Vol.40 コロナは自分の責任ではないのに、賞与が減るのは納得いきませんと社員が言い出した

今回のご相談内容

「コロナは自分の責任ではないのに、そのせいで去年よりボーナスが減るのは納得いきません」と言ってる社員がいるようです。

正直、ため息がでますが、、、社長として説明をするとしたら、どんな説明をしたらよいでしょうか?

        

石川からのご回答

この数ヶ月資金繰りなどに奔走している経営者の方も多いと思いますが、そのような状況下で、社員から「コロナは自分の責任ではないのに、そのせいで去年よりボーナスが減るのは納得いきません」「コロナのせいで賞与がもらえないのはおかしい!」、こんな声が聞こえてきたら……ため息をつきたくなってしまう気持ちはとてもわかります。
   

しかし、その社員の方の仰るように、コロナは、その社員の方の責任ではありません。では誰の責任でしょうか?

隣の部署の責任なのか、社長の責任なのか。
業界全体が下がっているときに社長の責任だと言えるでしょうか?
国の責任でしょうか?発生源かもしれない中国の責任でしょうか?

こう考えていくと「誰の責任なのか?」というのはとても難しい問題になってきます。
    

出典:写真AC

     

社員に「原資がない」という感覚があるか

「自分の責任でないのに、自分の収入が減るのは納得できない」という気持ちは、それはそれで分かります。

しかし”商売”をやっている人間の感覚からすると「自分の責任でないところで、売上が増えたり減ったりすることは普通にある」ものだったりします。

自分の責任じゃないのに、自分の収入を減らすな、というのは「固定給をもらい続ける約束をしている」という感覚から生じてきます。原資がなければ、払いようもないのですが。ない袖は振れませんから。
   

この「原資がない」という感覚を、社員が持てているか、持てていないかということがまず1つポイントです。

「原資はどこかにあるはずだ」と思っていたら、ちゃんと払ってくれと思うでしょう。

一生懸命働いて、会社の売上はあるはずで、どこかにお金はあるはずで、そのあるはずのお金は自分がもらう権利があるはずのものだ・・・と思っていたら「賞与が減るのは納得できません」という話も出てくるでしょう。

 粗利と労働分配率、内部留保について情報開示し、その観点での社員教育をしている会社の社員であれば、

「そりゃまぁ、今年は原資がないよな」

「去年までの内部留保を取り崩して月々の給与を払う感じになってるよね」

とおおよそ感覚的に思うでしょう。
   

粗利と労働分配率、内部留保といったことについて情報開示もなく、教育もしていない会社の社員であれば、

「会社のどこかにお金はあるはずだ」

「こういう苦しいときに、自分たちにしわ寄せをしてくる会社なんだ」

というように解釈する人も多発するかもしれません。

   

 情報の開示度と社員の教育

情報の開示度によって生じる違い

情報開示にはレベルがあって、「役員報酬も含めて全公開」「一人一人の社員の個別の年収も全公開」といったレベルもあれば「粗利と、労働分配率の考え方は開示されている」「誰がいくらもらっているかまでは分からない」といったレベルもあります。

「自分の年収と、会社のおおよその売上は分かるがあとは全然分からない」といったレベルもあります。
    

どの情報開示レベルが「いい」とは簡単には言えませんが、情報開示レベルによって起こることは変わってきます。

一人一人の年収まで丸裸、というようなことになれば「あの人の方が収入が多いのか。。。」といった気持ちも当然動くでしょうし、そういった気持ちへのケアも必要度が高まる面もあるでしょう。

一方で、情報開示がほとんどされていないとなれば、疑心暗鬼を生み、「きっと社長がうまい汁を吸っているに違いない」というようなネガティブな感情が生じるリスクも出てきます。

自社はどのような塩梅の情報開示をするのか。そのレベルの情報開示だと、どのような対応が適切なのか。そういったことを、個別に考えていくことが重要です。
   

参考記事:星野リゾート代表が「倒産確率30%」と社内に発信する理由 ※ダイヤモンドオンラインの有料会員限定記事です

diamond.jp
   

社員の教育不足によって生じる違い

情報開示をしていても、全く見ていないとか、分かっていない社員がいるということはざらにあります。自社の財務諸表を見ていない上場企業の社員はたくさんいますし、自国の財務省のデータを見ていない国民だってたくさんいます。

情報の開示度だけでなく、社員の教育度、といったことも考えなければいけません。

「労働分配率」「内部留保の重要性」といったことについて、一度も聞いたことも考えたこともない社員に、情報だけ開示しても、その情報の意味を読み取れないからです。
   

     

情報の開示度が低いところに教育だけ行えば、やぶへびのようになってしまうこともあるでしょうが、情報の開示度が高いのに教育が足りなければ、宝の持ち腐れのようになることもあります。
   

     

社員からこのような台詞が出てきてしまう理由

「コロナは自分の責任ではないのに、そのせいで去年より賞与が減るのは納得いきません。」

このような台詞が社員から出てくるということは、社員への教育が足りないか、社員への情報開示度が足りないか、その両方かです。
    

こういった教育は「業務に沿ったスキル教育」のような、売上に直接貢献する教育ではありませんが、社員の意識や態度、集中力、生産性・・・といったことには大きく関わる教育になります。

これを義務教育のなかで学んでおいてくれればいいのかもしれませんが、少なくとも今の日本の現状はそうはなっていません。だとすると、社会人になってから、本人が自発的に学ぶか、会社が教育するか、しかないのです。

私は、人のモチベーションやチームワーク、会社への帰属意識といった領域を専門として仕事をさせていただいていますが、やればやるほど「会社の会計の仕組み」などを社員の方へ教育させていただく機会も増えていきます。

お金の仕組みへの理解と、モチベーションやチームワークといったことは切っても切り離せない関係にあるからです。
   

弊社が中小企業の新入社員から中堅社員向けに、提案することの多いビジネススキルや知識は下記の記事もご参考になりましたら幸いです。

    

今回のご質問に対する回答は以上となります。

いつも最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。

    

[Vol.40 2020/06/30配信号、執筆:石川英明]