Vol.108 関係性の質を高めて本質的な組織力を高めるための打ち手とよくある質問
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今回のご相談内容
今回は、経営者や役員、人事担当の方からまず最初に、よくご質問いただく、
- 心理的安全性や関係性の質を高めるって、つまり何をするの?
- Co-ducationさんは要はどういうことをしてくれるんですか?
というところと、
打ち手に対するよくある懸念点
- みんなで話し合ってもまとまらないのでは?
- 本当に売上や利益につながるの?
- 社員の主体性に任せたら低い目標設定になってしまうのではないか?
などついて、お答えしたいと思います。
石川からのご回答
関係性の質の低い組織と関係性の質の高い組織の違いは?
はじめに、そもそも関係性(エンゲージメント)の低い組織と関係性(エンゲージメント)の高い組織とでは、どのような違いがみられるのかをご紹介します。
関係性(エンゲージメント)の低い組織
一部の人間が決め、実行させる
やらせる側とやらされる側の分断が生じ、「やらされ感」で仕事をすることが基本に。
情報を持っている人と持っていない人がいる
情報を持っていない人は責任を持って判断することができず、責任感をもって仕事ができない。
画一的なマネジメント
個々人の状況、個性、目標などを無視しているため、一人一人のスキルやモチベーションが生かされない。
関係性(エンゲージメント)の高い組織
みんなで考え合意し、実行する
事業目標や人事制度なども議論する機会があることで、腹落ちして納得して、主体的に動く。
情報の透明性が高い
判断に必要な情報を各自が持っているため、社員も責任感を持って判断することができる。
多様性を生かしたマネジメント
個々人の状況、個性、目標などが尊重され、エンゲージメントが高く、パフォーマンスも高い。
主にこのような違いがあるかと思います。
関係性の質(エンゲージメント)を高める代表的な打ち手
今回は代表的な5つをご紹介します。
- 社員の経営リテラシーを高める
- 会社のビジョンや事業目標を全社員で検討する
- 評価制度などについて全社員で検討する
- 部署間の連携について当事者同士で対話する
- 社員1人1人のビジョンや目標、Strength(強み)などを共有する
1.社員の経営リテラシーを高める
売上・利益と人件費の関係性。内部留保と雇用の安定性の関係性。
定量的評価と定性定期評価のメリットとデメリット。
業務の効率性と品質の追求の必要性。
多くの社員が、こういった基本的な理解が不足していることがほとんどです。これらを高めていくことが組織の民主化の土台となります。
経営リテラシーの領域は内製でやると、「社長・上司が会社にとって都合がいいように話している」と受け取られてしまうリスクもあるため、私たちのような外部の人間がやる方が、メリットが大きい部分でもあります。
2.会社のビジョンや事業目標を全社員で検討する
実際に、例えば会社を5年後にどんな状態にしたいか?
どんな売上・利益で、社員数はどれくらいで、平均給与はどれくらいで、どんな社風で、どんなワークスタイルで、どんな人事制度だとよいか?
といったことを自分たちで考えて作っていきます。
この実践によって、驚くほど目標へのコミットメントが深くなります。
誰かの作った目標を一方的に共有される(指示される)というケースと、目標を検討するプロセスに全社員が関わるというプロセスを丁寧につくったケースとでは、所謂「ビジョン浸透度」のスムーズさがまったく異なります。
「社員の主体性に任せたら、低い目標設定にしかならないのではないか?」という疑問については後半でご紹介しますので、是非ご覧ください。
3.評価制度などについて全社員で検討する
評価制度についても自分たちで検討します。
「どんな観点で評価すべきか?」「どのような運用プロセスであるべきか?」など、評価制度策定に必要な知識についても学習します。
結果得られるのは素晴らしい人事制度ではなく「評価制度はとても難しい」「完璧な評価制度はない」という実感値です。この実感値が、評価制度や会社、上司への不満を大幅に軽減します。
4.部署間の連携について当事者同士で対話する
業務上どうしても短期的に利害が対立したり、連携が難しくなる業務がありますが、その点について経営者が役割分担を仕切り直したり、連携の重要性を説いたりするのではなく、自分たちで「全体にとって最善は何か?」を考えて、ルールやアクションに落とし込んでいきます。
その際に、業務の全体観の学習も深めます。
とても協力的になり、課題が生じても自分たちで話し合って解決していく習慣が生まれます。
5.社員1人1人のビジョンや目標、Strength(強み)などを共有する
一人一人が「どんな会社にしたいか?」「どんなビジネスパーソンになりたいか?」「どんな成果を生み出したいか?」などを考えます。また、一人一人のStrength(強み)などを共有します。
これらに取り組む時間をしっかりと確保することで、「言われたからやる」「仕事だからやる」ではなく、「自分のビジョン実現のために頑張る」という姿勢が養われます。
会社組織は常に進化し続けるものであり、人材の入れ替わりなどもあったりする中で、これらの施策は、1度やったら終わりではなく「繰り返しアップデートし続ける」ことも重要だと考えています。
打ち手に対するよくある懸念点
次に打ち手に対するよくある疑問・懸念点についてもご紹介していきたいと思います。
- みんなで話し合ってもまとまらないのではないか?
- 社員の主体性に任せたら低い目標設定にしかならないのではないか?
- 当事者同士で話し合っても喧嘩になるだけではないか?
- 社員自身のビジョンや目標を考えたら、転職してしまうのではないか?
- 本当に売上・利益につながるのか?
1.みんなで話し合ってもまとまらないのではないか?
これについてはプロのファシリテーターが支援することで、納得度の高い合意を形成することができます。
ファシリテーターはコンテンツ(合意内容)ではなく、プロセス(話し合い方)をサポートします。ボトムアップだけでなく、最終的なトップダウンとのさじ加減も重要となります。
2.社員の主体性に任せたら低い目標設定にしかならないのではないか?
経営リテラシーを高める施策も同時に行っていないと、このリスクは大きくなります。
売上、利益、給与、内部留保などの関係性など経営リテラシーをしっかり理解していると、ほとんどの社員は真っ当な目標を設定しますし、挑戦的な目標を設定する社員も大勢現れます。
3.当事者同士で話し合っても喧嘩になるだけではないか?
喧嘩というレベルになってしまうのは全体性の理解の不足が根本的な原因である場合がほとんどです。
システムシンキングや、バランススコアカードなど、全体性の理解を深めるツールを利用しながら話し合うと、喧嘩というレベルにならず、生産的な話し合いが可能となります。
4.社員自身のビジョンや目標を考えたら、転職してしまうのではないか?
このリスクは一定割合存在します。「本当にやりたいこと」がみつかって、転職や独立をするというケースはゼロではありません。
しかし、多くの企業をご支援してきてわかったのは、意外なほどむしろ自社へのエンゲージメントが高まることの方が多いです。
自社できることの可能性を考え、その可能性に向かって主体的に努力する姿勢が増えます。
5.本当に売上・利益につながるのか?
「関係性の質の向上」「心理的安全性を高める」「エンゲージメント向上」といった施策が短期的に売上向上に必ずつながるわけではありません。どちらかと言うとコストダウン(採用コスト減、残業代減など)の方が先に財務インパクトが出てきやすくなります。
中長期的に見ると売上向上にもつながってきます。
社員の主体性が、日々の試行錯誤を生み出し、新商品・サービスを生み出したり、顧客満足度を高め売上・利益を向上させたりします。
いかがだったでしょうか。
私たちも、中小企業を中心に多くの企業をご支援させていただく中で、見えてきたようなところも多くあります。
まさに今回の記事でご紹介したようなことを、ひとつひとつ実践していき、ご支援開始から約10年間、ほぼ増収、黒字の会社があります。ぜひ下記のご支援事例も、組織づくりの参考にしていただけましたら幸いです。
今回の質問に対する回答は以上となります。
いつも最後までご覧いただき、ありがとうございます。
[Vo108. 2022/02/01配信号、執筆:石川英明]