Vol.101 会社と社員の関係は不平等条約?

今回のご相談内容

正社員として人を雇用する難しさについて、ご相談したいです。

社員数5名前後で数年やってきて、そこそこ事業も安定してきたので、このあたりでしっかりと採用を行い、もう少し社内に人を増やそうと考えていますが、経営者として、正社員で新しく人を雇うのはなかなか覚悟がいるように感じます。

社員数を増やして会社をどんどん大きくしている経営者仲間もいて、正社員採用をおこなっているのは社会貢献として確かに素晴らしいとは思いますが、雇用機会の創出は、企業が、経営者が負わなければいけないもののでしょうか?どうしてこういう気持ちになってしまうのでしょう。

石川からのご回答

会社と社員の関係は不平等条約!?

ある経営者さんとお話ししてて、冒頭のキーワードが強烈で、それについて書きたくなりました。

「会社と社員の関係って不平等条約みたいですよね」
   

仰りたいところは、正直すぐ分かりました。

簡単に言ってしまうと、「会社は社員を簡単にはクビにできないけど、社員は会社を簡単にクビにできる(転職できる)」ということです。

これについて同業の方とお話しして出てきたのは「ホントに、これは、会社と社員の関係性を歪にしてますよね。。。」ということでした。
   

経営者は社員を雇うと、「永遠に固定給を払い続ける義務」を負うところがあります。もちろん実際には永遠ではなく、定年退職までということですが、感覚をより的確に表現しているのは「永遠に固定給を払い続ける」という感じかなと思います。

人件費は、ものすごい固定費です。

オフィスなどは売却するとか退去するとかできますが、人は解雇することができません。「できません」は法律的に厳密な表現ではありませんが、これも感覚的には「できない」というのが妥当な表現だと思います。

この前提があったときに経営者からすれば、「こっちは永遠に給料を払い続ける覚悟をしたんだから、ちゃんとこっちの言うことを聞き続けろよ」という感覚を強く持つことは、致し方ないことかなと思います。
   

特に中小企業、その中でも特にオーナー企業においては、その感覚は非常に強いのではないかなと思います。発想として「正社員なんか雇わない。全部業務委託や契約社員でいい。」ということになることも全然不思議ではありません。
   

日本社会における「正社員」と企業が負う責任

「正社員」というのは日本社会において重要な地位であったりすると思いますが、これは「固定給が払われ続ける地位である」ということの意味合いが大きいのかなと思います。

だから例えば、住宅ローンなどの審査も通りやすい、給料が払われ続けるのだから、未払いも起こりにくいということがあるだろうと思います。
   

しかしこの「収入があり続ける」ということの責任を、果たして企業が主体的に負うべきなのかどうか、個人的には疑問に思っています。

例えば起業した場合には、「本当に成功するかどうかなんてわからない」というのが実際のところです。もちろん成功を信じて起業するわけですが、固定給を払い続けられるという約束がホントにできるかと言うとできないはずです。

商品にはプロダクトライフサイクルがあり、事業にもライフサイクルはあります。寿命を迎えた商品は市場から消えていき、寿命を迎えた事業もまた市場から消えていくことはとても自然なことです。
  

しかし「会社」は、雇用という責任を負っているため「寿命を迎えた」ということができないのです。

よく富士フィルムとコダックの対比がされますが、フィルム事業というものが寿命を終えたときに、コダック社は倒産し、富士フィルム社は生き残りました。果たしてこれは、社会として本当に「いいこと」なのか、これはとても難しい問題だなと思っています。

コダック社が倒産したら、社員たちは一旦失業者になりますが、より勢いのある、人材を必要としている産業に雇用は吸収されていくということがあります。

そう考えると「寿命を迎えた事業(会社)は終了してよい」とも、私は思います。
    

「会社は、雇用を守り続けなければならない」という前提が強すぎると

逆に「会社は、雇用を守り続けなければならない」という前提が強すぎると、これはどうしても内部留保を厚めにして、人件費、つまり給与は抑えめにせざるを得ません。

「倒産することも可能である」であれば、支払われていた給料が「先々絶対に倒産しないために」内部留保として溜まり続けていくというようなこともありえます。

この企業の内部留保に当たる部分は、行政が担って、企業はもっと身軽に事業に専念できる環境を作るということも選択肢としては全然アリだと思っています。
   

現状は「会社は社員を守れ!」と行政が指導する傾向が強いと思いますが、「市民の生活は行政が守るから、企業はどんどん攻めていけ!」という行政と民間企業の関係性もありえるはずです。

転職が当たり前になった時代において、この不平等条約はより不平等感が強くなっている感覚はあります。「折角採用して時間とお金をかけて育てたのに、成長したら転職されてしまった」ということに、管理職や経営者が深い徒労感を感じるのは当然のことでしょう。
     

社会面・行政面について、いち企業として何かを仕掛けることは難しいですが、今日の日本の社会情勢を踏まえた会社と個人の新しい関係性の在りかたについては、これからも引き続き発信していけたらと思います。

  

いつも最後までご覧いただき、ありがとうございます。

  

[Vo101. 2021/11/30配信号、執筆:石川英明]