Vol.53 これからのビジネスで企業の競争力となる要因とは

今回のご相談内容

コロナウイルス対策による生活様式の変化は、自社のビジネスにもやはり大きなインパクトがありました。オンライン化が進み、広告戦略などさまざまな面で見直しを求められています。

Co-ducation社の「Vol.45 これからの時代の中小企業の役割とは? | 株式会社Co-ducation」 も読み、いろいろと考えることがありました。

変化の激しい世の中で中小企業が生き残っていくために、これからの社会で求められる会社経営のカタチや、企業の競争力となるものは何なのでしょうか。前述の記事ではその1つとして、「効率性を考えないからこそ得られる顧客満足度」が挙げられていましたが、そのあたりも、もう少し詳しくお話をお聞きしたいです。

        

石川からのご回答

ご質問いただいたとおり、これまでいくつかの記事の中でもお伝えしてきましたが、企業経営を取り巻く社会環境は21世紀以降 大きく変化してきています。

≪参考記事≫

_R_記事・コラム
Vol.99 ビジネスにおける【再現性】と【創造性】を学ぶ
_R_記事・コラム
Vol.88 社会の変化に対応する必要性―これまでは取り沙汰されることもなかったことが「問題」となる時代に
_R_記事・コラム
Vol.87 柔道日本代表から学ぶ 昭和的な価値観からの脱却――時代の変化にあわせた変容の必要性

   

「これからの時代で求められる企業の在り方」、「これからの社会で、変化に適応し、生き残っていける会社組織の在り方とは?」に対するひとつの解として、私たちは、「人」を中心に据えた組織設計という考え方が重要になってくると考えています。

 そして「人」を中心に据えた組織設計についてご紹介したいキーワードは沢山ありますが、今回は、ご質問いただいた「これからのビジネスで企業の競争力となる要因」を中心に解説します。
   

さきに結論からお伝えすると、私がこれからのビジネスで企業の競争力となると考えているのは「人間の創造性を最大限発揮すること」です。

この記事では、そもそも「人間の創造性を最大限発揮するとはどういうことか」、そして何故、「人間の創造性がこれからの企業に求められているのか」を、詳しく解説してみたいと思います。
   

人間の創造性を最大限発揮する

まず、私は、人材開発のプロとして14年以上、「人の成長・パフォーマンス」といったものに携わってきましたが、人間の創造性が発揮される「公式」のようなものは、ある程度存在すると考えています。


私は「行動の3段階」と呼んでいるのですが、成果を生む”行動に至るまでに、人間には3段階があります。

感情→思考→行動(⇒成果)の3段階です。

   

この感情部分、想い・意識といったことが始まりとなりますし、ここの部分が欠落していては、真の創造性は発揮されません。

例えば、営業担当者が顧客のところに行く際ににも、「お客さんに喜ばれるよう頑張りたい!」という感情から始まれば、「どうしたらお客さんに喜ばれるか?」という思考が働き、よく考えたうえで、行動して、成果につながることでしょう。

しかし「あのお客さん嫌いなんだよな。。。早く帰りたい」という感情から始まれば、「どうしたら早く帰ってこれるか?」という思考が働き、いかに早く帰れるかを考えたり、何も準備もしないで顧客訪問し、なんの成果も得られないどころか、マイナスの成果になる、ということもあるでしょう。

創造的な思考のためには、積極的な感情が土台にある必要があります。
    

この感情部分についてポジティブに働くのは

A.内発的な目的(フロー体験理論と、モチベーション3.0、ダルベンシャハー)
B.適切な難易度(フロー体験理論)
C.才能を発揮する(セリグマン、バッキンガム)
D.目的貢献を実感する(フィードバックループ)(フロー体験理論)

といったことが大きな要因であることは明白です。

これらの要素をしっかりと抑えることで「社員に創造性を発揮してもらう」ことができますし、逆に言えば、これらの条件が揃わなければ「社員の創造性を阻害していく」ことになります。
    

人間の創造性が企業の競争力の要因となる

物もサービスもがあふれ、多くのモノもコトも、すぐにコモディティ化する市場では、社員一人一人が「常に創意工夫を持ち」「ケースバイケースに対応する」という能力こそが、競争力になります。

VUCAと言われる変化の激しい世界でも「常時創意工夫」「ケースバイケースに対応」という能力が求められます。そのためには、行動の3段階の1段階目が、よい状態でなければ難しいのです。
   

    

効率化、というのは言い換えれば「なんとか楽をしよう」という発想のものです。効率化できそうな部分は、コアな競争力の要因になりません。

効率化できる部分は、コモディティ化する部分であり、差別化できない部分だからです。「お客様のために積極的に苦労しよう」とする部分が、差別化要因になり、競争要因になるのです。
   

ちなみこの差別化要因・競争要因には「物語」だけでなく「歴史」「関係性」といった要素もこれから強くなってくるでしょう。

ストーリーで売る、ということはもう新しいものではありませんが、これからは「このお宿に何度も泊ったことがある」という歴史を積み重ねられる旅館や、「この人は私の好みを知ってくれている」といった関係性を築けるアパレル店員、といったことの重要性が、より一層増してくるはずです。

(なぜなら、それ以外の部分はより一層コモディティ化していくからです)
    

この「当社は、顧客との関係性を豊かにするのに必要な創造性を、全社員が常に発揮している」という状態を作れれば、それは言うまでもなく競争力の高い状態にあるということになるでしょう。

そのためにはどうしたらよいか?といった具体的な手法についてはまた後日お伝えできればと思いますが、この創造性の重要性が高まってきているのは間違いありません。

     

いつも最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。

[Vol.53 2020/10/20配信号、執筆:石川英明]