在宅勤務をより良いものにするために

コロナウイルスによる影響で、2020年4月現在、オフィス勤務から在宅勤務(リモートワーク、テレワーク)にシフトしている人は多くなったのではないでしょうか。

今回は在宅勤務をより良いものにするために、「在宅勤務になったときによく出てくる悩み」と「在宅勤務によって失われるもの」について、簡単にではありますが、解説していきたいと思います。
   

在宅勤務になったときによく出てくる悩み

仕事とプライベートのスイッチ(オンとオフ)

オフィス勤務のときには「通勤時間」は、仕事モードへのスイッチを入れる機能も果たしていました。そのようなスイッチなしに「パソコンの前に座れば、自然とスイッチが入る」という人もいるかもしれませんが、家から一歩も出ずに仕事モードに切り替えることに対して、なかなか慣れない人も多いかと思います。

  • 外出の予定がなくても着替える
  • コーヒーを飲んだら仕事を始めるなどルーティーンをつくる
  • 仕事をするための専用スペースをつくる

など、SNSなどでさまざまな工夫が発信されていますが、企業や部署として、オンラインで朝礼的なものをやるというのも一つの手です。

朝、zoomでつながって、部署またはチームのメンバーと「おはようございます」ということを共有するだけでも、スイッチの機能をかなり代替してくれるかと思います。
   

出典:写真AC

    

誘惑に対処する必要性

学生時代のテスト勉強の時と同じですが(苦笑)、自宅で仕事をするとなると、TVがあったり、漫画があったり、さまざまな誘惑が待ち構えています。「図書館で勉強する」がごとく「カフェで仕事をする」と、場所をコントロールできればいいですが、この状況下においては、それもままなりません。
   

先に欲求を満たしてしまう

一つの考え方としては、「先に欲求を満たしてしまう」があります。例えば、漫画が読みたければ、仕事を始める前の1時間、漫画を読んでしまう。通勤時間がそれに代わったの考えたら、それほどおかしなことではありません。
   

一秒集中法

もう一つの考え方として「一秒集中法」というものもあります。これはとにかく「手を動かし始めてしまう」ということです。人間のやる気は「やる気を出すと、手が動く」というよりも「手を動かすと、やる気が出てくる」というところがある、という考え方に基づくものです。

誘惑は確かにあるわけですが、とにかく10文字でもメールの返信を打ち始める・・・そんな風に対処することもできます。
   

監視し合う

もう一つの考え方としては「監視し合う」ということもありえます。zoomなどで映像をつなぎっぱなしにして業務を行う、ということです。「見られている」ということが「漫画読んじゃえ」ということへの抑止力になります。

オフィス勤務の場合は、この「監視による抑止力」はある程度自然に働いていると考えていいと思います。

しかしこの「監視し合う」は、方法として採用することはずばりお勧めしません。詳細については別途書きますが、「監視」は、それ以前の努力をしつくして、それでも「集中」を実現できなかった場合の、最後の手段くらいの位置づけで考えるべきだろうと思います。
   

運動不足

通勤時の「徒歩」がなくなると、生活の中からほとんど運動がなくなってしまう、という人も多いのではないでしょうか。

お勧めしたいのは、運動プログラムを会社で共有し、同じ時間帯にオンラインでつないでみんなでやるということです。

「一緒に動く」というのはとてもよいチームビルディングにもなります。朝一に5分体操をする、お昼休憩開けに10分ストレッチをする・・・といったようなことを業務時間中に組み込むのです。

短期的に見れば「業務時間を奪う」ことになりますが、長期的に見ればメンバーの健康を維持・向上し、生産性を高める方向に作用してくれると思います。
   

在宅勤務によって失われてしまうもの

在宅勤務やリモートワークを基本としてやっていたけれど、弊害が大きくやめた、という先行事例もあります。

参考記事

IBMが遠隔勤務制度をやめた理由(Forbes JAPAN,2017/10/22)
https://forbesjapan.com/articles/detail/18195

在宅勤務“先進国”の米国、すでにリモワ廃止&オフィス勤務義務化へ回帰という現実(Business Journal ,2020/4/18)
https://biz-journal.jp/2020/04/post_152614.html
   

出典:写真AC

   

在宅勤務が中心になることによって失われてしまうものがいくつかあります。「失われるものは何か?」を明確にすることで、必要な対策を考えていくこともできるかと思います。
   

【1】雑談がしにくくなる

一つは雑談です。この”雑談”というものは、おそらくとても奥深いものです。幅もあると思います。本当に仕事と全く関係がなく「そんな雑談時間は無駄でしかない」というものもあるかもしれませんが、そう識別することはとても難しいものです。
   

例えば、社員Aさんと、社員Bさんが「昨日見たドラマの話を3分ほど雑談した」というもの。この3分は、見方によっては「全くの無駄」かもしれません。

しかし見方によっては「AさんとBさんの関係性を高める大切なコミュニケーション」かもしれません、「新しい事業アイデアに結び付く貴重な情報交換」かもしれません。

でも、全くの無駄かもしれません(笑)

この「かもしれない」という、量子力学的に「重ね合わせ」的な不確定な時間があるということは、経営においてとても大切な時間です。 

特に、自社の事業において、創造性、アイデア、そういったものが重要だという場合には、この「かもしれない」という不確定時間が、組織内にあることは決定的に重要です。

これからおそらく「在宅勤務における雑談をいかに創出するか」というテクノロジーはどんどんと開発されていくと思います。
    

ひとまず簡便な方法ですが「チャット」を活用するというのは一つあると思います。LINEなのか、Slackなのか、Chatworkなのか、facebook Messengerなのかなど、ツールは状況によると思いますが、「このタイムラインには、気軽に雑談を書いていいし、無視してもいい」といった”空間”があるだけで、多少は「リアルでの雑談」を補完できるかと思います。

チーム単位、部署単位、会社単位で「雑談部屋」をそれぞれ用意するのも、アリだと思います。

雑談については「これは雑談しやすかった」「これは雑談じゃなくて、真面目な議論になってしまった」「流しにくかった、断りにくかった」などのノウハウを、自組織なりに蓄積していくことを強くお勧めします。

高い雑談力を獲得した組織ほど、withコロナで、在宅勤務を余儀なくされている世界では、競争力を獲得していくといっても過言ではないように思います。
 

【2】 雰囲気が感じ取れなくなる

在宅勤務によって失われるものは「雑談」だけではもちろんありません。

オフィス勤務をしていれば「あ、なんかあっちのチーム、今ピリピリしているな」みたいなことを感じ取ることができます。

おそらくですが、日本人は、その辺の能力はとても高いだろうと思います。アメリカ型の「個々人の仕事スペースが、パーティションで区切られている」みたいなオフィスになっていないところも、その辺の特性の現れかなと思います。
   

    

この「雰囲気が感じられる」ということも、リアルなオフィスの重要な機能の一つで、それによって組織の健全性や運営のスムースさ向上に寄与していたはずです。

予測ですが、この「雰囲気が感じられる」が失われることによって、「あれ?今まで見たいに仕事が進まないな」ということを実感するケースが多発してくると思います。

この「あっちのチームが、今ピリピリしている」という情報は、情報量としてはとても豊かで、そして繊細なものです。これを、オンライン上で再現するとなると、かなり難しいものがあります。

けれど、難しいからといって「全く諦める」では、組織のスムースさは確実に下がっていくと思われます。だから、ちょっと対策を考えてみましょう。
    

一つはグループウェアなどで「他部署のやり取り量も見える」みたいな機能を持たせることだと思います。中身まで見なくていい、追わなくていいのですが、「うわ、普段やりとりが100の隣の部署が、今日は500とかやり取りしてるよ。。。なんかトラブルでもあったのかな」みたいなことを”感じられる”ようにするわけです。
   

もう一つは、ちゃんとオンライン対面で「ぴりぴりしている」といった類の情報を、言語的にも共有する努力をすることです。

例えば、朝礼の時間にチェックインを丁寧に行います。

「今日は、やらないといけない業務がかなりある。終わるかどうか不安に感じています。今日は、うちの部署へ急な依頼などはできるだけ避けて欲しいと思っています」

こんなことを、ちゃんと共有するわけです。

オフィス勤務の中でも「チェックイン」などを常にやってきた組織からするとそれをオンラインに移植するだけのことではあるのですが、オフィス勤務時代に「チェックイン」などをしていなかった組織は、オンラインで仕事をすることによってチェックインなどを導入する必要性に迫られてくるだろうと思います。

ここで言っている「チェックイン」の詳細は、また別記事でご紹介できたら幸いです。
   

「在宅勤務になったときによく出てくる悩み」と「在宅勤務によって失われるもの」について、いかがだったでしょうか。

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