Vol.55 社員の創造性やWell-Being(幸福・働きがい)を高めるために【目標設定編】

今回のご相談内容

これからの時代、社員が創造性を発揮できていない企業は、どんどんと競争力が減衰していくことになるように考えています。人間の創造性が発揮されていないものは、AIやロボットなどにどんどん代替されていってしまうからです。

同時に「社会的な労働力不足」という観点から考えると、社員のWell-Being(QOL・幸福度・満足感・働きがいなど)が低いと、人不足に陥っていくことにもなるように考えます。同じような仕事、同じような給与水準だとしたら、働きがいや充実度といったものの水準が高い企業へ、人が惹かれていくので、採用が上手くいかず、離職につながる要因となることは容易に想像できます。

企業が生き残っていくためには、社員の創造性や「働きがい」「well-being」といった幸福度を高めるような経営マネジメントが不可欠であると考えますが、いったいどのように高めたらよいのでしょうか?

        

石川からのご回答

創造性やWell-Being(幸福・働きがい)といったもの高めるのには、共通する要素が多いと考えています。重要な要素としては以下が挙げられます。


透明性

生成された目標

対話とガイドライン

個性とセルフマネジメント

アジャイル

前回は透明性について書きましたが、今回は「生成された目標」についてお伝えしたいと思います。
   

ノルマによる管理は創造性を減衰させる

目標、というものは非常に重要なものです。自分が「達成したい!」と思う目標が設定されたときに、その目標は人を動かす大きな力となります。

「オリンピックに出場したい!」「●●大学に合格したい!」「課長に昇格したい!」などなど、目標の内容がどういうものであれ、本人の内発的な想いから設定された目標というのは、強力です。

一方で、どれほど社会的に立派なものや、具体的でイメージしやすいものであっても、本人がその目標を達成したいとはそれほど思っていない・・・というような目標は、どちらかというと「ノルマ」と呼ぶのが適切というようなことになってくるかと思います。
   

多くの企業のマネジメントにおいて「ノルマを課す」「ノルマをどれほどこなせたかで評価の高い低いをつけ、報酬に差をつける」という方式をとってきました。

しかし、「モチベーション3.0」(ダニエル・ピンク)などですでに描かれているように、この方式は、人間の創造性を引き出すどころか、減衰させてしまいます。
   

参考:組織開発用語辞典「外的動機付けと内的動機付け」


「飴と鞭で管理されている」という状態自体が、労働者のWell-Beingを損ねてしまう側面もあります。
  

しかし一方で「もし一人一人が、自分勝手に目標設定をしたら、組織全体として向かいたいところに向かっていけるのか」ということが懸念点として出てくるでしょう。

甲子園に出場する、という組織としての目標が固まっているから、その組織目標に対して個々人がどう動くべきかを考えていけるし、それによって組織全体として動いていける、そのような考え方もあるかと思います。
   

野球部に入った部員に「どんな目標を設定したいか?」と本当に自由に聞いたとしたら、「プロ野球ののドラフトにかかる選手になりたい」「甲子園にとにかく出たい」「部活にくるのは週1回で、ちょっと汗を流せればいい」「注目されて、女の子にもてたい」などなど、本当に色々な、バラバラなものが出てくるかもしれません。

確かにそれでは「チームとして共有する、共通の目標の設定」というのは難しいかもしれません。

けれど、個々人、一人ひとりからすれば「内発的に、本音で設定した目標」に対してが一番コミットできますし、それを達成するためには?と試行錯誤する、そういう創造性も発揮されていくことになります。
   

出典:写真AC

     

本音で設定した目標で働く社員を増やすのに重要なのは○○

ここで一つ重要となる発想は「採用」です。

例えば「うちの野球部は、甲子園優勝を目指してます」「そのために野球に打ち込む、という人たちを求めています」ということを初めからうたっていれば、そもそも入部してくる人たちも、そういう目標設定や価値観の人たちが入ってくることになり「組織としての目標と、個人としての目標がズレる」ということが起こりにくくなります。

これは重要な観点であろうと思います。
   

「うちの野球サークルは、上手い下手関係なく、社会人が週1回試合を楽しむためのサークルです」などとなっていれば、それに引きつけらる人たちが集まってくることになるでしょう。

もし「プロを目指す人も、ただちょっと野球をかじってみたい人も、みんなが一緒になって野球を楽しめる野球部です」みたいに言っていたとしたら、その野球部のマネジメントは、かなり難しいと言わざるを得ません。
  

ベンチャー企業の創業期であれ、大企業の中興期であれ「私たちはどのような集団なのか?」を明確にしていけば、個人と組織のミスマッチといったものは大幅に防いでで行けることになるでしょう。

その際に「うちの組織は、目標はトップダウン。ノルマを課して、ノルマの達成度に対して飴と鞭で人を管理するタイプの会社です」とハッキリと示せば、飴と鞭でハッキリと管理をして欲しいという人材が集まってくることになるでしょう。

「うちの組織は、目標は「働く人の幸福度アップに貢献する」こと。そのためにどうしたらいいか?といったことは一人一人が自分で考えて、行動していくタイプの会社です」とハッキリと示せば、自分なりに考えて動きたいタイプの人材が集まってくることになるでしょう。
   

ですから、ある程度は「私たち組織は、何を目標とする、どういうタイプの組織なのか」ということを定義づけていくことは重要と言っていいと思います。それによって「個々人の内発的な目標を聞いたら、バラバラ過ぎて、どうにも収拾がつかなくなった」という事態を防ぐことができます。
    

内発的な「組織としての共通目標」の設定の仕方とは?

一人ひとりの創造性やWell-Beingが高いという意味では、目標は内発的なものの方が確実によいことになります。

トップダウン的にノルマを課し、ノルマの遂行度合いを測って、飴と鞭を与える、ということで得られる状態は、ゲイリー・ハメルの言うLv3の状態までにしかどうしてもなりません。
   

組織開発用語辞典:「経営は何をすべきか」

Lv4以上の状態は、目標が内発的に設定されたときに生じる状態と言っていいと思います。



とすれば、内発的な目標設定をするべきだということになりますが、それだと「組織としてバラバラになり過ぎる」という懸念がある。であるなら、「バラバラになり過ぎないよう、採用の時点で注意をする」ということが、打ち手としてあり得るということを書いてきました。
   

さて、そのような採用をしたうえでも「一人一人の内発的な目標設定を重視する」となると、組織として「バラバラになる」という要素が、全くなくなるわけではありません。

それでも「組織としての共通目標」がある程度必要だった時に、その目標設定をいかにして行うべきでしょうか?
   

ここで、一つかなり単純化した例を、議論のたたき台として提示します。

粗利率が50%で、粗利に対する労働分配率を50%に設定しているビジネスの場合、例えば「年収500万円が欲しい」という社員がいた場合、必要な粗利は1000万円で、必要な売上は2000万円だ、ということになります。これまた単純計算で、そういった社員が10人いたとしたら、全社として必要な売上は2億円だ、ということになります。

このとき「全社で来期2億円の売上を達成する」という全社共通の目標は、一人ひとりにとって内発的な目標として存在し得ると言えます。
   

売上、粗利率、労働分配率以外にも、労働時間といった重要な要素もあります。

「年収を1.5倍にしたいけど、労働時間が1.5倍になるのは困る」ということはもちろんあり得るわけで、そうすると「生産性(時給)」といったことについても、内発的な目標設定をする必要もあります。

多くの会社では、このような指標が「一人ひとりの内発的に目標設定される」ということはまだ一般的とは言えない状況かと思います。トップダウン的に目標が設定され、ノルマとして課されるという割合が多いのが、現状でしょう。
   

しかし、このとても単純な足し算的な、ボトムアップ的な「目標の生成方法」は意外なほどに効果的です。もちろん業種や企業規模によっても実際に行うには、難易度の違いや工夫すべき点の違いなどは出てきますが、基本的な考え方としてはかなり活用できるはずです。 

これは、社長一人の意志決定で、トップダウン的に組織をマネジメントしていくというものとは全く違うものです。もし、一人ひとりの創造性やWell-Beingよりも、トップダウンを機能させることを重視するのであれば、ノルマを課し、飴と鞭で管理をすることを徹底した方がよいでしょう。

しかし、もし社員の創造性やWell-Beingを高めることを大切にしていきたいのであれば、一人ひとりが内発的に目標設定できるように、ここまで述べてきたような考え方や方法を取り入れていくことで、成果を得ることもできるかと思います。
   

このほかにも「一人一人の内発的な目標を重視する」となると、例えば営業をやりたい人が多くて、生産管理をやりたい人が少ない・・・となったら、その際に役割分担はどうするのか、それは内発的な目標を無視して、トップダウン的に役割を命じるのか・・・などといった問題が出てきますが、これについては次回「対話とガイドライン」というテーマでお伝えできればと思います。

    

いつも最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。

[Vol.55 2020/11/03配信号、執筆:石川英明]

   

    

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