Vol.123 部署間の連携が上手くいっていない

今回のご相談内容

  • 製造業で営業部・開発部・生産部の仲が悪い
  • 本社と○○支社の連携が上手くいっていない
  • 会社全体で考えたらもっといい動き方があるはずなのに、部署をまたいでの適切な議論ができていない
  • 社員が隣の部署に対して「それは○○部の仕事でしょ(自分には関係ない)」というスタンス
  • 部署を超えた課題解決やDXが進まない
  • 部署の担当範囲、役割分担が上手くいっていない

など、このような部署間の連携のお悩みはいろいろな会社でよく伺います。今回は「部署間の連携」について、よくある課題やどうやって連携・協力度合いを高めていけばいいのかについて解説します。

石川からのご回答

多くの会社は部署に分かれていて、担当も分かれています。この「分ける」ということによって分断が起こり、様々な問題が生じます。

もちろん「分ける」メリットもあるからこそ分けているのですが、分けることによる問題や副作用をよく考えていないでそのままにしているので、問題が生じてくるのです。

出典:写真AC

部署間の連携が悪いときによくある問題

部署間の連携が悪く、そもそも「隣の部署が何をやっているのかよく分かっていない」という状況はよく見かけます。当然ながら、そのような状態で「協力し合う」というのはなかなか難しいのです。

仕入れ⇒製造⇒販売⇒流通⇒フォロー

のような一連の流れですら「全体像が分かっていない」「隣の部署が何をやっているか分かっていない」ということは、しょっちゅう起こります。そのことによって「フロー全体の質を高める」ということができずに、部分最適に陥るのです。

事例:本社と中国支社の関係性が悪い

例えば、あるメーカーさんのご支援をしていたときの話です。そこは、中国から仕入れをしていたので、仕入れ担当の中国支社がありました。本社の人たちは「なんで中国支社は納期を守れないんだ」「また中国支社がトラブルを起こした」と、しょっちゅう中国支社を非難していました。

しかし、実際に中国支社に行って話を聞いてみると、中国支社の人たちは最大限以上の仕事をしているんですが、それでも現地の取引先から

「納期に間に合わない」
「色とサイズが間違って納入された」
「量が間違って納入された」
「突然、脈絡のない価格交渉が始まった」

など、毎日のようにトラブルの連続で、とても日本の本社からのオーダーに正確に応えることができない状況でした。そのたびに取引先と非常にタフな交渉をして、中国支社のメンバーは非常にストレスフルな日々を過ごしていました。

視察に行って本当のことを知った日本の社員たちは、「・・・・こんなに大変な思いをしてやってくれていたんだ。。。」と絶句しました。

それから「なんだよ、中国支社がまたかよ」という発言が激減し、「おい、だいぶ余裕持って前もって発注かけとかないと、また中国支社が大変だぞ」「今回は数字きっかりに納入されてきた。よく頑張ってくれたんだなぁ!」というように変わりました。日本も中国支社もストレスが減り、業務も以前よりもスムースにいくようになりました。

これは上手くいった事例ですが、「中国支社(隣の部署)の実態を知らない」というような状況は、会社組織の中でしょっちゅう起こります。

部署間で上手く連携するためには情報の流通を高めることが不可欠

部署間での情報の流通が足りていないときに、上記のような問題が起こるわけですが、

流通すべき情報

  • 何が大変なのか
  • どれくらい大変なのか

ということです。

もちろん他にも「サプライチェーン全体はどうつながっているのか?」「そもそも、サプライチェーン全体の目指すべき成果は何か?」というようなことも共通認識が育まれている必要がありますが、一旦それは置いておきます。

まず最低限「何が大変なのか」だけでも情報が流通している必要があります。

しかし、それだけでは不十分なことがほとんどです。

前述したメーカーさんでも「なんか、中国支社は、取引先が納期守らないとかで大変らしいよ」というようなレベルでは、日本のメンバーもみんな一度は耳にしたことがあったのです。だから「何が大変か⇒取引先が納期を守らない」ということは知っているのです。

ですが「どれくらい大変か」は腑に落ちていないので、「でも、そういうのの管理も含めてやってないんだから中国支社のやつらはサボってるんだろう」というような解釈が起こっていたわけです。そういう解釈であるから「中国支社を助ける動きをする」のではなく「(サボっている)中国支社を非難するだけ」となっていたわけです。

だから「どれくらい大変か」ということも流通している必要があります。

部署間で上手く連携できていないのは、○○と○○の共有ができていないから

健全で、全体が上手く連携できている組織は、情報の流通が上手くいっています。人間の体が、隅々まで神経が行き届いていて、滑らかに体を動かせるように、組織全体で神経が行き渡って、組織全体が滑らかに連携し合えるのです。

組織の神経を通って流通する必要があるものは二つあります。

・情報
・感情

情報だけでも十分に流通させられていない会社も多いので、まずは情報だけでも流通させられるようにするとよいでしょう。

隣の部署が何をしているのか、全社としてはどこに向かって、どう協力し合いながら進んでいこうとしているのか。そこはまず最低限でも共有されるようにしておくとよいでしょう。

感情も流通している必要があります。

会社組織において流通している必要性の高い感情は「やりがい」「喜び」「ストレス」といったところです。

もちろん、悲しみ、面白さ、怒りなども健全に流通しているとよいですが、まずはやりがいとストレスだけでも流通できるとよいでしょう。ストレスは、上述したような「中国支社の人の仕事のストレスが半端じゃない」というようなことを感じ取れるということです。

やりがいが流通していないケースも多々あります。

例えば製造部が一生懸命作ったものを、営業部が売ってきて、お客様から「ありがとう!これは素晴らしい製品ですよ!」と言われたときに、その話が営業部で止まっているというようなことはよくあります。全く止まっているまではいかなくても「あー、お客さん感謝してましたよ」くらいに薄められてしまうこともよくあります。

「ありがとう!これは素晴らしい製品ですよ!」の「!」に込めたお客さんの気持ちまでは、全然流通していない、というようなことです。

これだと「神経が切れて、上手く身体が動かない」というような状態に近くなってしまいます。

組織全体が、生命体のような有機的に連携が取れて動くためには、情報が適切に流通していることは必須なのです。

出典:写真AC

部署間の連携が適切で会社組織全体がスムーズに動く状態とは

会社組織がロボットのようなぎこちない動きしかできないのか、人体のように全体が自然と連携して滑らかな動きができるのか。

人間の体で言うと「随意筋」「不随意筋」があります。脳みそから指示を出して動かせる筋肉が随意筋ですが、不随意筋で動いている重要な器官はたくさんあります。心臓や胃などは不随意筋で動いています。「脳みそが人体の唯一のコントロールタワーだ」という認識は間違いと言えます。

「社長室から全ての命令を出す」というようなイメージでいると、会社は人体のように滑らかには動かないかもしれません。会社組織にも、重要な器官を不随意筋が動かしているといようなことがあるかもしれません。

また、人体は免疫系と神経系と内分泌系は「相互作用」をして働いています。このことも「脳みそが人体唯一のコントロールタワーだ」ということへの反証となります。中央の一極支配で、人体が成り立っているわけではないのです。適切な相互作用によって、素早い自己修復などが行われています。

適切な相互作用によって、現場ですぐ問題が解決できる。わざわざ経営陣が口をはさむ必要もない。

そういった組織状態は一つの理想形かもしれません。

そう考えると「有機的に連携する」ために、会社にある各部署、各担当が、神経によってつながっていることが、本当に大切だということになるでしょう。

 
いかがだったでしょうか。いつも最後までご覧いただき、ありがとうございます。記事に対する感想や質問などもいつでもお待ちしております!

また、これまで組織をよりよくしていくご支援に実際に取り組んできて、「組織変革を上手く進めるツボ」「組織変革が上手くいかない落とし穴」といったことが、かなり見えてきました。この体験から得られた知見を、体系的に論理として整理したものを、「組織をより良くしたい」と思っている方がと共有したいと思い、組織変革塾を不定期ですが開催しております。

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[Vo123. 2024/03/08配信号、執筆:石川英明]