Vol.111 社員がイキイキと創意工夫する会社であるために-内発的動機をビジネスに取り入れる難しさと解決策

今回のご相談内容

社員がイキイキと創意工夫する会社であるために、本質的に大切なこと、取り組むべきことは何でしょうか。

石川からのご回答

イキイキと創意工夫するというキーワードでまず最初に思い浮かぶ書籍は「モチベーション3.0」です。

少し初版から年月は経ちましたが、ダニエル・ピンクによる本当に名著だと思います。

基本的なところから復習すると、

モチベーション1.0⇒生理的動機。食べたい、寝たい、など。
モチベーション2.0⇒外発的動機づけ。やった結果、何かしらの報酬を得られるから頑張る。
モチベーション3.0⇒内発的動機。自分がしたいから、する。

ということになっています。

結論から言ってしまえば、人間の創造性、創意工夫と言ったものが最も発露するのはモチベーション3.0、つまり内発的動機による行為ということになります。ですから、今回のテーマの結論はもう見えています。それは「内発的動機を大切にする」。それに尽きるのです。

  

 

ビジネスで「内発的動機」を大切にしようとして失敗する例・よく起きる問題

・・・しかし、実際にこれを実践していくことは簡単ではないと思います。

それはそもそも、会社や、社会全体が「外発的動機付け」をとても普通のものとして組み込んでいること。がゆえに、多くのの個人が内発的動機と言われても困ってしまうこと、外発的動機付けにもかなりの意味や効果があること、個人の内発的動機を大切にしたときに「組織」としてどうしたらよいのかについてが大変難しいこと、、、などなどの理由からです。

実際に、私が組織コンサルタントとして20年以上仕事をしてきて実感していることは、会社において社員の内発的動機を(雑に)大切にしようとしていくと、以下のようなことがだいたい起こります。

   

企業でよく起きる問題

  1. 「本当はどうしたい?」と聞かれても、社員も全くピンことない。そんなことを聞かれるのは時間の無駄で早く終わって欲しい。
  2. 「本当はこうしたい」というものがあっても「こんな本音、この職場で話せるわけがない」と引っ込めてしまう。
  3. 「本当はこうしたい」という意見が、とても稚拙。経営観点からすると、身勝手すぎる、未熟すぎる意見が出てくる。
  4. 「本当はこうしたい」と社員に言われても、管理職も、経営陣も、その意見を全く持て余してしまう。(もしくは拒絶する)
  5. 「本当はこうしたい」と宣言しても、実際にそれをどう実現していいのか分からず途方に暮れる。
  6. 「本当はこうしたい」とそれぞれが宣言するが、自分勝手でバラバラで組織として収拾がつかない。

 

ですから「内発的動機を大切に、なんてよく分かってないコンサルタントの机上の空論だ」という意見はとてもよく分かります。

それであれば、モチベーション2.0のレベルで、しっかりと【管理】をした方が会社の業績が伸びるというのは間違いではないと思います。社長の方針を示し、方針への貢献度合いに応じてアメとムチをしっかりとして(信賞必罰でありモチベーション2.0)、方針に沿うように人間とその行動を管理していくのです。

  

しかも、ここで書いたモチベーション2.0にも、モチベーション2.1、2.2・・・2.7、2.8・・・といった違いは存在するのです。

What(何をするか)もHow(どうやるか)も全て管理するような2.0もあれば、Whatは示すが、Howは任せるといった2.5くらいのものもありますWhatについても多少なりとも対話が入り込んでくる・・・といったほとんど3.0に近いようなものもあります。

また、社員のタイプによっては、モチベーション2.0的なマネジメントを求めている、理想と思い込んでいる場合もあります。そういう場合には、いきなり3,0的なマネジメントをしていくと拒否反応が強く出過ぎて上手くいかなくなる期間が長くなってしまったりします。

  

解決策は手間暇をかけて丁寧にステップを踏んでいくこと

しかし、これらの問題はクリアできます。丁寧に手間暇をかけていけば、99%はクリアしていけます。

多くの会社が「手間暇をかけてこの問題をクリアしていく」を選ばないため、社員の内発的動機を高めることを諦めてしまいますが、反対にこれをしっかりと行っていけば、中長期的にものすごい競争力になるのです。なぜなら「社員がイキイキと創意工夫する」のが当たり前(モチベーション3.0)の会社ほど、競争力の高い会社はないからです。

  

大切なことは、現状から丁寧にステップを踏んでいくことです。

そうすれば

「社員が、言われなくても自ずから、イキイキと新しいことを考えてチャレンジする」
「社員が、言われなくても部署の壁なんてまるでないように協力しながらプロジェクトを進めていく」
「稚拙だったり身勝手だったりする意見ではなく、ちゃんと会社の成長や全体性を考えての意見であり、それに基づいてチャレンジする」

そういったことが日常的に起こる会社に、なります。

  

次月以降、一つ一つの要素の詳細について書いていきたいと思います。

  

参考

▼「モチベーション3.0」についての詳細はこちらでも解説

 
いつも最後までご覧いただき、ありがとうございます。

 

[Vo111. 2023/01/10配信号、執筆:石川英明]