Vol.126 【転職当たり前×売り手市場時代】にマネジメント側が考えなくてはいけないこと

今回のご相談内容

特に若手社員が多いですが、条件が合わないなとおもったらすぐに転職してしまうケースが多くなったのを実感しています。条件的によいと思えば続けてはくれますが、例えば、事業が少し厳しくなったときに、ここは大事なタイミングだから一緒に頑張ろうという感じはなく、会社が危ないと聞いたらすぐにでも離職していってしまいそうな人が多い印象です。

これからの経営マネージメントでは、この転職当たり前×売り手市場の状況で、どのようなことを考え、取り組んでいく必要があるのでしょうか。

石川からのご回答

何か違うなと思ったらすぐに離職してしまう社員

転職は当たり前、売り手市場の現在、新卒採用のやり方や若手社員を中心とした離職対策について、多くの企業で難しさを感じている話をよく聞きます。

最近、比喩として会社を船に例えさせていただくことがよくあります。

船=会社
船員=社員

です。

単純な話として「船に穴が開いて水漏れをしていたらどうするか?」ということが考えられます。もし「船と一蓮托生だ」と思っているような船員であれば、水漏れを防ぐべく、一生懸命考えて動き出すことでしょう。

しかし「漕ぐことで雇われたのであって、水漏れを防ぐのは自分の仕事じゃない」とか、「穴を塞ぐ仕事までやるのなら、別途報酬はちゃんともらえるのか?」とか、「こんな危なっかしい船は早く降りよう」と転職活動を始める船員もいることでしょう。

1.乗り心地がよく快適な船であり続ける

転職が当たり前になった今の時代においては、船の方が優秀な漕ぎ手をつなぎとめておくためには、船自体が魅力である必要があります。

冷暖房完備、もちろん水漏れなどない、漕ぐ時間は決まっていて、残業はない。三食素晴らしい料理が出てくる。そんな豪華客船のようで「だからこの船で仕事をする」というようにしていくことです。

2.この船の一員として頑張りたいという愛着を持ってもらう

もう一つは「ボロ船だけど、一緒に乗りたい」と思えるような何かがあるということです。

目指している目的地にワクワクする、一緒に乗っている仲間が素晴らしい、ボロ船を一緒に修理しながらやっていくような旅が好き・・・そういうようなときには、豪華客船でなくても船員がいてくれることでしょう。

日本企業でジョブ型雇用は上手くいくのか

最近、日本企業が「ジョブ型雇用」を進めていこうとしている流れに触れることがあります。素直に「それはとても難しいだろうな」と思うところがあります。

日本は、明らかにジョブ型ではなく、対比されるメンバーシップ型でやってきた会社が大半です。

そして徒弟制度の雰囲気も強くあります。

「新人が入ってきた。先輩が教えるのは当たり前」
「隣の部署が困っている。自分たちも助けるのは当たり前」

これは、メンバーシップ型、徒弟型の常識です。

ジョブ型を本当に進めるのであれば

「新人が入ってきた。ノウハウを盗まれように気をつけよう」
「隣の部署が困っている。それは隣の部署の問題だ」

というような方向に進む、ということです。

そんな会社にしたいと、本当に思っている日本の経営者がどれくらいいるのかはなはだ疑問なのです。

もし、ジョブ型を推進していくのであれば、新卒一括採用も無理になっていくでしょうし、まだなんとなく流れていく「新卒なんだから即戦力じゃなくてOK」「入社したからにはきっとうちの会社でずっと働いてくれる」と言うことも無理になっていくはずです。

そうすると、今の学校制度すら変化していく必要があるようになってくる気がしますが、それを本当に日本が進められるのかというと、個人的には疑問に思っています。

どういう組織でやっていくのか経営マネジメント層は考える必要がある

ただ、被雇用者、労働者、社員の方からするともはや「どれだけ条件のいい会社で働くか」というのは、当たり前になってきている気がします。「育ててもらった恩義があるから、この会社で一生頑張る」みたいな感覚を持っている20代社員はほとんどいないのじゃないでしょうか。

だから、どんどん辞めて、どんどん転職していくのです。それは確実にそうなってきていると思います。

だとすると、雇う側も、それに対応しなければいけない。「どうせ、そのうちやめるだろう」ということを前提とした、給与制度、組織体制などにしていかなければいけなくなってきます。

ざっくりと「欧米は個人主義」「日本は共同体主義」のように分類されることがありますが、本当に個人主義に振っていって「後輩に仕事は教えない」「隣の部署が困っていても助けない」というような世界に日本がなっていくのかどうか。

「ボロ船だけど、一緒に頑張っていく」という感じは、日本型、メンバーシップ型というようなことになると思います。

アメリカのベンチャー企業は全然違うと思います。

そもそもベンチャー企業でもかなり初期から「設備の整った船」であることも多いと思いますし、ストックオプションに対して一人一人がリスクテイクしてプロとして関わっている、という感じが強いように思います。

自分たちの船が、船員をつなぎとめていく、エンゲージメントしていくというときに、自分たちはどういう要素でつなぎとめているのか、いくのか、そのことはよく考える必要があるのだろうと思います。

株式会社コーデュケーション社では、この自分たちはどういう組織でやっていくのかを、自分たちで探究し、自分たちで実現していくためのご支援をしています。組織の体質を見直したい方、会社と社員のエンゲージメントを高めたい方など、もし弊社の取り組みにご興味がございましたら、まずはお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。

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[Vo126. 2024/07/16配信号、執筆:石川英明]