Vol.132 採用難の時代に いい人材を採用できる会社と採用できない会社の違い

今回のご相談内容

「人手は足りないけど、採用が難しい」「全然新卒が採れない」「優秀な人材がいない」「そもそも応募しても人がこない」など、どこの会社でも採用が厳しい状況をお聞きします。

この採用難の時代において、中小企業が、ちゃんといい人材を確保するためには何が必要なのでしょうか。いい人材を採用できる会社と採用できない会社はどのような違いがあるのでしょうか。

石川からのご回答

採用難の時代に中小企業はどうするべきか

人手不足、採用難の時代です。どこの会社でも「採用が難しい」「人手が足りない」という話を聞きます。中長期的にはAIの発達によって人手不足が解消されていくという面はあるでしょうが、まだ数年は、採用難が続くでしょう。

採用難、売り手市場になっている理由は明確で、労働力の供給力が低いからです。2015年に22歳を迎える人口は120万人ほどでしたが、2026年以降は110万人を割り込んでいきます。1割近く、若者の人口は減ってきています。

人気の高い企業ほど優秀な人材を採用できると考えたときに、

No.1企業→Aクラス人材10人
No.2企業→Bクラス人材10人
No.3企業→Cクラス人材10人

と以前は採用できていました。

これがシンプルに「新卒の求職者が減る」ことによって

No.1企業→Aクラス人材8人+Bクラス人材2人
No.2企業→Bクラス人材8人+Cクラス人材2人
No.3企業→Cクラス人材8人+Dクラス人材2人

という変化が起こっています。優秀な人材を確保することが、構造的にできなくなっています。そして売り手市場であることから「企業が人材を選ぶ」のではなく「人材から企業が選ばれる」必要性が高くなっています。

この根本的な変化をまず、認識しているかどうかということが重要な点です。

「以前と違って、まず優秀な人材は市場にいない」
「採用プロセスで人材を選ぶのではなく、我々が人材から選ばなれなければならない」

特に中小企業においては、求人倍率は8倍から9倍とも言われています(リクルートワークスの調査)。人材から選ばれる企業にならなければ、採用難を乗り越えることは大変難しいのです。

採用力と同等以上に重要な「定着力」

折角、採用媒体に多額の投資をしたり、人材紹介業にフィーを払ったりして獲得した人材がいても、離職者が多くてはまさに「ざるで水をすくう」状態になってしまいます。採用に5000万円をかけて10人採用するのと、離職防止に1000万円をかけて10人の離職を防ぐのであれば、当然後者の方が費用対効果は高いということになります。

組織にはある程度の新陳代謝はあった方がよいですから、離職率0%が必ずしも良いわけではありませんが、採用を考える前に、離職防止について考えた方が良い企業は多々あります。

そして本質的な離職防止の営みは、そのまま採用ブランディングの強化につながります。

例えばですが、残業も多く、サービス残業になっている実態があり、離職理由が「ちょっと残業が多すぎで、しんどいです・・・」というようなことが多い会社があったとします。その会社が、そもそも残業が発生しにくいように改善活動を行い、サービス残業はなくなるようにしっかりと働いた分には残業代を支払う、というようにしていったとします。

そうなれば、当然、今いる社員たちの満足度は向上しますし、その上、その活動そのものが最高の「採用ブランディング」になります。

「当社では、この3年で平均残業時間を30時間から10時間に減らしました。これは社員の”残業が多すぎる”といった声から始まった、全社的な取り組みの成果です」

このようなことを打ち出せるのであれば、それは明確に求職者に対する訴求になります。

当然と言えば当然ですが、社員の定着率が高まり、社員がより活躍できるような環境を整えるアクションは、全て採用ブランディングの強化につながります。

求職者の「会社選び」の理由の種類

求職者は、どんな視点で会社を選ぶのでしょうか?

・有名な企業に入りたい
・家の近く、通勤が楽な会社に入りたい
・給料の高い会社に入りたい
・ワークライフバランスの取れる(残業の少ない)会社に入りたい
・自分の望む職種で働ける会社に入りたい

などなど、こういった視点で会社選びをすることが実際には多いだろうと思われます。

求職者の多くは「できる限り待遇のいい会社で働きたい」と思っていて、待遇のいい、条件のいい会社を探しています。給与、福利厚生、残業の少なさ、有給取得率の高さ、といったことです。そうすると、「求職者に選ばれる会社」になるためにはこれらの条件を整えることが重要だということになります。

しかし、困ったことに求職者に選ばれるために、採用ブランディングの強化として給与、福利厚生、残業の少なさ、有給取得率の高さ、といったことを整えて訴求していくと「待遇面重視の人材」が多く入ってくることになります。こういう人材は、入社してきた後に「仕事を頑張ろう!」となるよりも、「会社に不満なところがあったら、文句を言う」といった傾向が強くあります。

採用側としては、入社後は当然、仕事に対して主体的、前向きに頑張って欲しいものです。必要条件と十分条件で考えると、「他の会社に負けない待遇・条件面を整えておく」ということは必要条件ですが、いい人材を採用するためにはそれだけでは十分ではありません。

「この会社に入って頑張りたい」と思ってもらえるような訴求をこそしていく必要があります。「会社のビジョン、方向性に共感する。そのビジョンに向かって一緒に仕事をしたい」「行動指針を読んだが、仕事の価値観が近い。この会社で働きたいと思った」と、本音で思っているような人材と出会いたいところです。

その為には、会社としてしっかりとビジョンや方向性を打ち出していくことが欠かせません。

採用は長期戦

採用は「今、人手が足りないからとにかく人が欲しい」というような形で行うべきではありません。「今、人手が足りないからとにかく人が欲しい」という状態なのであれば、業務委託やアルバイトなどの活用を考えるべきでしょう。

正社員を採用するというのは長期戦です。一度、採用をすれば社員自身が辞めると言わない限り、終身雇用となるのが日本では基本です。10年、20年というつきあいになります。

一番恐ろしいのは「こんな人は採用すべきじゃなかった・・・」と思うような人を「今、人が足りないから」と採用してしまうことです。そんな人と、10年、20年と一緒に働かなければならないのは大変な負荷になります。「合わない人を採用するくらいなら、欠員のままの方がまし」とはよく言ったものです。

採用活動は常に継続し、「よい人材と出会えたらなら採用する」「よい人材と出会えなければ無理に採用しない」ということを粛々と続けて行くことが理想の採用活動です。

もちろん「今年は事業が急拡大するから、一気に20人採用したい」というようなこともあるでしょう。その時には採用活動の総量を増やして、例えば「100人と面接をする」というようにしていく必要はあります。

しかしそれでも「やっぱり採用したいと思える人材は15人だった」というときには、無理に20人を採用するべきではありません。「やっぱり採らなきゃよかった」という5人が及ぼすマイナスのインパクトは計り知れません。

Amazonのジェフベゾスはこう語ったと言われます。

I’d rather interview 50 people and not hire anyone than hire the wrong person.

間違った人を採用するくらいなら、50人と面接して誰も採用しないほうがいい

本当にどんな人材に入ってきて欲しいのか?どうやって見抜くか?

採用活動をするうえで、根本的に重要なことはこれになります。

「本当にどんな人材に入ってきて欲しいのか?」

採用活動をしていると、ついスペックの話に終始しがちです。「営業経験があって」「30代前半の、IT業界経験があって」などの話ばかりになってしまうのです。

しかし、実際にどんな人材に入ってきて欲しいかを掘り下げていくと「自分の頭でしっかり考えられる、地頭のいい人」とか「ストレスがかかるような場面で、逃げずに誠実にふるまえる人」とか、そういうような要素が必ず出てきます。そういった人材をこそ採用すべきです。「営業経験がある」といったことはこれまた必要条件で、これだけでは必要十分になりません。

もしかしたら、営業経験がなくても「自分の頭でしっかり考えられる、地頭のいい人」で「ストレスがかかるような場面で、逃げずに誠実にふるまえる人」であれば、これから営業の仕事をしていけるかもしれません。

社内の評価制度をしっかりと整えていて、評価項目がしっかりと定義されているような会社であれば、その評価項目はほぼほぼそのまま採用基準になるはずです。もし、評価項目と採用基準が整合性が取れていないようであれば、まずその整合性を整えるべきです。現場が評価する人材と、人事部が採用しようとしている人材がズレている、みたいなことになっているかもしれません。

「営業経験がある」とか「IT業界経験がある」といったことは履歴書を見れば判定できます。

しかし「自分の頭でしっかり考えられる、地頭のいい人」「ストレスがかかるような場面で、逃げずに誠実にふるまえる人」といったことは、面接などで判定することが難しいのは確かです。

でも、難しいからといって、この要素を無視して採用プロセスを進めても、やはり採りたい人材を採ることはできません。

ケース面接のように、ケースを問いかけてその場での思考力をよく観察するといった技法を用いたり、ストレスのかかった場面について深掘りをして質問をし、どんな判断パターンを持っているのかよく分析してみたりといった努力が必要でしょう。

面接で深掘りをする質問力によっても、人材の本質を見抜ける度合はかなり変わってきます。

まとめ いい人材を採用できるかどうかは…

いい人材を採用できるかどうかは

・そもそも採用は長期戦と認識する
・求職者の必要条件(給与・福利厚生など)を満たすように会社の状況を整える
・いい人材を惹きつけられるように十分条件(理念・ビジョンなど)も整える
・最後に、いい人材を見抜く力を高める

この四点にかかっています。

 

[Vo132. 2026/01/27配信号、執筆:石川英明]