bだと言ったら評価が悪くなるかもしれない」
「上司がAと言っているのに、Bだと言ったら機嫌が悪くなるかもしれない」

そのように部下が思っていたら、Bという意見を出すことは難しいでしょう。それでは心理的安全性があるとは言えません。

しかしだからと言って、上司が「Aの方がよい」と思ってはいけない、とはなりません。もちろん、上司にも意見はあるはずですし、むしろあって然るべきです。上司ばかりが我慢をして職場の心理的安全性を確保する、というのも不健全です。

それでは、心理的安全性の高い職場ではどういう話し合いが行われているのでしょうか。

出典:ぱくたそ

上司の立場からできること

健全なディスカッションができている職場は、「多角的に検討する」ということに慣れています。

上司が部下に「Aがいいと思うんだけど、どう思う?」というように問いかけることはしません。そのようにコミュニケーションされてしまっては、部下は「・・・いいですね、、A。良いと思います。。」としか答えられません。

そうではなくて、会議の場を活用して「A案とB案のメリット・デメリットを検討したい」と提起します。そして、自分も部下も、A案とB案のメリットデメリットを付箋紙に書き出すようにします。

こういう【場】があれば、B案がよいと思っている部下は、安心してB案のメリットをかけますし、A案のデメリットも書けます。

その情報に触れることは、上司にとっても価値があるはずです。

その上で最終決定者として上司が「今回はAでいく」とすることはよいでしょう。その際に「BではなくAを採用した理由」をしっかりと説明できる、ということは上司として必要な能力であると言えます。

部下の立場からできること

上司が「Aがいいと思ってるんだけど、どう思う?」と言ってくるような場合、部下の方が努力、工夫する余地もあります。

そのようなときに「私はBの方が良いと思います!」とか、「私はAはやめた方がいいと思っています!」と言ってしまうと角が立つかと思いますので、どう思う?と聞かれたときに「メリット・デメリットを整理してみてお持ちします!」というようにしてみる、というのは一つの選択肢と言えます。

フラットに「A案B案それぞれのメリット・デメリット」という一枚紙の資料をささっと作って持っていけば、上司も冷静に「うーん、これ見ると、折衷案くらいがいいかもしれないな」というように判断しやすいでしょう。

誰でも、面と向かって否定されたり、非難されたりしたくないものです。「意見と人格は違う」と頭では考えていても、いざ自分の意見を否定されたら、感情が動いて、怒ったり、傷ついたり、悲しくなったりするものです。(怒る、というのは傷ついたときの防衛反応のひとつとも言えます)

会社では「私の案」が採用されるということではなく「会社にとっていい案」が採用されればいいわけなので、前述したような会議のやり方は本当にお勧めです。

こういった会議に慣れてきていると部下の方も「上司と違う意見を持ってもいいし、それを出してもいい」という心理的安全性を持つことができます。

さらに「最初に自分がA案がいいと思っていても、会議のプロセスを経ると、B案の方がいいとなったり、元々なかったC案が生まれてきたりする」という体験を重ねていくことが重要です。

そのような「健全な会議のプロセス」を積み重ねていると、会社の心理的安全性は確実に向上していきます。

 
いつも最後までご覧いただき、ありがとうございます。記事に対する感想や質問などもいつでもお待ちしております!

 

[Vo119. 2023/11/07配信号、執筆:石川英明]